平成22年版男女共同参画白書

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総括編 男女共同参画社会の形成の現状と課題

(1) 固定的性別役割分担意識


  • 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方について,全体では賛成が41.3%,反対が55.1%,性別では賛成の割合は男性で,反対の割合は女性で,それぞれ高くなっている。年齢別では賛成の割合は70歳以上で,反対は,20歳代,40歳代,50歳代でそれぞれ高くなっている(内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」平成21年10月)。

(課題)

  • こうした考え方は,時代とともに変わりつつあるもののいまだ根強く残っているため,固定的性別役割分担意識を解消し,男女共同参画社会に対する認識を深め,定着させるための広報・啓発活動を積極的に展開する必要がある。

(2) 政策・方針決定過程への女性の参画


  • 意思決定過程において「指導的地位」に占める女性の割合は緩やかに増加しているものの,水準は依然として低く,政府が定める「2020年30%の目標」を達成していないものがほとんどである。
  • 女性の政治や経済への参画の程度を示すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)では,109か国中57位にとどまっている。

(課題)

  • 「2020年30%の目標」を達成するため,(1)の意識の解消とともに,ロールモデルの提示や教育等による女性自身の意識や行動の改革,仕事と生活の調和の推進等の条件整備と併せて,実効性のあるポジティブ・アクション(積極的改善措置)等,女性の参画促進のための措置を推進することが重要である。

各分野における「指導的地位」に女性が占める割合 別ウインドウで開きます
各分野における「指導的地位」に女性が占める割合

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(3) 就労の分野における女性の参画


  • 女性の労働力は,年齢階級別にみると30歳代を底とするM字カーブを描き,依然として結婚,出産,子育て期に就業を中断する女性が多い。
  • 女性雇用者に占める非正規労働者の割合は半数を超えている。男性一般労働者の所定内給与水準を100としたとき,女性一般労働者の所定内給与水準は70程度。

(課題)

  • 男女の均等な機会と待遇の確保,男女間賃金格差の解消,非正規労働者と正規労働者の均衡待遇の推進,M字カーブ解消に向けた子育て支援策の充実,再就職の支援体制の充実等女性の就業継続支援などに取り組んでいく必要がある。

男女間所定内給与格差の推移 別ウインドウで開きます
男女間所定内給与格差の推移

雇用形態別にみた役員を除く雇用者(非農林業)の構成割合の推移(性別) 別ウインドウで開きます
各分野における「指導的地位」に女性が占める割合

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(4) 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)


  • 仕事と生活の調和の認知度(「言葉も内容も知っている」)は2割弱にとどまっている。
  • 育児休業を取得している女性は増えているが,出産前後に就業継続している割合は増えていない。男性の育児休業取得率は依然として低い(1.23%)。
  • 6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間は1日当たり1時間程度と,他の先進国に比べ低水準にとどまっている。

(課題)

  • 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」等に基づき,仕事と生活の調和の実現に向けた社会的気運の醸成,長時間労働の抑制,年次有給休暇の取得促進,短時間正社員制度等多様な働き方の普及,男性の育児休業取得の促進などに取り組んでいく必要がある。

6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間(1日当たり) 別ウインドウで開きます
6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間(1日当たり)

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仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の認知度 別ウインドウで開きます
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の認知度

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(5) 相対的貧困率


  • ほとんどの年齢層で,男性に比べて女性の方が相対的貧困率(可処分所得が中央値の50%未満の人の比率)が高く,特に高齢単身女性や母子世帯で高くなっている。

(課題)

  • 男女それぞれの置かれた状況を踏まえ,貧困や人間関係などの生活上の困難な状況に置かれた人々の自立に向けた力を高める取組,雇用・就業の安定,安心して親子が生活できる環境づくり,支援基盤の整備等を進める必要がある。

世代別・世帯類型別相対的貧困率(平成19年) 別ウインドウで開きます
世代別・世帯類型別相対的貧困率(平成19年)

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(6)女性に対する暴力


  • 女性の10.8%,男性の2.9%はこれまでに配偶者から身体的暴行,心理的攻撃,性的強要のいずれかを1つでも受けたことが「何度もあった」と答えている(内閣府「男女間における暴力に関する調査」平成20年)。
  • 強姦,強制わいせつの認知件数は,それぞれ1,402件,6,688件(平成21年(警察庁調べ))。
  • 異性から無理やりに性交された経験のある女性のうち,被害をどこ(だれ)にも相談しなかった人は6割以上に上る(内閣府「男女間における暴力に関する調査」平成20年)。

(課題)

  • 女性に対する暴力は重大な人権侵害であり,社会的認識の徹底等その根絶のための基盤整備を行うとともに,配偶者からの暴力や性犯罪等,暴力の形態に応じ,防止対策や被害者支援などに幅広く取り組んでいく必要がある。