平成22年版男女共同参画白書

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コラム11

【企業事例】困難な立場にある女性への支援


○シングルマザーの就業支援―個人の能力を発揮できる場の提供(L社)

首都圏を中心にクリーニングチェーンを150店舗近く展開するK社は,30年程前から,工場の機械化,クリーニング収集袋の小型化,配達用車両のAT車導入,キッズルームの開設,出退社の時間を自由に組合せ可能な“オーダーメイド雇用”など,働きやすい環境の整備を進め,他社に先駆けて女性の力の活用を進めてきた。現在,全従業員のうち85%が女性であり,そのほとんどがパート従業員である。平成4年からパート従業員の職能資格制度を導入し,それを基にした人事評価制度を運用しており,パート従業員から正社員への採用,またその中から役員への登用も行っている。

同社は直営店のオーナー契約を結ぶ際,シングルマザーへの支援として,特定非営利活動法人Wの協力を得て,一括支払い原則の保証金の分割払いや,店舗へのキッズルームの併設などのサポートを行っている。同社によれば,これは単に慈善事業ではなく,支援を受ける本人と企業の双方にメリットがあるものであるという。企業理念として「事業を通じた地域貢献」を掲げており,特別な支援が必要な間だけ,必要な支援を行うが,それ以降は支援は不要となり,支援した本人が企業業績の貢献に寄与するようになるという。能力のある個人がその力を発揮する場所の提供と,そのための工夫と支援とが個人,企業,地域の活性化につながっている。


○ITを活用した女性のエンパワーメント(M社)

外資系IT企業であるM社は,“世界中の全ての人々とビジネスの可能性を最大限に引き出すための支援をすること”を企業ミッションに掲げる。同社では,本業をいかし,経済的に困難な状況にある女性を対象に,ITスキル習得の機会など,就業(就労ないし起業)支援を目的とした「女性のためのUPプログラム」を実施している。このプログラムは,全国基盤を持つ中間支援組織である特定非営利活動法人と協働することで,着実に成果を上げている。同プログラムで平成18年1月~21年3月まで特定非営利活動法人Z及び特定非営利活動法人Sとの協働で実施された活動では,受講参加者の受講後3か月以内の就労率が目標を上回る15%を実現した。

このプログラムは,社員がボランティアとして技術紹介やトレーニングにかかわることで,顧客のニーズや社会状況を直接知る機会になるとともに,同社のイメージ向上の一助にもなっているという。昨年から特定非営利活動法人Zと開始した活動では,農・漁村を始めとする一次産業に携わる女性の起業支援,働くことに悩む若い女性のための就労支援,女性センターによる地域研修展開事業の支援と共に,対象のプロジェクトを拡大した。また,数値目標についても,講習参加者の受講後6か月以内の就労率を35%へと引き上げている。同社の取組はL社の例と同じく,能力のある個人が持てる力を発揮するための本業を通じた社会貢献である。この取組が目標を上回る効果につながっているのは,専門性を持つ外部団体との効果的な連携(L社,M社の例とも連携先は特定非営利活動法人)や,連携団体との対話を通じて,困難な状況にある女性に対する支援が継続的に効果を上げていくための仕組みづくりを行っていることが奏功しているといえよう。