平成21年版男女共同参画白書

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第2節 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

1 「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」に基づく取組の推進

(1)基本的な考え方

世界の人口の約半分は女性であるとされているが,世界の貧困層のうち約7割は女性である等,様々な面で女性はいまだ脆弱な立場に置かれている。

開発における男女の平等な参加と公平な受益に向けて努力することは,一義的にはその国自身の課題であるが,先進国が開発における女性の参加と公平な受益に配慮した開発援助を実施することにより,途上国の自助努力を支援することは可能であり,同支援の実施に際しては,個々の人間に着目した人間の安全保障の視点を考慮するとともに,当該国における社会的性別(ジェンダー)の現状を的確に把握することが重要である。


(2)推進のための取組

平成17年3月に策定された「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」をODAすべてのプロセスにおいて着実に実行するためには,ODAに携わる関係者全員が社会的性別の視点をまず理解し,ODAのあらゆる業務に取り組むことが重要である。そうした取組を更に促進するため,同イニシアティブに対する理解向上と取組意識の一層の向上を図る取組として,援助対象89国公館に配置している「ODAジェンダー担当官」を活用し,17年度より社会的性別の視点に配慮した好事例及び配慮が十分でなかったことによる教訓等を集め,その情報を共有するなど「ジェンダー主流化」に向けた活動を実施している。

ODA実施機関の取組として,JICA(独立行政法人国際協力機構)では,JBIC(国際協力銀行)円借款部門との統合を機に,ODA事業におけるジェンダー配慮の取組を更に強化し,ジェンダー平等や女性の地位向上を目的とする協力事業を進めている。また,各開発セクター・課題に対する個別の協力事業に社会的性別の視点を組み込むため,援助対象グループの中で男女それぞれが抱える問題やニーズの違いなどを把握し,その分析結果を協力事業の計画・実施・評価サイクルに適切に反映する仕組みを整えつつある。さらに,各部署及び在外事務所に配置している「ジェンダー担当官」への働きかけを強化し,開発途上国におけるジェンダー平等や女性の地位向上に貢献する協力事業の実施を促進している。

JICA及びJBICでは従来,社会的性別の視点を組み込んで効果をあげた協力事業の成功例の収集,各開発セクター・課題と男女格差との関係を説明する具体例の収集,他援助機関との積極的な連携・意見交換を通じた事例・手法の研究,職員その他援助関係者に対する研修等といった取組を行っている。


(3)様々な枠組みを活用した援助の実施

我が国は人間の安全保障を推進する国として,二国間及び多国間協力を通じ,開発途上国におけるジェンダー平等と女性の地位向上に向けた取組を支援している。具体的には,無償資金協力(草の根・人間の安全保障無償資金協力及び日本NGO連携無償資金協力を含む。),NGO事業補助金,有償資金協力,専門家等の派遣等の技術協力,国連人間の安全保障基金やUNDP・日本WID基金(2003年に日・UNDPパートナーシップ基金に統合)等,様々な援助枠組みを活用し,より効果的な事業の実施を図っている(第2-12-1表)。

また,我が国は,「保健と開発に関するイニシアティブ」(平成17~21年度)の下,国連ミレニアム開発目標の達成に貢献すべく,感染症対策,母子保健の向上,保健システムの強化を包括的に実施しており,性と生殖の健康,男女の保健医療サービスへのアクセス格差の解消,女性の能力開発のための支援などジェンダー平等に配慮した取組も行ってきた。特に,インドネシアやパレスチナ等で実施している母子健康手帳の普及を目的とした支援は,当該国の女性のエンパワーメントに貢献してきている。

第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助の実施 別ウインドウで開きます
第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助の実施

2 国連の諸活動への協力

(1)会議・委員会等への協力

2008(平成20)年秋に開催された第63回国連総会において,「女性の地位向上」に関する議論が行われた。我が国から,NGO代表の黒崎伸子氏(日本政府代表代理)等が出席した。


(2)国連機関・基金等への協力

平成20年度には,国連婦人開発基金(UNIFEM)に対して,64.9万ドルの拠出を行った。

また,平成20年度は日・UNDPパートナーシップ基金に214万ドルの拠出を行った。これまでに62か国,80件のプロジェクトに対し,総額1,904万ドルの支援を行っている。さらに,我が国は,国連教育科学文化機関(UNESCO)に信託基金を設置し,アジア,アフリカを中心に世界各地において教師教育や識字教育など途上国における人材育成事業に協力しているほか,財団法人ユネスコ・アジア文化センター及び社団法人日本ユネスコ協会連盟においても,成人非識字者の約3分の2を占めるアジア・太平洋地域の女性に対する教育の普及に積極的に協力している。

これらに加え,国連に設置した人間の安全保障基金を通じ,ジェンダーに配慮したプロジェクトをこれまで,36か国において31件,計約4,494万ドルの支援をしている。

3 女性の平和への貢献

我が国は,平和を推進する国際機関の役割の重要性を認識し,また,紛争時において最も支援を必要とする人々は女性や子どもであることを考慮し,「人間の安全保障」の考え方を推進している。この観点より,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連児童基金(UNICEF)等の人道支援国際機関に対し積極的な協力を行っているほか,我が国が国連に設置した人間の安全保障基金を通じて国連女性開発基金(UNIFEM)がアフガニスタンにおいて実施する国内避難民及び難民女性の社会参加を推進するプロジェクト等を支援してきた。

4 国際分野における政策・方針決定過程への女性の参画の促進

我が国では,近年,国際会議への政府代表団への女性メンバーの参加が漸次増加しており,2008(平成20)年秋の第63回国連総会においても,民間女性を政府代表団の一員として派遣した。我が国が締結している女子差別撤廃条約に基づき設置された女子差別撤廃委員会では,我が国出身者が委員を務めている。

また,日本人女性の国際機関への参画も進んでおり,国連を含む国際機関における日本人の女性職員数(専門職以上)は,1975(昭和50)年の19人から2008(平成20)年には422人と大幅に増加している。

5 あらゆるレベルにおける国際交流・協力の推進

(1)あらゆるレベルにおける国際交流・協力の推進

外務省では,平成7年度よりアラブ諸国との女性交流プログラムを実施しており,20年度は,「リーダーシップの達成とその成果」をテーマとして,ヨルダン,エジプトより地域活動を通じてリーダーとして活躍する女性を我が国に招へいするとともに,我が国からも医療分野でリーダーとして活躍してきた女性からなる代表団がヨルダン,シリア,エジプトを訪問し,関係者と意見交換を行った。

また,国連婦人の地位委員会(2008(平成20)年2~3月)などの国際会議において社会的性別と女性のエンパワーメントにかかわる討議に積極的に参加し,国際社会の知見を共有するとともに,我が国がODAにおいて社会的性別の視点を重視して取り組む姿勢をアピールした。

内閣府では,国際的協調をより深めるべく,東京及び広島で「日本・スウェーデン男女共同参画ジョイントセミナー:女性に対する暴力の防止と根絶のために-新しい官民の取組事例をもとに-」(2009(平成21)年1月)を開催した。

また,男女共同参画に向けて特に早くから取組が行われている欧州諸国での男女共同参画の動きや変化について情報を得るとともに,政策担当者との意見・情報交換ネットワークづくり等を目的として,欧州評議会第40回男女平等運営委員会(2008(平成20)年11月)に,オブザーバーとして参加した。


(2)女性の教育分野における国際交流・協力の支援

独立行政法人国立女性教育会館では,アジア太平洋地域における男女共同参画を推進する女性教育の人材育成を目指してアジア太平洋地域の女性リーダーエンパワーメントセミナーを実施するなど,途上国における女性教育の推進の支援等を実施している。また,海外の関係機関との連携協力関係のために,協定を結んでいる韓国両性平等教育振興院,韓国女性政策研究院との交流を深めている。2008(平成20)年12月には,地球規模の課題である人身取引問題をテーマとした「女性のエンパワーメント国際フォーラム2008 人身取引問題の解決に向けたグローバル・パートナーシップ」を実施した。


(3)経済分野における国際協力

APEC(アジア太平洋経済協力)においては,2002(平成14)年に行われた第2回APEC女性問題担当大臣会合での合意に基づき設置されたAPEC女性問題担当組織ネットワーク(GFPN)の第6回会合が2008(平成20)年5月にペルー(タクナ)で開催された。この会合では,ジェンダー分析の活用促進のためのワークショップが実施された。