平成21年版男女共同参画白書

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第3節 高齢男女の自立と共生に向けた今後の課題

(高齢男女の就業と社会参画)

高齢者の就業といった場合,ともすれば定年後も継続就業する男性のイメージが抱かれがちだが,実は働きたいと考える女性の高齢者も少なくない。総務省「就業構造基本調査」(平成19年)によれば,65~69歳の女性の半数近くが就業意欲を持っており,「収入を得る必要」を挙げる割合は男性よりも高くなっている(第1-4-5表)。しかし,女性は男性に比べて,就業中断などで就業経験の蓄積や能力開発が不十分であるために,就業希望が実現されにくい現状があるため,高齢者の就労促進には,このような高齢女性特有の状況を踏まえた取組が必要とされる。

また,高齢女性は就労に限らず家庭や地域など様々な場面において蓄積されてきた高齢女性の能力発揮を促進することも重要である。

第1-4-5表 高齢就業希望者の就業希望理由別割合(性別) 別ウインドウで開きます
第1-4-5表 高齢就業希望者の就業希望理由別割合(性別)

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(高齢期の経済的自立につなげるための制度や環境)

女性パートタイム労働者の約2割が,税制や社会保障制度における被扶養者としての優遇措置を受けるために年収や労働時間を「調整している」と回答している(第1-4-6表)。配偶者控除や第3号被保険者制度などは,女性の就業調整や非労働力化を促し,女性自身の経済的自立を阻害してきた側面がある。その結果,被扶養の女性については,世帯に守られているうちは経済的に安定しているが,離婚等で世帯からいざ離れると再就職等も困難で経済的に厳しい状況になりやすい。

今後の方向性としては,これらの制度について,女性の経済的自立を阻害しない制度への見直しとともに,働き方や家族形態の変化に対応し,多様なライフスタイルに中立的なものとする方向で見直していくことが必要である。

また,ILO条約に規定されている同一価値労働・同一賃金の原則を踏まえつつ,就労における男女の均等な機会と公平な待遇の確保に積極的に取り組んでいく必要がある。

第1-4-6表 過去1年間の就業調整の有無別女性パート等労働者の割合 別ウインドウで開きます
第1-4-6表 過去1年間の就業調整の有無別女性パート等労働者の割合

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(家庭・地域における支え合いの下での生活自立)

高齢単身世帯が主流になる社会においては,地域の支え合いのもとで孤立を防ぎ,病気・災害時の支援はもちろんのこと,日常生活における手助けが得られるような地域社会づくりが重要である。そのため,単身高齢者の自宅生活をサポートする生活支援体制の整備等に取り組む必要がある。

また,高齢女性は,寿命が長いために一人暮らしになりやすいとともに,認知症になる割合も高いことなどから,消費者被害も男性に比べてより多く受けやすい傾向がある(第1-4-7図)。成年後見制度における女性後見人の育成や消費者被害防止相談窓口における女性相談員の配置の充実等,高齢女性を消費者被害等から守るための対策を効果的に進める必要がある。

他方,単身世帯は約4割が借家であり(第1-4-8図),住宅費の負担が特に低所得層で重くなっている。今後は,高齢者が一人暮らしでも安心して暮らせる住まいへのニーズが一層高まることが予想されることから,低所得者向けの住宅,生活支援や介護を受けられる高齢者向け住宅等の充実に取り組むことが求められる。

第1-4-7図 判断能力に問題がある人の消費者被害相談件数(性別・年代別)(平成8~17年) 別ウインドウで開きます
第1-4-7図 判断能力に問題がある人の消費者被害相談件数(性別・年代別)(平成8~17年)

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第1-4-8図 高齢者(65歳以上)の世帯類型別住居の状況 別ウインドウで開きます
第1-4-8図 高齢者(65歳以上)の世帯類型別住居の状況

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(性差に配慮した医療・介護予防)

疾患の罹患状況や要介護になった原因には男女間で大きな違いがみられる。例えば,男性については肝疾患や悪性新生物が,女性については認知症や関節性疾患等の罹患率が高い傾向がある。このような男女の違いに配慮した医療・介護予防への取組を進めることは効果的であり,個人のニーズへの対応という観点からも望ましいと考えられる。

(良質な医療・介護基盤)

介護を必要とする高齢者は,女性が男性の約2.6倍となっている(第1-4-9表)。女性は長寿ゆえに一人暮らしになる可能性が高いため,高齢女性の介護は重要な課題である。

他方,介護の担い手としての女性を取り巻く状況をみると,家族内の主な介護者の7割は女性であり(第1-4-10図),老老介護の負担の深刻さも指摘されている。また,ホームヘルパー等の介護労働者も約8割が女性であるが(第1-4-11図),介護労働者についてはその賃金等の低さも指摘されている。

すなわち介護は,受け手,担い手の双方の観点からみても,女性にとって重要なテーマであるといえる。

一方,高齢期における自立の維持には安定した医療基盤が不可欠だが,医師不足等の問題も指摘されている。医師における女性の割合は平成18年には17.2%と比較的高くなっているが,仕事と生活の両立が困難な勤務環境が女性医師の継続就業を阻害している。

第1-4-9表 介護保険サービスの利用状況(介護サービス受給者数)(性別) 別ウインドウで開きます
第1-4-9表 介護保険サービスの利用状況(介護サービス受給者数)(性別)

第1-4-10図 要介護者等からみた主な介護者の続柄 別ウインドウで開きます
第1-4-10図 要介護者等からみた主な介護者の続柄

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第1-4-11図 性別介護労働者割合 別ウインドウで開きます
第1-4-11図 性別介護労働者割合

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コラム 高齢者の自立した生活に対する支援