平成21年版男女共同参画白書

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第2節 男女共同参画をめぐる実態と課題

前節で男女共同参画に関わる様々な主体の取組や推進体制の変化についてみてきたが,本節では,男女共同参画社会基本法施行10周年に合わせて,これまでの取組の評価や現状,課題などを調査するために内閣府が実施した「男女のライフスタイルに関する意識調査」(平成21年)3(以下,「ライフスタイル調査」という。)の結果も紹介しながら,様々な主体による取組や社会情勢の変化等に伴い男女共同参画に関する様々な分野において,実態がどのように変化してきたか,また男女共同参画に関連してどのような課題があるか等について分析を行う。

3 20歳代から60歳代の全国の男女を対象としたインターネットによるモニター調査(回収数10,000サンプル。調査実施期間平成21年2月2日~2月12日)。モニターについては,国勢調査に準拠し,地域別人口,年代別人口に合わせた割付を行っている。

1 男女共同参画の推進に関する進捗状況

(1)男女共同参画社会基本法の理念についての進捗状況

(基本法の基本理念については一定の前進がみられる)

男女共同参画社会基本法では,第3条から第7条において,男女共同参画社会の形成について5つの基本理念が規定されている。内閣府「ライフスタイル調査」によると,この5つの基本理念の進捗状況について,男女共同参画社会基本法が施行された10年前と比較していずれも「どちらかと言えば前進した」という回答が最も多かった。また,5つの基本理念を比べてみると,「前進した」と「どちらかといえば前進した」を合わせた回答が最も多かったのは,「男女の差別がなく,男性も女性もひとりの人間として能力を発揮できる機会が確保されていますか」という男女の人権の尊重に関する問いで,合わせて7割に達した。他方,最も少なかったのは,「男女共同参画社会づくりのために,外国政府やNPO等などと,日本の政府やNPO等が国際的な連携を行えていると思いますか」という国際的協調に関する問いで,合わせて43%であった。

男女別にみると,いずれの基本理念についても「前進した」又は「どちらかと言えば前進した」という回答について男性の方が女性よりも多く,逆にいずれの基本理念も女性の方が男性に比べて「10年前と変わらない」と回答した人の数が多く,「政策等の立案及び決定への共同参画」,「家庭生活における活動と他の活動の両立」,「国際的協調」では約4割の女性が10年前と変わらないと回答している。女性は,男性が考えているほど男女共同参画社会の形成が進んでいると捉えていないという男女間の認識の差異があることが分かる(第1-特-8図)。

第1-特-8図 男女共同参画社会基本法の理念の実現状況についての評価(10年前との比較)(性別)別ウインドウで開きます
第1-特-8図 男女共同参画社会基本法の理念の実現状況についての評価(10年前との比較)(性別)

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(2)男女共同参画に関連したイベントや施設に関する利用状況

(男女共同参画関連イベントの参加や男女共同参画センター等の施設の利用状況)

前出の調査によると,国や地方公共団体が実施する男女共同参画社会実現のためのイベント等について,「知らない」と回答した者が男女ともに6割を超えている。また,若い世代において特にイベント等の参加率及び認知度が低い状況にある(第1-特-9図)。

同様に,男女共同参画・女性のための総合的な施設である男女共同参画センター等について,その存在を「知らない」と回答した者が男女ともに約6割を占めており,また若い世代において特に施設の利用率及び認知度が低い状況にある(第1-特-10図)。さらに,施設を知っている人の中で「ほとんど利用しない」,「利用しない」と回答した者にその理由を尋ねたところ,「機会がない」という回答が最も多い(第1-特-11図)。

男女共同参画関連のイベントやセンター等については,周知度を高めるとともに,特に若い世代に対しても気軽に参加や利用ができる身近な存在としていくよう工夫を行っていくことが求められる。

第1-特-9図 男女共同参画関係のイベントへの参加経験の有無(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-特-9図 男女共同参画関係のイベントへの参加経験の有無(性別・年代別)

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第1-特-10図 男女共同参画センター等の施設の利用経験の有無(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-特-10図 男女共同参画センター等の施設の利用経験の有無(性別・年代別)

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第1-特-11図 男女共同参画センター等を利用しない理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-11図 男女共同参画センター等を利用しない理由(性別)(複数回答)

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2 それぞれの分野における変化

ここでは,政策・方針決定過程,就業状況,家庭,地域のそれぞれの分野について,まずこれまでの10年間の実態上の変化を概観し,その後現状に関する意識について分析を行う。


(1)政策・方針決定過程における変化

(緩やかに上昇する女性の政策・方針決定過程への参画割合)

前節で触れたとおり,政府では「2020年までに各分野における指導的地位に占める女性の割合が,少なくとも30%程度になるよう期待する」との目標を決定しているところである。現在の女性の参画の状況について10年前と比較すると,緩やかではあるが,それぞれの分野において女性の割合は上昇していることが分かる(第1-特-12図)。

第1-特-12図 各分野における「指導的地位」に女性が占める割合(10年前との比較) 別ウインドウで開きます
第1-特-11図 M字カーブ解消による女性の労働力人口増加の試算

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(国際的にみると低い水準にとどまっている状況)

しかしながら,国際的にみると,日本における女性の参画は低い水準にある。国連開発計画(UNDP)が発表している「人間開発報告書」によると,「長寿」「教育」「所得」の充足度を示す人間開発指数(HDI)については2001(平成13)年から2008(平成20)年の報告書までほとんど順位は変わらず高順位にある。他方,政治及び経済活動への女性の参画を示すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)については,値自体は緩やかに上昇しているものの,他国と比較した順位は先進国の中で低く,かつ下降傾向にあり,我が国においても女性が政治・経済活動に参加し,意思決定に参加する機会は増えてはきているものの,他国に比べるとその歩みが遅いことが分かる(第1-特-13表)。

内閣府「ライフスタイル調査」によると,我が国の女性の参画拡大が他国に比べて遅れている原因として,「仕事と家事・育児・介護等の両立支援制度がない,足りない」,あるいは制度があっても「活用できる雰囲気がない」といったことが挙げられている。特に女性は,仕事と家事・育児・介護等との両立をしていくための支援制度が必ずしも十分ではないことなどから女性の参画拡大が進まないと感じていることが分かる(第1-特-14図)。

第1-特-13表 HDI及びGEMにおける我が国の順位の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-13表 HDI及びGEMにおける我が国の順位の推移

第1-特-14図 我が国における男女共同参画が国際的に遅れている理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-14図 我が国における男女共同参画が国際的に遅れている理由(性別)(複数回答)

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(社会における女性の能力の活用)

内閣府「ライフスタイル調査」によると,社会において,女性の能力は十分活用されていると思うかという現状に関する意識についての問いに対して,男性は「そう思う」,「どちらかと言えばそう思う」と肯定的な回答をしている者が多い。一方女性は,肯定する者,否定する者,どちらとも言えないとする者が概ね同じくらいの割合で存在する(第1-特-15図)。

また,社会において,女性の参画がもっと必要だと思う分野としては,男女ともに政治家が最も多く,企業・団体の幹部層が続いた。また,男女別でみると,特に医師や弁護士・裁判官・検察官,政治家について,女性の方が男性に比べて女性の参画がもっと必要であると回答している割合が高い(第1-特-16図)。

第1-特-15図 社会における女性の能力は十分活用されていると思うか(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-15図 社会における女性の能力は十分活用されていると思うか(性別)

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第1-特-16図 女性の参画が必要と思われる分野(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-16図 女性の参画が必要と思われる分野(性別)(複数回答)

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(2)就業をめぐる変化と女性の能力発揮・能力開発といったキャリア形成

(共働きが増加傾向で推移するとともに,子どもができても継続就業を望む女性が増加)

就業をめぐる実態上の変化について,総務省「労働力調査」によると,夫婦ともに雇用者となっている共働き世帯は年々増加傾向にあり,男性雇用者と無業の妻からなる片働き世帯との差は広がっている(第1-特-17図)。

また,国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」によると,18~34歳の未婚女性が理想とするライフコースとして,昭和62年には専業主婦を挙げる人が33.6%と最も多く,継続就業を挙げる人は18.5%と最も少なかったのに対して,平成17年には専業主婦を理想と考える人が19.0%と最も少なくなり,継続就業を挙げる人は30.3%にまで増加し,再就職を挙げる人とほぼ同じとなった。このように,自分の生き方として,子どもができても継続して働くことを望む女性が増えていることが分かる(第1-特-18図)。

さらに内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」によると,一般的に女性が職業を持つことについて,「子どもができても,ずっと職業を続ける方がよい」という回答が男女ともに増加しており,最も多い回答となっている。このように,社会全体としても女性の就業を肯定的に捉える傾向が強まっていることが分かる(第1-特-19図)。

第1-特-17図 共働き等世帯数の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-17図 共働き等世帯数の推移

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第1-特-18図 未婚女性が理想とするライフコースの推移 別ウインドウで開きます
第1-特-18図 未婚女性が理想とするライフコースの推移

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第1-特-19図 女性が職業を持つことについての考え(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-19図 女性が職業を持つことについての考え(性別)

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(20歳代後半から30歳代後半にかけての女性の労働力率は上がっているが,国際的にはまだ低い状況)

総務省「労働力調査」をみると,女性の年齢階級別労働力率は,現在も依然として「M字カーブ」を描いているものの,そのカーブは以前に比べてかなり浅くなっており,M字部分の底となっている年齢階級も30年前と比較すると,20歳代後半から30歳代へと変化している(第1-特-20図)。しかしながら,国際的にみると台形型に近くなっている国が多いのに対して,日本のM字カーブの底は深く,子育て期には仕事を辞めている女性が少なくないことが分かる(第1-特-21図)。

第1-特-20図 女性の年齢階級別労働力率の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-20図 女性の年齢階級別労働力率の推移

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第1-特-21図 女性の年齢階級別労働力率(国際比較) 別ウインドウで開きます
第1-特-21図 女性の年齢階級別労働力率(国際比較)

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(長期的には縮小傾向にあるが依然として大きい賃金格差)

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると,正規雇用者など一般労働者における男女の1時間当たり平均所定内給与格差は,男性一般労働者の給与水準を100としたとき,平成11年の女性一般労働者の給与水準が65.4であったのが,20年には69.0と長期的には縮小傾向にあるものの依然として格差は大きい。また,短時間労働者の給与水準についても,男性一般労働者の給与水準を100としたとき,11年の女性44.0,男性50.8から20年の女性48.5,男性53.3と格差は縮小しているものの,依然低い状況にとどまっている(第1-特-22図)。

第1-特-22図 労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移(男性一般労働者=100) 別ウインドウで開きます
第1-特-22図 労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移(男性一般労働者=100)

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(緩やかに上昇しているが上位職になるほど低い民間企業管理職に占める女性割合)

前出の厚生労働省調査において,民間企業における女性管理職割合の推移をみると,係長相当職では平成11年の8.2%から20年には12.7%に増加している。上位の役職では女性の割合が低く,部長相当職では11年の2.1%から20年には4.1%と緩やかに増加しているが依然として低い状況にある(第1-特-23図)。

第1-特-23図 役職別管理職に占める女性割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-23図 役職別管理職に占める女性割合の推移

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(増加する非正規労働者割合)

総務省「労働力調査特別調査」(平成13年まで)及び「労働力調査(詳細集計)」(平成14年以降)によると,非農林業の雇用者のうち,非正規の職員・従業員の数及び割合は男女とも年々増加しており,特に女性の非正規の職員・従業員割合は平成16年以降半数を超えている(第1-特-24図)。

また,1990年代以降,女性並びに若年層を中心として非正規雇用者が急速に増えてきている(第1-特-25図)。

第1-特-24図 雇用形態別にみた役員を除く雇用者(非農林業)の構成割合の推移(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-24図 雇用形態別にみた役員を除く雇用者(非農林業)の構成割合の推移(性別)

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第1-特-25図 年齢階級別雇用者割合(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-25図 年齢階級別雇用者割合(性別)

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(継続就業の状況)

厚生労働省「雇用均等基本調査」(平成19年)及び「女性雇用管理基本調査」(平成11年)によると,育児休業取得率について,女性は平成11年から19年の8年間で56.4%から増加し約9割に達している一方,男性については0.42%から1.56%と増加はしているものの,依然として取得率が低い状況にある。ただし,出産を機に退職している女性も多いという実態がある。

また,国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」によると,育児休業を利用せずに就業を継続している者の割合は減少し,育児休業を取得している女性の割合は増加しているものの,出産前後に継続就業している者の割合の合計は増えていないことが分かる(第1-特-26図)。

さらに,厚生労働省「第6回21世紀成年者縦断調査」(平成19年)によると,仕事をしていた妻が出産後も同じ仕事を継続しているかについて,妻の仕事が正規の場合には67.3%が継続しているのに対して,妻の仕事が非正規の場合には就業継続の割合が22.9%にとどまっており,正規と非正規職員の間で出産を機に就業を継続しているかどうかについて大きな差があることが分かる。また,正規の職員・従業員で育児休業制度がある場合については78.3%,制度がない場合については33.3%と大きな差がある。また制度がある中でも,利用しやすい雰囲気がある場合には81.6%,利用しにくい雰囲気がある場合には64.3%と差があるなど,制度の有無はもちろんのこと,制度を利用しやすい雰囲気も継続就業に影響を与えることが分かる(第1-特-27図)。

このように,女性が結婚や出産・育児期を通じて働くことを望む人が増え,実際に育児休業の取得等により継続して就業する女性の割合も増えてきているが,依然として仕事と子育て等との両立の難しさから実際に離職している人も多い。また,厚生労働省によると平成20年4月現在の保育所待機児童数は19,550人となっており,女性が出産後継続して就業できるよう,「新待機児童ゼロ作戦」等待機児童解消のための着実な推進が求められる。前述のとおり,我が国の女性の参画拡大が他国に比べて遅れている原因として,「仕事と家事・育児・介護等との両立支援が足りない」を挙げる人が最も多い。仕事と子育て等との両立支援について,行政や企業等による制度の拡大・充実や職場における制度を利用しやすい雰囲気の醸成など総合的に推進し,更なる充実を図っていくことが求められる。

第1-特-26図 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴 別ウインドウで開きます
第1-特-26図 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴

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第1-特-27図 正規雇用の妻が利用可能な育児休業制度の有無別にみた就業継続の有無 別ウインドウで開きます
第1-特-27図 正規雇用の妻が利用可能な育児休業制度の有無別にみた就業継続の有無

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(女性の起業)

女性の就業については,自ら事業を興し経営を行う起業者として考えることも重要である。創業・設立5年以内で従業員10名以下の法人・個人事業所の経営者・事業主の実態を調査した厚生労働省委託調査「起業に関する現状及び意識に関するアンケート」(平成18年)によると,調査対象起業者の年齢構成は,女性では35~44歳の割合が最も高く,年齢層が高くなるにつれその割合が低下するのに対して,男性では55歳以上が最も高く,女性は男性に比べて比較的若年で起業をするという違いがみられる(第1-特-28図)。また,起業分野をみると,女性は半数近くがサービス分野での起業となっている(第1-特-29図)。

起業の目的についてみると,男女とも「自分の能力,技術,経験等を十分に発揮するため」が最も多く,ついで「自分の裁量で仕事をするため」となっている。女性については,特に「年齢や性別に関係なく仕事をするため」,「家事や子育て・介護をしながら,柔軟な働き方をするため」という目的が男性に比べて特に多い(第1-特-30図)。

一方,起業に当たっての課題としては,女性は起業時・起業後とも「起業や経営の知識・ノウハウが不足」,「同じような立場の人(経営者等)との交流の場がない」に,起業後には特に家庭との両立に課題がみられる。

起業は,自分の裁量により時間の使い方を決めやすいことや,自分の能力や経験を十分に発揮しやすいことから,女性の就業の一形態として期待される一方,女性起業者が抱える課題を解決するための支援を行っていくことも求められる。

第1-特-28図 年齢階級別起業者割合(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-28図 年齢階級別起業者割合(性別)

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第1-特-29図 開業分野別起業者割合(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-29図 開業分野別起業者割合(性別)

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第1-特-30図 起業の目的別起業者割合(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-30図 起業の目的別起業者割合(性別)(複数回答)

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(女性は,能力向上の機会が少ないと意識されている)

次に,女性の能力向上の機会に関する意識について,内閣府「ライフスタイル調査」によると,女性は男性に比べて,能力向上の機会が少ないと感じている人が男女ともに約6割に上っている(第1-特-31図)。その理由としては,「そういった組織風土があるから」といったことや,「女性は途中退職することが多いため,責任のある仕事を与えたり,研修を受けさせたりすることが無駄になる可能性が高いと考えられているから」ということをそれぞれ6割以上の人が挙げている(第1-特-32図)。

第1-特-31図 女性は男性に比べて能力向上の機会が少ないと思うか(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-31図 女性は男性に比べて能力向上の機会が少ないと思うか(性別)

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第1-特-32図 女性に能力向上の機会が少ない理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-32図 女性に能力向上の機会が少ない理由(性別)(複数回答)

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(自分が10年後により高い職責の仕事に就いているか)

前出の調査において,一般論として「管理職として働いている女性は,女性の中でも特別な存在であり,普通の女性が管理職になることは難しいと思いますか」という問いに対して,「そう思う」または「どちらかと言うとそう思う」と考える人が合わせて約半数に上り,特に女性でそのように感じる人が多い(第1-特-33図)。次に,現在仕事に就いている人が10年後現在よりも高い職責にあったり,難しい仕事を行っていると思うかどうか尋ねたところ,「いいえ」と回答した人が39.3%,「分からない」と回答した人が35.4%に上り,全体として今後のキャリアアップが見通せないと感じている人が多いことが分かる。特に,女性は半数を超える人が「いいえ」と回答しており,男女間で差がみられる(第1-特-34図)。雇用形態別にみると,正社員・正規の職員の場合,男性では「はい」と回答する人が約4割程度と最も多かった。他方,女性では正社員・正規の職員の場合でも「はい」と答える人は約2割にとどまり,「いいえ」と答えた人が4割以上に達しており,同じ正社員・正規の職員でも男女間で大きな差があることが分かる。

また,契約職員や派遣職員,パート・アルバイト等では男女ともに「いいえ」と回答した人が多く,非正規職員にとっては,男女とも今後のキャリアアップが見通しづらい状況が分かる(第1-特-35図)。

前述のとおり,女性の非正規職員割合は近年男性に比べて特に高くなっていることからキャリアアップを見通しづらい職責にある人が多く,また,正規職員の女性の場合でも「いいえ」と回答する人が男性に比べて多いことから,いずれにしても今後のキャリアアップを見通せない女性が多いことが分かる。

なお,10年後に現在よりも高い職責にあると思う人は,その理由として,男性は「職場において,今後の仕事や職場経験の道筋(キャリアパス)が示されている」が最も多く,女性は「今後,自分の能力開発を行っていこうと考えているから」という理由が最も多い(第1-特-36図)。内閣府「ライフスタイル調査」においても,現在仕事に就いている人の中で,10年後に現在よりも高い職責にあると考えている人の場合,時間がとれていない活動として「学習・自己啓発」を挙げた人は,男性が42.0%であったのに対して,女性は61.8%と高かった。他方,女性の中でも10年後に現在よりも高い職責にないと考えている人の場合には39.8%にとどまった。これらのことから,10年後に現在よりも高い職責にあると考える女性は,能力開発に自ら熱心に取り組もうとする意欲が高いことが分かる。

反対に,現在よりも高い職責にないと思う人は,その理由として,「昇進する見込みのない仕事に就いているから」という理由が最も多く,10年後に現在よりも高い職責にないと思う女性の約半数,また正社員・正規の職員の場合でも約4割がこれを理由として挙げている。また,女性の場合,「キャリアパスが不明確だから」,「家事・育児・介護等やストレス等で辞めるかもしれないから」という理由を挙げる人も多く,こういったことがキャリアアップの展望を妨げる一因となっていることが分かる(第1-特-37図)。

第1-特-33図 普通の女性が管理職になるのは難しいと思うか(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-33図 普通の女性が管理職になるのは難しいと思うか(性別)

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第1-特-34図 10年後,今より高い職責にあると思うか(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-34図 10年後,今より高い職責にあると思うか(性別)

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第1-特-35図 10年後,今より高い職責にあると思うか(性別・雇用形態別) 別ウインドウで開きます
第1-特-35図 10年後,今より高い職責にあると思うか(性別・雇用形態別)

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第1-特-36図 10年後のキャリアアップが見通せる理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-32図 女性に能力向上の機会が少ない理由(性別)(複数回答)

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第1-特-37図 10年後のキャリアアップが見通せない理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-37図 10年後のキャリアアップが見通せない理由(性別)(複数回答)

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(仕事と家事・育児・介護等との両立ができ,キャリアパスが見通せる環境が求められている)

前出の調査において,女性の能力開発・能力発揮がしやすい社会にするために,行政に期待することとして,「仕事と生活を両立しやすい環境づくり」や「育児等でいったん離職した女性に対する支援の拡充」などが挙げられており,仕事と家事・育児・介護等との両立ができる環境づくりが求められている(第1-特-38図)。また,女性が子育てをしながら活躍するために,実際にあると有用だと思うものは,「ある程度子どもが育ったら,また第一線に戻れるような人事の仕組み」を挙げた人が約7割に上っているほか,「在宅勤務,テレワーク等の柔軟な勤務制度」を挙げる人も多い(第1-特-39図)。これら柔軟な勤務制度等の導入により仕事と家事・育児・介護等との両立ができるよう支援を進めていくとともに ,女性が働きながら今後のキャリアアップを見通せるようなキャリアパスを提示できるような仕組みづくりが求められる。

第1-特-38図 女性が能力開発・発揮がしやすい社会にするために,行政に期待すること(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-38図 女性が能力開発・発揮がしやすい社会にするために,行政に期待すること(性別)(複数回答)

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第1-特-39図 女性が子育てをしながら活躍するために有用な仕組み(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-39図 女性が子育てをしながら活躍するために有用な仕組み(性別)(複数回答)

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(3)家庭をめぐる状況

(妻に偏る家事分担の状況)

家庭をめぐる実態について,家事の夫婦間での分担状況について,内閣府「ライフスタイル調査」によれば,「妻が行う」,「妻が中心となって行うが,夫も手伝う」が約9割に上り,「半分ずつ分担して行っている」夫婦は約7%にとどまっている(第1-特-40図)。また,これを妻の就業状況別にみると,夫婦ともにフルタイムで働いている家庭においても,「妻が行う」,「妻が中心になって行うが,夫も手伝う」が約75%を占め,「半分ずつ分担して行っている」夫婦は約2割にとどまっている。(2)でみたとおり,就業に関しては年々共働き型の世帯が増加しているものの,家事分担については,依然として妻に負担が偏っており,女性が仕事と家事・育児・介護等との両立を継続していくことの難しさを感じさせている一因となっていることが分かる(第1-特-41図)。

第1-特-40図 家事分担の状況 別ウインドウで開きます
第1-特-40図 家事分担の状況

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第1-特-41図 家事分担の状況(男性はフルタイム労働の場合)(妻の雇用形態別) 別ウインドウで開きます
第1-特-41図 家事分担の状況(男性はフルタイム労働の場合)(妻の雇用形態別)

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(仕事に時間を取られすぎる男性が多い)

前出の調査では,自分が希望する時間の使い方ができていると思うかという問いに対して,「できていない」,「どちらかと言えばできていない」という人が36.8%に上っている(第1-特-42図)。これらの人が,時間を取りすぎていると考えているのは,男性の場合は仕事が最も多く,女性の場合は家事・育児・介護が最も多く,その後仕事が続いている(第1-特-43図)。

総務省「労働力調査」によると,平成11年から19年までの8年間で週60時間以上働いている30歳代,40歳代のフルタイムで働いている男性の割合はほとんど変わっていない。多くの男性が長時間にわたり労働に時間を割かれるという状況が,妻に偏る家事分担の一因となっていることが分かる(第1-特-44図)。

内閣府「ライフスタイル調査」によると,仕事が時間を取りすぎていると回答した人は,効率化など仕事のやり方を変えたり,仕事の量が少なくなれば自分が希望できる時間の取り方ができると考えている(第1-特-45図)。

なお,反対に,時間が取れていないと思う活動は,趣味・娯楽が男女ともに最も多く,睡眠・休養や学習・自己啓発が続いている(第1-特-43図(再掲))。

第1-特-42図 自分の希望する時間の使い方ができていると思うか(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-42図 自分の希望する時間の使い方ができていると思うか(性別)

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第1-特-43図 時間を取りすぎていると思う活動,時間がとれていない活動(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-43図 時間を取りすぎていると思う活動,時間がとれていない活動(性別)(複数回答)

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第1-特-44図 フルタイム労働者に占める週60時間以上働く者の割合の推移(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-特-44図 フルタイム労働者に占める週60時間以上働く者の割合の推移(性別・年代別)

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第1-特-45図 自分が希望する時間の取り方のために必要なこと(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-45図 自分が希望する時間の取り方のために必要なこと(性別)(複数回答)

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(出産後の夫の平日の家事・育児時間が長いほど,妻が出産後も同一就業を継続する割合が高い)

厚生労働省「第6回21世紀成年者縦断調査」(平成19年)によると,夫婦のうち,この5年間に子どもが生まれ,出産前に妻が仕事をしていた夫婦について,出産後の夫の平日の家事・育児時間別に,妻の出産後における「同一就業継続」の割合をみると,「家事・育児時間なし」で39.1%,「4時間以上」では66.7%となっており,夫が平日家事・育児に参画している家庭では,妻が同じ仕事を続けている割合が非常に高いことが分かる(第1-特-46図)。

このように,女性が仕事と家事・育児・介護等との両立を実現するためには,男性が家庭に参画できているかどうかが非常に重要な要因の一つとなっている。このため,男性が家庭に参画できるような時間をつくるためにも,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を進めることが必要である。

第1-特-46図 妻の就業継続の有無(夫の平日の家事・育児時間別) 別ウインドウで開きます
第1-特-45図 自分が希望する時間の取り方のために必要なこと(性別)(複数回答)

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(「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方には賛成,反対が拮抗)

次に,家庭をめぐる意識の面に関して,内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」の「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方についてどう思うかという問いに対する回答を時系列でみると,平成9年から19年までの10年間で,「反対」,「どちらかと言えば反対」と回答する人の割合が増加傾向にあり,19年調査で初めて反対が半数を超えるなど一定の改善がみられる。しかしながら,性別でみると,女性は反対が賛成を上回っているのに対し,男性は賛成が反対を上回っているなどいまだ根強く残っている状況にある。

前出の「男女共同参画社会に関する世論調査」とは調査方法が異なるため,必ずしも直接の比較はできないが,内閣府「ライフスタイル調査」においても「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について,「賛成」,「どちらかと言えば賛成」と回答した者と「反対」,「どちらかと言えば反対」と回答した者の数がほぼ同数であった。なお,前出の「男女共同参画社会に関する世論調査」に比べ「分からない」と回答した者も多かった。賛成側の理由としては,「子どもの成長にとって良いと思うから」,「役割分担をした方が効率が良いと思うから」が多く,反対側の理由としては,「男女ともに仕事と家庭に関わる方が,各個人,家庭にとって良いと思うから」が多い(第1-特-47図)。

性別でみると,男性ではまだ「賛成」,「どちらかと言えば賛成」と回答する者の方が多いが,男性の中でも若い世代になると賛成側と反対側の数が拮抗する。他方,女性はすべての世代で反対が賛成を上回っているが,20歳代などの若い世代において,40歳代や50歳代と比べて賛成側の回答が多くなるなど男性とは異なる傾向もみられる(第1-特-48図)(第1-特-49図)。本節で触れた非正規労働者割合の増加や仕事と子育て等との両立が難しいと感じられていることなど,現在の就業構造が若い世代の女性の意識に影響を与えていることも要因の一つと推測される。

第1-特-47図 固定的性別役割分担意識の理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-47図 固定的性別役割分担意識の理由(性別)(複数回答)

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第1-特-48図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-48図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別)

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第1-特-49図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-特-49図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別・年代別)

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(固定的性別役割分担意識により女性の約3割が自分の希望を阻害された)

また,内閣府「ライフスタイル調査」によると,「男女間の固定的な先入観を理由に自分の希望とは違う選択をしたことがあるか」という問いに対して,あると回答した男性は約1割であったのに対して,女性は約3割の人があると回答しており,固定的な性別役割分担意識が特に女性の希望を阻害する場合があることが分かる。特に女性の場合には,「仕事を続けたかったが辞めざるを得なかったことがあった」者が多い(第1-特-50図)。

第1-特-50図 固定的性別役割分担意識によって,自分の希望とは違う選択をしたことがあるか(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-50図 固定的性別役割分担意識によって,自分の希望とは違う選択をしたことがあるか(性別)(複数回答)

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(子育て世代の男性は家事や育児・介護への参画を必要だと考えている)

前述のとおり,若い世代の男性は他の世代の男性に比べて,固定的性別役割分担意識について反対する割合が高かったが,前出の内閣府「ライフスタイル調査」によると,家事や育児・介護の参画状況についても,20歳代から40歳代の子どもがいる男性は約8割が何らかの形で家事や育児・介護に関わっており,同世代の子どもがいない男性の参画割合である約4割や他の世代を含めた男性全体である55.4%と比べても参画している割合が高い(第1-特-51図)。

また,内閣府「低年齢少年の生活と意識に関する調査報告書」(平成19年2月)によると子育て中の父親のうち,仕事と育児に同じくらい関わりたいという者の割合が約7割に上っている。

さらに,厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査結果」(平成20年)によると,育児休業制度を「利用したいと思う」男性の割合は31.8%,育児のための短時間勤務制度を「利用したい」男性の割合は34.6%と3割を超えている。しかし,実際には,男性の育児休業取得率は1.56%にとどまっているなど,制度利用率は極めて低く,制度を利用したいと思っているものの,実際には利用していない男性が少なからずいることが分かる(第1-特-52表)。

なお,育児休業制度を利用したい理由をみると,「子どもが小さいうちは育児が大変だから」,短時間勤務制度を利用したい理由は「勤務時間が短縮できる分,子どもと一緒にいられる時間が増えるから」,「保育園,学童クラブ,両親等に預けられる時間が限られているから」などが上位になっている(第1-特-53図)。

このように,配偶者のみならず,多くの男性自身が育児などを通じた家庭への参画を希望していながら,現実には,特に30歳代を中心とした子育て期の男性は長時間労働となっている者の割合が高いため,帰宅が深夜になるといった状況にあるなど仕事中心の生活となる場合が多くなっている現状にある。

第1-特-51図 男性の家事参画 別ウインドウで開きます
第1-特-51図 男性の家事参画

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第1-特-52表 両立支援制度の利用意向(従業員調査)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-52表 両立支援制度の利用意向(従業員調査)(複数回答)

第1-特-53図 育児休業制度及び育児のための短時間勤務制度を利用したい理由(性別)(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-53図 育児休業制度及び育児のための短時間勤務制度を利用したい理由(性別)(複数回答)

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(4)地域をめぐる変化

(低い地域活動への参加率)

地域における活動への実際の参加状況についてみると,男女問わず決して高い水準とはいえず,また参加する分野にも男女間で偏りがある。

前出の「国民生活選好度調査」(平成18年度)により,地縁型の地域活動への参加状況をみると,例えば,町内会,自治会への参加は,男女とも半数以上が参加していない。

また,まちづくり等特定の分野のNPO活動等のボランティア・市民活動については,更に参加率が低くなり,約8割の人が「参加していない」と答えている(第1-特-54図)。

第1-特-54図 地域活動への参加状況(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-54図 地域活動への参加状況(性別)

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(低い地域活動における女性代表者割合)

地域活動への参加状況としては,男女間で大きな差はみられないが,代表者における割合をみると,自治会,NPO,商工会いずれも圧倒的に男性が多い(第1-特-55図)。地域における様々な意思決定の過程に女性が十分参画しているとはいえない状況になっている。

第1-特-55図 自治会,NPO及び商工会における代表者に占める女性の割合 別ウインドウで開きます
第1-特-55図 自治会,NPO及び商工会における代表者に占める女性の割合

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(高まる地域活動への参加意欲)

このように現状としては,地域活動への参加も低い状況にある。一方で,社会への貢献意欲や地域活動への参加意欲は高まっている。

内閣府「社会意識に関する世論調査」(平成20年)によると,社会の一員として,何か社会のために役立ちたいと思っているか,それとも,あまりそのようなことは考えていないかという質問に対しては,「思っている」と答えた者の割合が男女ともに約7割に達し,約6割であった平成10年から増加している(第1-特-56図)。

また,内閣府「地域再生に関する特別世論調査」(平成17年)及び「地方再生に関する特別世論調査」(平成19年)によれば,地域が元気になるための活動に参加する希望を持つ者の割合についてみると,「積極的に参加したい」,「機会があれば参加したい」と答えた人の割合は,男女ともに約7割と高水準で,「参加したくない」,「あまり参加したくない」を大きく上回っている。また,増加割合は女性の方が高くなっている(第1-特-57図)。

性別・年代別にみると,女性は,20歳代の若い世代で最も高く,子育て期と重なる30歳代,40歳代でいったん低下しているのが特徴的である(第1-特-58図)。

第1-特-56図 社会への貢献意識の推移(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-56図 社会への貢献意識の推移(性別)

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第1-特-57図 地域が元気になるための活動に参加したいと思うか(性別) 別ウインドウで開きます
第1-特-57図 地域が元気になるための活動に参加したいと思うか(性別)

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第1-特-58図 地域が元気になるための活動に参加したいと思うか(性別・年代別) 別ウインドウで開きます
第1-特-58図 地域が元気になるための活動に参加したいと思うか(性別・年代別)

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(地域で女性が活躍するために必要なこと)

また,内閣府「ライフスタイル調査」によると,地域で女性が活躍するために必要なこととして,家族の理解を挙げる人が多い(第1-特-59図)。女性が地域において能力を十分に発揮するためには,男性を含む地域社会全体の理解と協力が不可欠であるが,地域における女性の活躍を妨げる要因として,いまだに「世帯や組織の代表は男性」に代表される固定的な性別役割分担意識が存在することが考えられる。

第1-特-59図 地域社会において女性が活躍するために必要なこと(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-59図 地域社会において女性が活躍するために必要なこと(複数回答)

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コラム 独立行政法人国立女性教育会館によるプログラムの開発「連携・協働を推進しつつ,地域づくりに参画する人材が育つために」

3 新たな社会情勢の変化に伴う生活困難を抱える人の増加

家族の変化や雇用・就業をめぐる変化,グローバル化など,昨今の急激な社会情勢の変化の中で,経済的困難に加え,日常生活の困難や地域社会における孤立などの社会生活上の困難を含めた「生活困難」を抱えている人が増加している。特に,女性は妊娠・出産・育児等のライフイベントの影響,非正規に就きやすい女性の就業構造,女性に対する暴力,背景にある固定的性別役割分担意識等の要因から,生活困難に陥りやすい状況にある。また,男性についても孤立や日常生活自立の困難や男性役割のプレッシャーという特有の状況がみられる。


(単身世帯やひとり親世帯の増加など家族をめぐる変化)

未婚・離婚の増加や高齢化の進展により単身世帯とひとり親世帯が増加し,中でも単身世帯は今後も急増していくと見込まれている。厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば,総世帯数に占める女性の単身世帯の割合は,平成8年の11.3%から18年には13.2%に上昇している。また,総務省「国勢調査」によれば,17年の母子世帯数は約75万世帯となっている。日本の母子世帯の就労率は8割を超えて高いにもかかわらず,年間就労収入は100万円未満が約3割,100万円以上200万円未満が約4割を占める(第1-特-60図)。さらに,総務省「全国消費実態調査」によれば,2人以上の勤労世帯において女性が世帯主である割合も,6年の4.8%から16年の8.0%に伸びており,主たる生計の担い手が女性である割合が増えている。女性が自ら生計を維持する必要性が増しつつある中,経済的な困難に直面し,またそれから派生して様々な困難を抱える女性が増加している。

第1-特-60図 母子世帯・父子世帯の年間就労収入の構成割合(平成17年) 別ウインドウで開きます
第1-特-60図 母子世帯・父子世帯の年間就労収入の構成割合(平成17年)

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(非正規雇用者の増加など雇用・就業をめぐる変化)

2(2)でもみたとおり,女性や若年層を中心に非正規雇用者が急速に増加しているところである。自ら生計を担うにもかかわらず,その人自身が不安定な非正規雇用であるという層が増加することにより,生活困難に陥るリスクは高まっている。


(定住外国人の増加などグローバル化)

平成2年の出入国管理法及び難民認定法の改正により,来日する外国人が急増し,来日目的の多様化,定住化,居住地域の広域化が生じている。厚生労働省「人口動態統計」によれば,国際結婚が1980年代半ば以降急増し,その約8割が夫は日本人で妻が外国人という組み合わせである(第1-特-61図)。また,厚生労働省「平成19年度『日本における人口動態-外国人を含む人口動態統計-』」によると,18年に日本で生まれた子どもの約30人に1人が「少なくとも一方の親が外国人」という状況になっている。こういった状況の変化に伴い,在留外国人女性とその子どもの社会適応の困難といった問題も生じている。

第1-特-61図 国際結婚の動向 別ウインドウで開きます
第1-特-61図 国際結婚の動向

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(女性の生活困難リスクの顕在化及び生活困難層の多様化・一般化)

このように社会情勢が大きく変化している中,ひとり親世帯,不安定雇用者,外国人,障害者等,生活に困難を抱える人々の状況は多様化かつ深刻化している。また,女性の生活困難は,単身女性世帯や母子世帯には以前からみられた問題であったが,配偶者による扶養がある標準世帯モデルの陰に隠れてみえにくい問題であった。しかし,社会情勢の変化とともに,このような問題が顕在化しているとともに,生活困難を抱える層の多様化・一般化が進んでいる。


(より生活困難に陥りやすい状況にある女性)

我が国においては女性がより生活困難に陥りやすい状況にあるが,その背景として4つの要因を挙げることができる。まず女性は,妊娠・出産・育児等といったライフイベントに伴い,就業の中断を生じやすく,育児等との両立のために選べる職域が限られがちである。2つ目に,現状では女性の雇用は非正規雇用に集中し,相対的に低収入で不安定な雇用に就きやすい構造となっている。3つ目としては,女性に対する暴力等の影響が挙げられる。暴力被害者は,様々な身体的・精神的な不調からの回復に一定の期間を要し,就業や社会参加を困難にしている。また,仕事をするとしても夫との離婚等に伴う裁判や調停のほか,住宅の確保,就業機会の確保,子どもの養育問題等の複数の課題を抱えていることから不安定・低賃金の仕事が多く,多重就労で生活を支えることを余儀なくされるなど困難は複合的であり非常に大きい。また,家庭が安定しない状況にあると子どもの教育・学習の機会が奪われ,生活困難が世代間で連鎖するという状況も生じやすい。最後に,さらなる背景として固定的性別役割分担意識が根強いことが家庭・地域・職場における男女共同参画が進むことを阻害していることが挙げられる。


(男性特有の状況)

新たな社会情勢の変化に加え,雇用情勢の厳しさが増す中,男性についても不安定な雇用が増加し,生活困難に陥るリスクが高まっている。男性については,父子世帯や高齢の一人暮らし男性が周囲に相談相手がおらず孤立しがちであるといった問題や,日常生活自立の困難,父子世帯が育児との両立のため仕事量を調整しようとしても周囲の理解を得られにくいといった男性役割のプレッシャーといった問題も挙げられる。

こういったことから,男女共同参画の視点からの施策を推進することにより,女性・男性それぞれが生活困難に陥りやすい要因を解消する必要がある。