平成21年版男女共同参画白書

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第1節 男女共同参画推進の取組や体制の変化

本節では,男女共同参画社会基本法施行後10年間にわたる男女共同参画に関連した主な取組や様々な主体の推進体制の変化を紹介する。

1 概観

男女共同参画社会基本法は,第1-特-1図のとおり,男女共同参画社会形成の促進に向けた5つの基本理念とともに,国,地方公共団体及び国民それぞれが果たすべき責務を定めている(第1-特-1図)。基本法の施行後,男女共同参画会議の設置等を始めとして,国や地方公共団体における推進体制が強化されてきた。また,国や地方公共団体では,法に定められた計画の策定により総合的に施策が推進されてきたほか,男女雇用機会均等法の改正,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の成立並びに同法律の改正など男女共同参画を推進するための枠組みの整備,政策・方針決定過程への女性の参画拡大のように数値目標を設定することにより取組を深化させてきたもの,また仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)関連施策のように,この10年間に新たに本格的な取組が始まったものなど,男女共同参画に関連する様々な取組を拡大・深化させてきた。

また,近年では,国や地方公共団体といった行政のみならず,経営戦略として女性の活用に取り組む企業や,国際競争力の維持強化や研究活動の活性化のため女性研究者支援に取り組む大学,女性が地域活動において中心的役割を果たすNPOといった様々な主体が男女共同参画を目指した取組を始めている。

第1-特-1図 男女共同参画社会基本法の概要 別ウインドウで開きます
第1-特-1図 男女共同参画社会基本法の概要

2 男女共同参画に取り組む様々な主体における10年間の変化

ここでは,男女共同参画に取り組む様々な主体である政府や地方公共団体,企業,大学,NPOなどそれぞれの主体が,この10年間に行ってきた主な取組の内容や推進体制の変化を述べる。

(1)政府における推進体制の変化

(男女共同参画を推進する機構の強化)

政府における推進体制の変化としては,平成13年1月に中央省庁等の改革が行われ,内閣府の設置等を含め1府12省庁体制に改編されたことにより,これまで男女共同参画推進を担当していた総理府男女共同参画室は,内閣府男女共同参画局となった。また,新たに内閣府に置かれる重要政策に関する会議の一つとして,男女共同参画会議が置かれ,従来の男女共同参画審議会の機能に加え,<1>男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況の監視,<2>政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査,<3>必要があると認めるときは,内閣総理大臣及び関係各大臣に意見を述べることができることとなるなど推進機構が強化された(第1-特-2表)。また,各界各層の有識者により構成される男女共同参画推進連携会議を開催し,民間団体等との連携を図っている。

第1-特-2表 男女共同参画会議における会議決定等及び専門調査会報告等 別ウインドウで開きます
第1-特-2表 男女共同参画会議における会議決定等及び専門調査会報告等

(男女共同参画基本計画の策定)

男女共同参画社会基本法の成立以降,政府では男女共同参画に関連する様々な取組を深化・拡大させてきた(第1-特-3表)。まず,男女共同参画社会基本法第13条の規定に基づき,男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画である「男女共同参画基本計画」が初めて平成12年12月に策定された。また,17年12月には,同計画の全体を見直し,現在の計画である「男女共同参画基本計画(第2次)」が策定された。同計画では,社会的性別(ジェンダー)について,誤解や混乱の解消を図るため,社会的性別(ジェンダー)の視点1について明確な定義が置かれるとともに,不適切な事例が記述された。20年3月に男女共同参画会議において同計画のフォローアップを実施するとともに,今後取組が求められる事項等に関する意見を決定した。さらに,22年には現行計画全体の見直しを行うこととされていることから,21年3月には計画見直しに当たっての基本的な考え方について,内閣総理大臣から男女共同参画会議に対して諮問され,現在計画見直しの検討を行っている。

第1-特-3表 基本法施行後10年間の政府の男女共同参画推進の取組 別ウインドウで開きます
第1-特-3表 基本法施行後10年間の政府の男女共同参画推進の取組

1 以下,「男女共同参画基本計画(第2次)」より抜粋。

(1)人間には生まれついての生物学的性別(セックス/sex)がある。一方,社会通念や慣習の中には,社会によって作り上げられた「男性像」,「女性像」があり,このような男性,女性の別を「社会的性別」(ジェンダー/gender)という。「社会的性別」は,それ自体に良い,悪いの価値を含むものではなく,国際的にも使われている。

「社会的性別の視点」とは,「社会的性別」が性差別,性別による固定的役割分担,偏見等につながっている場合もあり,これらが社会的に作られたものであることを意識していこうとするものである。

このように,「社会的性別の視点」でとらえられる対象には,性差別,性別による固定的役割分担及び偏見等,男女共同参画社会の形成を阻害すると考えられるものがある。その一方で,対象の中には,男女共同参画社会の形成を阻害しないと考えられるものもあり,このようなものまで見直しを行おうとするものではない。社会制度・慣行の見直しを行う際には,社会的な合意を得ながら進める必要がある。

(2)「ジェンダー・フリー」という用語を使用して,性差を否定したり,男らしさ,女らしさや男女の区別をなくして人間の中性化を目指すこと,また,家族やひな祭り等の伝統文化を否定することは,国民が求める男女共同参画社会とは異なる。例えば,児童生徒の発達段階を踏まえない行き過ぎた性教育,男女同室着替え,男女同室宿泊,男女混合騎馬戦等の事例は極めて非常識である。また,公共の施設におけるトイレの男女別色表示を同色にすることは,男女共同参画の趣旨から導き出されるものではない。

上記(1)(2)について,国は,計画期間中に広く国民に周知徹底する。

(2)政府における男女共同参画推進の取組

(様々な分野における女性の活躍促進の取組)

様々な分野における女性の活躍促進のための取組としては,女性が政策・方針決定過程に参画し,活躍することを目指す「上へのチャレンジ」,従来女性が少なかった分野に新たな活躍の場を広げる「横へのチャレンジ」,子育てや介護等でいったん仕事を中断した女性の「再チャレンジ」を推進している。

政策・方針決定過程への女性の参画拡大の取組をみると,平成11年時点では国の審議会等委員以外にはほとんどなかった女性割合についての様々な数値目標が設定されるようになった(第1-特-4図)。まず,15年に男女共同参画推進本部において「社会のあらゆる分野において,2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が,少なくとも30%程度になるよう期待する」との目標が明記された「女性のチャレンジ支援策の推進について」が決定され,17年に策定された「男女共同参画基本計画(第2次)」においても重点事項の一つとして明記された。また,この「2020年30%」の目標については,19年に男女共同参画会議において,指導的地位の定義を定めるとともに,毎年進捗状況についてフォローアップを実施することが決定された。

その後,女性の参画拡大のためには,一層戦略的な取組が必要とされることから,平成20年4月には「女性の参画加速プログラム」が策定され,仕事と生活の調和の実現,女性の能力開発・能力発揮に対する支援の充実,意識改革の三つを一体として推進することを施策の基本的方向として打ち出した。また,あらゆる分野における環境の整備に加え,活躍が期待されていながら女性の参画が進んでいない分野として医師,研究者,公務員を取り上げ,これらを重点分野として女性の活躍促進の取組を22年度末までに戦略的に実施することとされた。国家公務員については,このプログラムにおいて,政府全体として本省課室長相当職以上に占める女性の割合を,22年度末に少なくとも5%程度とするという数値目標が設定された。

また,採用については,平成16年の各省庁人事担当課長会議において,22年度頃までの政府全体としての採用者に占める女性の割合の目安として,国家公務員採用 I 種試験の事務系の区分試験(行政,法律,経済)については30%程度とする等を目標とすることが申し合わされた。

従来女性が少なかった分野に新たな活躍の場を広げるための取組として,「男女共同参画基本計画(第2次)」において科学技術や防災,地域おこし,まちづくり,観光,環境を新たな重点分野として取り上げた。特に,科学技術については,女性研究者の採用割合に関する数値目標を設定した。また,女子高校生・女子学生の理工系分野への選択を支援する取組等を行っている。そして,再チャレンジでは,平成17年に「女性の再チャレンジ支援プラン」を策定した後,18年に当該プランを改定し,女性の再就職・起業等を総合的に支援している。

雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保については,男女雇用機会均等法が施行されて20年以上が経過し,制度上での男女均等取扱いは定着しつつある一方,差別事案は複雑化の傾向にあり,妊娠・出産等を理由とする解雇や不利益取扱い事案も近年増加している。これらを背景に,平成18年には男女雇用機会均等法を改正し,男女双方に対する差別,間接差別,妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止した。また,パートタイム労働者がその有する能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するため,19年には短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律を改正し,働き方の実態に応じた正社員との均衡のとれた待遇の確保,正社員への転換等を促進した。

このほか,女性の参画の促進を規定した食料・農業・農村基本法の施行など男女共同参画に関連する様々な分野において女性の活躍促進のための取組が行われてきている。

第1-特-4図 政策・方針決定過程における女性の参画拡大の取組に関連する数値目標一覧 別ウインドウで開きます
第1-特-3表 基本法施行後10年間の政府の男女共同参画推進の取組

(仕事と子育て等との両立支援,仕事と生活の調和等に関する取組)

仕事と子育て等との両立支援では,平成13年に待機児童ゼロ作戦を含む「仕事と子育ての両立支援策の方針について」が決定された。また,育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律を改正し,勤務時間の短縮等の措置の対象となる子の年齢を引き上げた。15年には少子化社会において講ぜられる基本理念等を定めた少子化社会対策基本法及び企業等に対して行動計画の策定を求める次世代育成支援対策推進法が成立し,16年には「少子化社会対策大綱」が策定され,少子化に対処するための施策が推進されている。

その後,それまでは女性を中心とした「仕事と家庭の両立」の取組であったのが,男女あらゆる年代層を対象として,育児や介護にとどまらないあらゆる活動との調和である「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の取組へと深化している。平成19年には「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」,「仕事と生活の調和推進のための行動指針」及び「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略」を策定し,20年には「新待機児童ゼロ作戦」を決定するなど,官民挙げての仕事と生活の調和の推進を図っている。


(女性に対する暴力に関する取組)

女性に対する暴力に関する取組としては,平成12年に,つきまとい等を繰り返す等のストーカー行為等に関する規制と,被害者に対する援助等を定めたストーカー行為等の規制に関する法律が制定された。

また,配偶者からの暴力は,犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず,被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。そこで配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため,平成13年に配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律が,議員立法により成立し,施行された。

その後,平成16年の改正において,「配偶者からの暴力」の定義の拡大や,元配偶者に対する保護命令・被害者の子への接近禁止命令等の創設・退去命令の期間の拡大などを柱とした保護命令制度の拡充,国による基本方針及び都道府県による基本計画の策定の義務化や,警察本部長等の援助の規定,外国人,障害者等への対応などが盛り込まれた。

平成19年の改正においては,生命身体等に対する脅迫行為についても接近禁止命令が発令されるようになったほか,接近禁止命令の保護対象者を親族や支援者等に拡大し,さらに,配偶者からの電話や電子メールの送付などについても禁止命令を発令することができるなど,保護命令制度の拡充が図られ,また,市町村に対して基本計画の策定及び配偶者暴力相談支援センターの設置を努力義務として明記するなど,市町村の取組の強化が盛り込まれ,本法律に基づき,配偶者からの暴力の防止と被害者の保護・自立支援のための施策についてより一層の充実に努めている。

また,人身取引については,その防止・撲滅と被害者の保護に向け,平成16年に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を設置し,「人身取引対策行動計画」を策定するとともに,同年の刑法改正において,人身売買罪の創設や国境を越えた人身取引への対処等を内容とする刑法等の一部を改正する法律を制定し,人身取引の処罰を確保できるよう法整備を進めた。

強姦については,平成16年の刑法改正において,刑法第177条の強姦罪の法定刑の下限を2年から3年に引き上げ,集団強姦罪を創設するなどの措置が採られている。

さらに,職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止対策については,平成18年の男女雇用機会均等法の改正において,事業主の配慮義務から措置義務へと強化された。


(国際的な動きに対する取組)

国際的な動きとしては,まず1995(平成7)年に北京において開催された第4回世界女性会議のそれぞれ5年後,10年後に,2000(平成12)年国連特別総会「女性2000年会議」,2005(平成17)年第49回国連婦人の地位委員会(「北京+10」閣僚級会合)が開催された。2000(平成12)年の会議では,第4回世界女性会議において採択された北京宣言及び行動綱領等の実施状況の検討・評価等,また2005(平成17)年の会議では,これに加え2000(平成12)年会議成果文書の実施状況の評価・見直し等を行ったところである。さらに,第4回世界女性会議から15年目に当たる2010(平成22)年には,これを記念する国連婦人の地位委員会会合が行われる予定である。

女子差別撤廃条約については,我が国に対して2003(平成15)年に条約実施状況の第4,5回報告審査が行われた。その際の女子差別撤廃委員会の最終コメントを踏まえ,関係する国内法が改正されたほか男女共同参画基本計画(第2次)にも反映がなされた。2009(平成21)年には前年に出された第6回報告に対する審査が予定されている。

また,日本からの発案により,2006(平成18)年には東京で東アジアにおける初の男女共同参画担当大臣会議である第1回東アジア男女共同参画担当大臣会合が開催され,共同コミュニケが採択された。翌年にはインドでの第2回会合が開催され,2009(平成21)年には韓国において第3回会合が開催されることとなっている。


(3)地方公共団体における取組や体制の変化

(徐々に進む市区町村における条例・計画の策定)

男女共同参画に関する条例の制定状況をみると,都道府県では平成13年に74.5%(35都道府県)であったのが,20年には97.9%(46都道府県)に増加している。また,市区町村では,13年に0.5%であったのが,20年には21.9%に増加している。

また,男女共同参画社会基本法第14条では,都道府県に対して都道府県男女共同参画基本計画を策定する義務を課し,市区町村に対しては,市区町村男女共同参画基本計画を策定するよう努力することを求めている。その結果,基本法施行後,都道府県については,全都道府県が基本計画を策定しており,市区町村については,平成11年に15.6%であった計画策定率が,20年には57.1%と3倍以上に増加した。なお,策定率の内訳をみると,20年で市区は88.5%と大半の自治体が計画を策定しているのに対して,町村については,31.9%にとどまっている(第1-特-5図)。

第1-特-5図 市区町村における条例及び計画策定率の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-5図 市区町村における条例及び計画策定率の推移

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(女性政策から男女共同参画政策へ)

国における取組も昭和50年の「婦人問題企画推進本部」の設置から始まったように,地方公共団体においても,男女共同参画の取組は女性政策の取組として始まったところが多い。男女共同参画社会基本法が施行される直前の平成11年4月現在で,各都道府県における男女共同参画を担当する課又は室の名称は,39都道府県が女性又は女性政策を使用し,6県が男女共同参画を使用していたが,20年4月には,40府県が男女共同参画又は男女参画を使用している。このように男女共同参画社会基本法が施行されてから,地方公共団体においても女性政策から男女共同参画政策へと転換が図られていることが分かる。

また,市町村における男女共同参画宣言の実施状況をみると,平成20年4月現在で全体の6.7%に当たる122市町村が宣言を行っている。


(増加する男女共同参画センター等)

地方公共団体が,男女共同参画・女性のための総合的な施設として設置している男女共同参画センター又は女性センターなどの施設の数は,平成20年4月現在で333に上る。地方公共団体の設置割合をみると,都道府県では11年では63.8%であったのが,20年には95.7%にまで増加し,市町村では13年に5.6%であったのが,20年には14.5%に増加している(第1-特-6図)。一方,現在地方公共団体においては,地方経済の低迷や厳しい財政事情等を背景に,行財政改革が進められており,これに伴い,男女共同参画に関する予算や人員が削減されるなど男女共同参画推進の機能を十分に発揮していく上で課題を抱える地方公共団体も増えてきている。

第1-特-6図 男女共同参画・女性のための総合的な施設(男女共同参画センター等)の整備率の推移 別ウインドウで開きます
第1-特-6図 男女共同参画・女性のための総合的な施設(男女共同参画センター等)の整備率の推移

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(4)企業,大学,NPO等における取組や体制の変化

(広がる企業における両立支援制度や女性の活躍促進)

従来男女共同参画推進の取組は国や地方公共団体といった行政によるものがほとんどであったが,この10年間において行政以外の主体も男女共同参画に関して取り組みつつある。平成15年からの次世代育成支援対策推進法の施行により,一定規模以上の企業では,仕事と家庭の両立を支援するための雇用環境の整備等に関する行動計画を策定し,届け出ることが求められることとなった。21年3月末現在で,策定・届出が義務付けられている301人以上の企業の届出率は99.1%,努力義務である300人以下の企業の届出数は18,137社となっている。また,適切な行動計画を策定・実施し,その目標を達成するなど一定の要件を満たした企業は,厚生労働大臣の認定を受け,「くるみんマーク」を使用することができるとされているところであり,21年3月末現在の認定企業は652社となっている。さらに,多様な人材を活用することにより,組織が活性化される,経済情勢の変化にも柔軟・迅速な対応ができる,といった考えから,組織の中に女性活躍推進室やダイバーシティ推進室といった組織を設けるなど,企業が経営戦略として女性の能力を積極的に活用する動きがみられる。

また,「優秀な人間がやめないですむ」,「優秀な人材を採用できる」といった企業業績に与えるプラス面もあると考えられており2,このようなことからも仕事と家庭を両立することができるような制度を導入する企業が増えてきているといえる。厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成17年)によると,育児休業制度の規定がある事業所の割合は61.6%,介護休業制度の規定がある事業所の割合は55.6%となっている。さらに,厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」(平成19年度)及び「女性雇用管理基本調査」(平成11年度及び14年度)によると,仕事と家庭を両立するための支援制度を導入している企業の割合は増加している。特に,短時間勤務制度については,平成11年度に約3割であったのが,19年度には約6割と倍増しているほか,始業・終業時刻の繰上げ・繰下げなどについても導入している企業の割合が増加するなど,企業が柔軟な働き方ができるような制度を導入してきていることが分かる(第1-特-7図)。

加えて,企業が主体となって様々な分野で活躍する女性を表彰する制度を創設し,女性の活躍を促進する動きも活発化している。

2 (株)富士通総研「中小企業の両立支援に関する企業調査」(平成18年)(経済産業省委託調査)によると,仕事と育児の両立を支援する取組が企業業績に与えるプラス面として,「優秀な人材がやめないですむ51.3%」,「優秀な人材を採用できる22.3%」,「支援を受けた従業員の会社への忠誠心が高まり子育て復帰後貢献が期待できる21.2%」などが挙げられている(複数回答)。

くるみんマークの写真

第1-特-7図 企業における育児休業制度以外の両立支援制度の導入割合の推移(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-特-7図 企業における育児休業制度以外の両立支援制度の導入割合の推移(複数回答)

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(女性研究者支援のための大学等における体制整備)

近年,大学等においても女性研究者支援について取り組みつつある。女性研究者の割合は,平成11年に10.1%であったのが,20年には13.0%と漸増しているが,分野別にみると,理工系分野における女性研究者の割合が低くなっている。機関別では,大学等が22.7%に対し,企業等は7.6%(平成20年)となっている。

平成18年度に文部科学省が開始した科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」において,20年度までに33機関(大学30機関,独立行政法人3機関)が採択され,各機関において基盤的な環境整備のシステム構築の取組が実施されている。

さらに,内閣府「国立大学法人等の科学技術関係活動に関する調査」(平成18年,19年及び20年)によると,男女共同参画担当副学長の設置,担当室や推進本部の設置,学内保育施設の設置・運営,出産等に伴う休暇制度の拡大等女性研究者の採用への配慮は進展している。また,女性教員の割合や採用の数値目標を設定している国立大学等は平成18年度の17.4%から20年度には32.2%に増加している。

コラム 女性研究者の活躍促進

(NPO等各種団体における男女共同参画の取組)

特定非営利活動促進法が平成10年12月に施行され,同法の規定する特定非営利活動の一つとして「男女共同参画社会の形成の促進を図る活動」が規定された。特定非営利活動法人の全体数は11年に741であったのが,20年には35,000を超えるまで増加している中,「男女共同参画社会の形成の促進を図る活動」を定款において目的の一つとして掲げている法人は,11年の81から,20年には約3,000に増加している。

また,これらの法人を含め,様々な団体においても男女共同参画の推進に向けた取組が進められている。自ら行動計画を策定して取組を進めている団体として,日本弁護士連合会においては女性役職者に係る数値目標の設定等「男女共同参画推進基本計画」に基づいた取組が進められている。職場復帰・継続就業支援としては,日本医師会において女性医師バンクの整備や院内保育施設の充実等が行われている。

さらに,近年,既存の各種団体による取組に加え,企業における女性管理職等自らが核となり,ネットワークを形成する動きが出てきている。たとえば,平成19年に設立された特定非営利活動法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク(J‐win)では,セミナー等の実施を通じ,メンバー同士の相互研鑽を図っている。

コラム 男女共同参画推進に対する積極的評価の取組