平成21年版男女共同参画白書

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特集編 男女共同参画の10年の軌跡と今後に向けての視点―男女共同参画社会基本法施行から10年を迎えて―

平成11年6月に男女共同参画社会基本法が公布・施行されてから,本年は10年目に当たる。この10年の間,我が国において様々な男女共同参画に関する取組が行われたほか,社会情勢も大きく変化した。ここでは,主に男女共同参画社会基本法が施行されてから現在に至る10年間について,男女共同参画を推進する様々な主体の取組や推進体制の変化及び実態上の様々な分野における変化や現状と課題について概観・分析を行い,今後の男女共同参画社会の実現に向けた取組の在り方を展望する。

特集のポイント


第1節 男女共同参画推進の取組や体制の変化

  • 基本法施行後,国では男女共同参画会議の設置など推進体制が強化されたほか,男女共同参画に関連する取組を進めてきた。
  • 地方公共団体においても,条例の制定や計画の策定,また男女共同参画センターの設置等が進んだ。
  • 行政以外にも企業,大学,NPOなど様々な主体がこの10年間に男女共同参画を目指した取組を始めている。

第2節 男女共同参画をめぐる実態と課題

  • 基本法の基本理念については,一定の前進がみられると考えられるが,女性は男性ほど男女共同参画が進んでいるとは捉えていない。
  • 政策・方針決定過程への女性の参画は10年間で緩やかに進んでいるが,国際的には低い水準にとどまっている状況にある。
  • 子どもができても継続就業を望む人は増えており,20歳代後半から30歳代後半にかけての女性の労働力率は上がっているが,国際的には依然として低く,子育て等との両立は依然として難しいと感じられている。また,女性の場合,非正規職員の割合が高まる中キャリアパスが不明確であったり,子育て等との両立の難しさから,キャリアアップを見通せないと感じる人が多い。
  • 実際の家庭における家事分担は妻に偏る状況にある。他方,多くの男性が長時間にわたり労働に時間を割かれている。「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方については,賛成と反対が拮抗しているが,子育て期の男性は家事や育児等に参画したいと考える人も多い。
  • 地域におけるつながりが希薄化する中,地域活動における女性の代表者は依然として少ないが,女性の地域活動への参加意欲や地域の担い手としての当事者意識は高い。
  • 家族の変化や雇用・就業をめぐる変化,グローバル化など昨今の急激な社会情勢の変化の中で,「生活困難」を抱えた人が増加しており,特に女性は生活困難に陥りやすい状況にある。また,男性にも特有の状況が見られる。

第3節 男女共同参画社会の実現に向けて

  • 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス),女性のキャリア形成支援,意識改革の3つの取組はそれぞれ密接に関連しており,一体として捉えた上で進める必要がある。
  • 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)実現のためには,柔軟で多様な働き方の確保や社会的基盤の充実をともに進める必要がある。また,企業の生産性の向上やリスク管理,多様な人材の活用という観点から,経営戦略上も重視すべきである。
  • 女性のキャリア形成を支援していくために,企業においてポジティブ・アクションの推進やメンターの育成等による支援を行うとともに,キャリア教育の推進など女性のライフコースに沿った支援を行うことが必要である。
  • 男女間での認識の差や,男女によって異なる世代間の意識の違いにも留意した啓発活動を進めるとともに,男女共同参画のメリットを実感できるよう意識啓発の推進の仕方にも工夫をすることが必要である。
  • 生活困難を抱える人の増加など新たに生じてきた課題への対応に当たっては,関連する様々な社会システムを男女共同参画の観点から検証するとともに,女性のライフコースを通じたエンパワーメントの視点からの総合的な支援体制の構築等を行っていく必要がある。
  • 男女共同参画社会の実現に向けて,地域における様々な主体のネットワーク化による連携・協働を進めていくほか,国際的な枠組みの下での連携を強化していく必要がある。