平成21年版男女共同参画白書

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第4章 高齢男女をめぐる状況

(経済的自立がしにくい高齢女性)

総務省「国勢調査」(平成17年)によると,国民の5人に1人が65歳以上の高齢者であり,その6割近くを占めるのが女性となっている。特に,85歳以上では女性が実に7割以上を占めている。

女性の働き方は,結婚・出産・育児等のために非正規雇用が多く,就業年数も短い傾向にあるが,その結果,高齢期における年金等の収入も少なくなりがちである。55~74歳の男女について本人の就業パターン別に現在の年間収入をみると,正規か非正規かという雇用形態による収入格差だけでなく,同じ正規雇用中心でも女性は男性に比べて収入がきわめて低いことが分かる(第20図)。

中でも厳しい状況に置かれているのが離別女性である。離別女性は,夫の収入や遺族年金に頼ることもできず,安定した再就職もままならないことが少なくない。離別女性は,その3人に1人が年収120万円未満であるが(第21図),それには雇用者のうち約4割が非正規雇用中心の就労経歴であったことなどが影響しているとみられる(内閣府「高齢男女の自立した生活に関する調査」(平成20年))。


第20図 高齢者等(55~74歳)の本人の就業パターンによる年間収入(性別)(平均額)
第20図 高齢者等(55~74歳)の本人の就業パターンによる年間収入(性別)(平均額)

第21図 高齢単身世帯(55~74歳)における低所得層の割合(年間収入)
第21図 高齢単身世帯(55~74歳)における低所得層の割合(年間収入)

(単身男性の問題)

他方,男性については,単身の男性の地域における孤立が深刻化している。内閣府「高齢男女の自立した生活に関する調査」では,単身の55~74歳男性の4人に1人が「話し相手や相談相手がいない」と回答している(第22図)。男性で単身の場合は,約半数は子どもがいないため,家族による支えも期待しにくいと言える。

加えて,前出の調査では,特に未婚の単身男性について,約1割が年収60万円未満であるなど,一部に経済的に厳しい状況があることも分かる(第21図(再掲))。これまでは高齢者の中での経済困窮層は単身女性であるという捉え方だったが,今後は,単身男性に対する支援も課題として捉えていく必要があると言える。

第22図 話し相手や相談相手がいる者の割合(55~74歳)
第22図 話し相手や相談相手がいる者の割合(55~74歳)

(高齢単身世帯の増加)

孤立や経済困窮などの問題を抱えやすい高齢の単身世帯は,未婚や離婚が増える中で今後急速に増えていくと考えられる。特に単身世帯の増加が著しいのが男性である。約20年後の2030年には男女共に約2割が一人暮らしの社会になると予測されている(第23図)。

第23図 65歳以上単独世帯数の将来推計(性別)
第23図 65歳以上単独世帯数の将来推計(性別)

(多様な働き方~非正規雇用の増加が高齢期に与える影響)

雇用就業をめぐる状況が変化する中,非正規雇用が若年層も含めて増加傾向にある。中でもその割合が高いのが女性で,平成20年は,正規の職員・従業員の割合が46.5%にとどまり,残りの53.5%が非正規雇用である。男性についても非正規雇用の割合は上昇しつつあり,20年は19.1%となっている(第8図(再掲))

非正規雇用者は,現状においては厚生年金等被用者保険の適用から除外されやすい状況にあるため,その増加は将来において老後の生活設計を描きにくい層の増加に結びつく可能性がある。