平成21年版男女共同参画白書

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第2節 男女共同参画をめぐる実態と課題

男女共同参画社会基本法施行10周年に合わせて,これまでの取組の評価や現状,課題などを調査するため,内閣府が実施した「男女のライフスタイルに関する意識調査」の結果も紹介しながら,様々な主体による取組や社会情勢の変化等に伴い男女共同参画に関する様々な分野において,実態がどのように変化してきたか,また男女共同参画に関連してどのような課題があるか等について分析を行う。


1 男女共同参画の推進に関する進捗状況

(1)男女共同参画社会基本法の理念についての進捗状況

(基本法の基本理念については一定の前進がみられる)

男女共同参画社会基本法の5つの基本理念の進捗状況について,男女共同参画社会基本法が施行された10年前と比較していずれも「どちらかと言えば前進した」と考える者が最も多い。男女別にみると,いずれの基本理念についても男性の方が女性よりも前進したと考えている。女性は,男性が考えているほど男女共同参画社会の形成が進んでいると捉えていないという男女間の認識の差異がある(第3図)。

第3図 男女共同参画社会基本法の理念の実現状況についての評価(10年前との比較)(性別)
第3図 男女共同参画社会基本法の理念の実現状況についての評価(10年前との比較)(性別)

(2)男女共同参画に関連したイベントや施設に関する利用状況

(男女共同参画関連イベントの参加や男女共同参画センター等の施設の利用状況)

国や地方公共団体が実施する男女共同参画社会実現のためのイベント等について,「知らない」と回答した者が男女ともに6割を超えている。また,若い世代において特にイベント等の参加率及び認知度が低い状況にある。

同様に,男女共同参画・女性のための総合的な施設である男女共同参画センター等について,その存在を「知らない」と回答した者が男女ともに約6割を占めており,また若い世代において特に施設の利用率及び認知度が低い状況にある。利用しない者の理由は,「機会がない」が最も多い。


2 それぞれの分野における変化

(1)政策・方針決定過程における変化

(緩やかに上昇する女性の政策・方針決定過程への参画割合)

現在の女性の参画の状況について10年前と比較すると,緩やかではあるが,それぞれの分野において女性の割合は上昇している(第4図)。

第4図 各分野における「指導的地位」に女性が占める割合(10年前との比較)
第4図 各分野における「指導的地位」に女性が占める割合(10年前との比較)

(国際的にみると低い水準にとどまっている状況)

国連開発計画(UNDP)が発表している政治及び経済活動への女性の参画を示すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)については,他国と比較した順位でみると下降傾向にあり,我が国においても女性が政治・経済活動に参加し,意思決定に参加する機会は増えてはきているものの,他国に比べるとその歩みが遅い。

我が国の女性の参画拡大が他国と比べて遅れている原因として,「仕事と家事・育児・介護等の両立支援制度がない,足りない」,あるいは「制度があっても活用できる雰囲気がない」といったことが挙げられており,特に女性は,仕事と家事・育児・介護等との両立をしていくための支援制度が必ずしも十分ではないことなどから女性の参画拡大が進まないと感じている。


(社会における女性の能力の活用)

社会において,女性の能力は十分活用されていると思うかという現状に関する意識についての問いに対して,男性は「そう思う」,「どちらかと言えばそう思う」と肯定的な回答をしている者が多い。一方女性は,肯定する者,否定する者,どちらとも言えないとする者が概ね同じくらいの割合で存在する。

また,社会において,女性の参画がもっと必要だと思う分野としては,男女ともに政治家が最も多く,企業・団体の幹部層が続いた。


(2)就業をめぐる変化と女性の能力発揮・能力開発といったキャリア形成

(共働きが増加傾向で推移するとともに,子どもができても継続就業を望む女性が増加)

就業をめぐる実態上の変化について,夫婦ともに雇用者となっている共働き世帯は年々増加傾向にあり,男性雇用者と無業の妻からなる片働き世帯との差は広がっている。

また,18~34歳の未婚女性が理想とするライフコースとして,継続就業を挙げる人が増加し,再就職を挙げる人とほぼ同じとなった。

さらに,一般的に女性が職業を持つことについて,「子どもができても,ずっと職業を続ける方がよい」という回答が男女ともに増加しており,就業を肯定的に捉える傾向が強まっている。


(20歳代後半から30歳代後半にかけての労働力率は上がっているが,国際的にはまだ低い状況)

女性の年齢階級別労働力率は,現在も依然として「M字カーブ」を描いているものの,そのカーブは以前に比べてかなり浅くなっており,M字部分の底となっている年齢階級も30年前と比較すると,20歳代後半から30歳代へと変化している(第5図)。しかしながら,国際的にみると台形型に近くなっている国が多いのに対し,日本のM字カーブの底は深く,子育て期には仕事を辞めている女性が少なくない。


第5図 女性の年齢階級別労働力率の推移
第5図 女性の年齢階級別労働力率の推移

(長期的には縮小傾向にあるが依然として大きい賃金格差)

正規雇用者など一般労働者における男女の1時間当たり平均所定内給与格差は,男性一般労働者の給与水準を100としたとき,平成11年の女性一般労働者の給与水準が65.4であったのが,20年には69.0と長期的には縮小傾向にあるものの依然として格差は大きい。また,短時間労働者の給与水準は,男性一般労働者の給与水準を100としたとき,11年の女性44.0,男性50.8から20年の女性48.5,男性53.3と格差は縮小しているものの,依然低い状況にとどまっている(第6図)。

第6図 労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移(男性一般労働者=100)
第6図 労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移(男性一般労働者=100)

(緩やかに上昇しているが上位職になるほど低い民間企業管理職に占める女性割合)

民間企業における女性管理職割合の推移をみると,係長相当職では平成11年の8.2%から20年には12.7%に増加している。上位の役職では女性の割合が低く,部長相当職では11年の2.1%から20年には4.1%と緩やかに増加しているが依然として低い状況にある(第7図)

第7図 役職別管理職に占める女性割合の推移
第7図 役職別管理職に占める女性割合の推移

(増加する非正規労働者割合)

非農林業の雇用者のうち,非正規の職員・従業員の数及び割合は男女とも年々増加しており,特に女性の非正規の職員・従業員割合は平成16年以降半数を超えている(第8図)。また,1990年代以降,女性並びに若年層を中心として非正規雇用者が急速に増えてきている

第8図 雇用形態別にみた役員を除く雇用者(非農林業)の構成割合の推移(性別)
第8図 雇用形態別にみた役員を除く雇用者(非農林業)の構成割合の推移(性別)

(継続就業の状況)

育児休業を利用せずに就業を継続している者の割合は減少し,育児休業を取得している女性の割合は増加しているものの,出産前後に継続就業している者の割合の合計は増えていない。

さらに,仕事をしていた妻が出産後も同じ仕事を継続しているかについて,妻の仕事が正規の場合には67.3%が継続しているのに対して,妻の仕事が非正規の場合には就業継続の割合が22.9%にとどまっており,正規と非正規職員の間で出産を機に就業を継続しているかどうかについて大きな差がある。


(女性の起業)

創業・設立5年以内で従業員10名以下の法人・個人事業所の経営者・事業主を対象とした調査における起業者の年齢構成では,女性は男性に比べて比較的若年で起業をするという違いがみられる。また,起業分野をみると,女性は半数近くがサービス分野での起業となっている。


(女性は,能力向上の機会が少ないと意識されている)

女性は男性に比べて,能力向上の機会が少ないと感じている人が男女ともに約6割に上っている。その理由としては,「そういった組織風土があるから」といったことや,「女性は途中退職することが多いため,責任のある仕事を与えたり,研修を受けさせたりすることが無駄になる可能性が高いと考えられているから」ということをそれぞれ約6割の人が挙げている。


(自分が10年後により高い職責の仕事に就いているか)

一般論として管理職として働いている女性は,女性の中でも特別な存在であり,普通の女性が管理職になることは難しいと考える人が約半数に上る。また,現在仕事に就いている女性のうち半数を超える人が,10年後現在よりも高い職責にあったり,難しい仕事を行っていると思うかという問いに対して,「いいえ」と回答している。雇用形態別にみると,正社員・正規の職員の場合,男性では「はい」と回答する人が最も多いのに対して,女性では正社員・正規の職員の場合でも「はい」と答える人は約2割にとどまり,「いいえ」と答えた人が4割以上に達するなど,同じ正社員・正規の職員でも男女間で大きな差がある。また,非正規職員にとっては,男女とも今後のキャリアアップが見通しづらい状況が分かる(第9図)。

女性の非正規職員割合は近年男性に比べて特に高くなっていることからキャリアアップを見通しづらい職責にある人が多く,また,正規職員の女性の場合でも「いいえ」と回答する人が男性に比べて多いことから,いずれにしても今後のキャリアアップを見通せない女性が多い。

なお,10年後に現在よりも高い職責にあると思う人は,その理由として,男性は「職場において,今後の仕事や職場経験の道筋(キャリアパス)が示されている」が最も多く,女性は「今後,自分の能力開発を行っていこうと考えているから」という理由が最も多い。

反対に,現在よりも高い職責にないと思う人は,その理由として,「昇進する見込みのない仕事に就いているから」という理由が最も多く,また,女性の場合,「キャリアパスが不明確だから」,「家事・育児・介護等やストレス等で辞めるかもしれないから」という理由を挙げる人も多い。

第9図 10年後,今より高い職責にあると思うか(性別・雇用形態別)
第9図 10年後,今より高い職責にあると思うか(性別・雇用形態別)

(仕事と家事・育児・介護等との両立ができ,キャリアパスが見通せる環境が求められている)

女性の能力開発・能力発揮がしやすい社会にするために,行政に期待することとして,「仕事と生活を両立しやすい環境づくり」や「育児等でいったん離職した女性に対する支援の拡充」などが挙げられており,仕事と家事・育児・介護等との両立ができる環境づくりが求められている。また,女性が子育てをしながら活躍するために,実際にあると有用だと思うものは,「ある程度子どもが育ったら,また第一線に戻れるような人事の仕組み」や,「在宅勤務,テレワーク等の柔軟な勤務制度」が多い。これら柔軟な勤務体制等の導入により仕事と家事・育児・介護等との両立ができるよう支援を進めていくとともに,女性が働きながら今後のキャリアアップを見通せるようなキャリアパスを提示できるような仕組みづくりが求められる。


(3)家庭をめぐる状況

(妻に偏る家事分担の状況)

家事の夫婦間での分担状況について,「妻が行う」,「妻が中心となって行うが,夫も手伝う」が約9割に上り,「半分ずつ分担して行っている」夫婦は約7%にとどまっている。また,夫婦ともにフルタイムで働いている家庭においても,「妻が行う」,「妻が中心になって行うが,夫も手伝う」が約75%を占め,「半分ずつ分担して行っている」夫婦は約2割にとどまっている。


(仕事に時間を取られすぎる男性が多い)

自分が希望する時間の使い方ができていると思うかという問いに対して,「できていない」,「どちらかと言えばできていない」という人が36.8%に上っている。これらの人が,時間を取りすぎていると考えているのは,男性の場合は仕事が最も多く,女性の場合は家事・育児・介護が最も多く,その後仕事が続いている。

週60時間以上働いている30歳代,40歳代のフルタイムで働いている男性の割合はほとんど変わっていない。多くの男性が長時間にわたり労働に時間を割かれるという状況が,妻に偏る家事分担の一因となっている。

仕事が時間を取りすぎていると回答した人は,効率化など仕事のやり方を変えたり,仕事の量が少なくなれば自分が希望できる時間の取り方ができると考えている。


(出産後の夫の平日の家事・育児時間が長いほど,妻が出産後も同一就業を継続する割合が高い)

夫婦のうち,この5年間に子どもが生まれ,出産前に妻が仕事をしていた夫婦について,出産後の夫の平日の家事・育児時間別に,妻の出産後における「同一就業継続」の割合をみると,「家事・育児時間なし」で39.1%,「4時間以上」では66.7%となっており,夫が平日家事・育児に参画している家庭では,妻が同じ仕事を続けている割合が非常に高い(第10図)。

このように,女性が仕事と家事・育児・介護等との両立を実現するためには,男性が家庭に参画できているかどうかが非常に重要な要因の一つとなっている。

第10図 妻の就業継続の有無(夫の平日の家事・育児時間別)
第10図 妻の就業継続の有無(夫の平日の家事・育児時間別)

(「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方には賛成,反対が拮抗)

「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった固定的な性別役割分担意識について,どう思うかという問いに対する回答を時系列でみると,10年間で反対側の割合が増加傾向にあり,一定の改善がみられるが,性別でみると女性は反対が賛成を上回っているのに対し,男性は賛成が反対を上回っているなどいまだ根強く残っている状況にある。

また,今回内閣府が実施した調査においても「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について,賛成と反対がほぼ同数である。賛成側の理由としては,「子どもの成長にとって良いと思うから」,「役割分担をした方が効率が良いと思うから」が多く,反対側の理由としては,「男女ともに仕事と家庭に関わる方が,各個人,家庭にとって良いと思うから」が多い。性別でみると,男性ではまだ賛成側の方が多いが,男性の中でも若い世代になると賛成側と反対側の数が拮抗する。他方,女性は20歳代などの若い世代において,40歳代や50歳代と比べて賛成側の回答が多くなるなど男性とは異なる傾向もみられる(第11図)。

第11図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別・年代別)
第11図 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった考え方について(性別・年代別)

(子育て世代の男性は家事や育児・介護への参画を必要だと考えている)

家事や育児・介護の参画状況についても,20歳代から40歳代の子どもがいる男性は約8割が何らかの形で家事や育児・介護に関わっており,同世代の子どもがいない男性の参画割合である約4割や他の世代を含めた男性全体である55.4%と比べても参画している割合が高い。

また,育児休業制度を「利用したいと思う」男性の割合は31.8%,育児のための短時間勤務制度を「利用したい」男性の割合は34.6%と3割を超えているが,制度利用率は極めて低く,制度を利用したいと思っているものの,実際には利用していない男性が少なからずいる。

なお,育児休業制度を利用したい理由をみると,「子どもが小さいうちは育児が大変だから」,短時間勤務制度を利用したい理由は「勤務時間が短縮できる分,子どもと一緒にいられる時間が増えるから」,「保育園,学童クラブ,両親等に預けられる時間が限られているから」などが上位になっている。

このように,配偶者のみならず,多くの男性自身が育児などを通じた家庭への参画を希望していながら,現実には,特に30歳代を中心とした子育て期の男性は長時間労働となっている者の割合が高いため,帰宅が深夜になるといった状況にあるなど仕事中心の生活となる場合が多くなっている現状にある。


(4)地域をめぐる変化

(低い地域活動への参加率)

地域における活動への実際の参加状況についてみると,男女問わず決して高い水準とはいえず,また参加する分野にも男女間で偏りがある。


(低い地域活動における女性代表者割合)

地域活動における女性代表者の割合をみると,自治会,NPO,商工会いずれも圧倒的に男性が多い。地域における様々な意思決定の過程に女性が十分参画しているとはいえない状況になっている。


(高まる地域活動への参加意欲)

社会への貢献意欲や地域活動への参加意欲は高まっている。性別・年代別にみると,女性は,20歳代の若い世代で最も高く,子育て期と重なる30歳代,40歳代でいったん低下しているのが特徴的である。


(地域で女性が活躍するために必要なこと)

地域で女性が活躍するために必要なこととして,家族の理解を挙げる人が多い。女性が地域において能力を十分に発揮するためには,男性を含む地域社会全体の理解と協力が不可欠であるが,地域における女性の活躍を妨げる要因として,いまだに「世帯や組織の代表は男性」に代表される固定的な性別役割分担意識が存在することが考えられる。


3 新たな社会情勢の変化に伴う生活困難を抱える人の増加

(単身世帯やひとり親世帯の増加など家族をめぐる変化)

未婚・離婚の増加や高齢化の進展により単身世帯とひとり親世帯が増加し,中でも単身世帯は今後も急増していくと見込まれている。総世帯数に占める女性の単身世帯の割合は,平成8年の11.3%から18年には13.2%に上昇している。また,17年の母子世帯数は約75万世帯となっている。日本の母子世帯の就労率は8割を超えて高いにもかかわらず,年間就労収入は100万円未満が約3割,100万円以上200万円未満が約4割を占める(第12図)。さらに,2人以上の勤労世帯において女性が世帯主である割合も,6年の4.8%から16年の8.0%に伸びており,主たる生計の担い手が女性である割合が増えている。女性が自ら生計を維持する必要性が増しつつある中,経済的な困難に直面し,またそれから派生して様々な困難を抱える女性が増加している。

第12図 母子世帯・父子世帯の年間就労収入の構成割合(平成17年)
第12図 母子世帯・父子世帯の年間就労収入の構成割合(平成17年)

(非正規雇用者の増加など雇用・就業をめぐる変化)

女性や若年層を中心に非正規雇用者が急速に増加しているところである。自ら生計を担うにもかかわらず,その人自身が不安定な非正規雇用であるという層が増加することにより,生活困難に陥るリスクは高まっている。


(定住外国人の増加などグローバル化)

来日する外国人が急増し,来日目的の多様化,定住化,居住地域の広域化が生じている。国際結婚が1980年代半ば以降急増し,その約8割が夫は日本人で妻が外国人という組み合わせである。また,平成18年に日本で生まれた子どもの約30人に1人が「少なくとも一方の親が外国人」という状況になっている。こういった状況の変化に伴い,在留外国人女性とその子どもの社会適応の困難といった問題も生じている。


(女性の生活困難リスクの顕在化及び生活困難層の多様化・一般化)

ひとり親世帯,不安定雇用者,外国人,障害者等,生活に困難を抱える人々の状況は多様化かつ深刻化している。また,女性の生活困難は,単身女性世帯や母子世帯には以前からみられた問題であったが,配偶者による扶養がある標準世帯モデルの陰に隠れてみえにくい問題であった。しかし,社会情勢の変化とともに,このような問題が顕在化しているとともに,生活困難を抱える層の多様化・一般化が進んでいる。


(より生活困難に陥りやすい状況にある女性)

我が国においては女性がより生活困難に陥りやすい状況にあるが,その背景として4つの要因を挙げることができる。まず女性は,妊娠・出産・育児等といったライフイベントに伴い,就業の中断を生じやすく,育児等との両立のために選べる職域が限られがちである。2つ目に,現状では女性の雇用は非正規雇用に集中し,相対的に低収入で不安定な雇用に就きやすい構造となっている。3つ目としては,女性に対する暴力等の影響が挙げられる。暴力被害者は,様々な身体的・精神的な不調からの回復に一定の期間を要し,就業や社会参加を困難にしている。また,仕事をするとしても夫との離婚等に伴う裁判や調停のほか,住宅の確保,就業機会の確保,子どもの養育問題等の複数の課題を抱えていることから不安定・低賃金の仕事が多く,多重就労で生活を支えることを余儀なくされるなど困難は複合的であり非常に大きい。また,家庭が安定しない状況にあると子どもの教育・学習の機会が奪われ,生活困難が世代間で連鎖するという状況も生じやすい。最後に,さらなる背景として固定的性別役割分担意識が根強いことが家庭・地域・職場における男女共同参画が進むことを阻害していることが挙げられる。


(男性特有の状況)

新たな社会情勢の変化に加え,雇用情勢の厳しさが増す中,男性についても不安定な雇用が増加し,生活困難に陥るリスクが高まっている。男性については,父子世帯や高齢の一人暮らし男性が周囲に相談相手がおらず孤立しがちであるといった問題や,父子世帯が育児との両立のため仕事量を調整しようとしても周囲の理解を得られにくいといった男性役割のプレッシャーといった問題も挙げられる。

こういったことから,男女共同参画の視点からの施策を推進することにより,女性・男性それぞれが生活困難に陥りやすい要因を解消する必要がある。