平成20年版男女共同参画白書

本編 > コラム 緊急時における安全の確保と岡山市の取組

コラム

緊急時における安全の確保と岡山市の取組


平成20年1月から施行された改正配偶者暴力防止法では,市町村による配偶者暴力相談支援センター(以下「支援センター」という。)の設置及び市町村基本計画の策定が市町村の努力義務とされるとともに,配偶者からの暴力の被害者の緊急時における安全の確保が支援センターの業務として位置付けられることとなった。緊急時における安全の確保は,婦人相談所の一時保護が行われるまでの間において,被害者に避難場所を提供するなどのことであり,支援センターにおいて,このような安全の確保を行う場合が生じていることから,法律上明確化されたものである。緊急時における安全の確保は,その趣旨を踏まえ,身近な行政主体である市町村において積極的な実施が望まれる業務の一つである。

今回の法改正に先駆け,岡山県岡山市では,「岡山市男女共同参画社会の形成の促進に関する条例」に基づき,平成16年12月から支援センターとしての業務を開始するとともに,婦人相談所における一時保護までの間,保護施設において被害者を保護する緊急一時保護事業を14年から実施している。

この緊急一時保護については,事業開始からこれまで,実施方法に様々な工夫が重ねられてきている。現在,相談専用電話(相談ホットライン)を通じた24時間対応をとっており,この電話を通じて被害者の要請を受けた支援センターでは,被害者に現在の状況を聞いて保護の要否を決定する。緊急一時保護の実施を決定した場合には,支援センターが地元タクシー関連各社に対し,保護施設までの被害者の移送を依頼する。被害者は,このタクシーを使って保護施設に行き,当該施設を利用し,翌日以降,支援センターの相談員が婦人相談所の一時保護につなげる仕組みとなっている。

岡山市と地元タクシー関連各社の間では,平成16年に岡山市が支援センター業務を開始したことを記念して,市が被害者の緊急一時保護を決定した場合において,市の依頼に基づき,地元タクシー関連各社が被害者の保護施設への移送に協力することとし,その費用は地元タクシー関連各社が負担するという「DV被害者緊急一時保護連携協定」を締結している。協定では,地元タクシー関連各社の従業員であって,この協定に係る業務に従事する者の守秘義務や事前研修等についても明確にされている。

また,移送に利用するタクシーの乗務員には,それが緊急一時保護による配車であることや,行き先が緊急一時保護施設であることを知らせない対応とするなど,安全のための配慮がなされている。

岡山市の支援センターに寄せられる相談件数は増加しているが,休日,夜間に寄せられる緊急一時保護の要請は当初と比べ減少している。これは,相談機関としての支援センターの存在が知られるようになるとともに,比較的早い段階から支援センターに相談する被害者が増えていることがその背景にあるのではないかと考えられる。