平成20年版男女共同参画白書

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第3章 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)

(仕事と生活の調和に関する希望と現実)

内閣府「男女共同参画に関する世論調査」(平成19年)によれば,仕事と生活の調和に関する希望と現実の乖離は大きい。「仕事と家庭生活をともに優先したい」といった複数の活動をバランスよく行いたいとする人の割合が最も高いが,現実には,「仕事」あるいは「家庭」など,単一の活動を優先している人の割合が最も高くなっている。この希望と現実の乖離は,仕事あるいは子育てをしている世代だけではなく,すべての世代にみられる。高齢者では,家庭生活を優先している人の割合が最も高いが,それ以外の活動にも関わることを希望している人の割合も高い(第20図)。


第20図 男女別にみた仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の希望と現実
第20図 男女別にみた仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の希望と現実

(女性にかかる家事,育児及び介護の負担)

総務省「社会生活基本調査」(平成18年)により,妻の就業状況別に夫婦の1日の生活時間をみると,共働き世帯での夫の家事・育児・介護等にかける総平均時間が30分なのに対し,妻は4時間15分であり,夫が有業で妻が無業の世帯では,夫は39分,妻は6時間21分である。妻の就業の有無にかかわらず夫が家事や育児,介護などにかける時間は妻と比べて著しく短い。男性は共働きか否かで生活実態はほぼ変わらないものの,女性は共働きの場合は仕事をしながら家事も育児も介護も担い,自由時間が少なくなっている。

(女性の継続就業をめぐる状況は依然として厳しい)

これまでに仕事を辞めた経験がある人の離職理由は「主として結婚」が最も多く,その場合の具体的な理由としては,「体力・時間的に厳しかったから」が最も多い(第21図)。

また,育児休業を取得している女性は増えているが,出産前後に継続就業している割合は増えておらず,出産を機に離職する女性は以前と変わらず多い(第22図)。

結婚や出産時に仕事を辞めることを自ら希望している人も少なくないが,辞める背景要因の一つとして残業などを含む働き方の問題があることがうかがえる。


第21図 仕事を辞めた理由及び結婚時に離職した理由
第21図 仕事を辞めた理由及び結婚時に離職した理由

第22図 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴
第22図 子どもの出生年別第1子出産前後の妻の就業経歴

(企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット)

男女共同参画会議「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」においては,企業インタビュー等を行い,「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」を平成20年4月に取りまとめた。

企業へのインタビュー結果をみると,育児休業制度や在宅勤務等の仕事と生活の両立支援や柔軟な働き方の促進などの取組により,従業員の定着(離職率の低下),優秀な人材の確保,多様性に富む従業員の確保・定着,従業員の満足度や仕事への意欲,従業員の心身の健康の保持増進,企業イメージや評価の向上等の多様なメリットが生じているとされている。

また,既存の統計や調査結果等を基に一定の仮定を置いて試算した定量的なコスト情報も併せて紹介している。例えば,従業員が出産を機に退職し新たに人員を補充するケースと,同じ従業員が育児休業を取得・短時間勤務を行い,就業を継続したケースとを比較した場合には,後者の方がコストがかからず,それに加え,企業はそれまで培われた従業員の知識や経験の損失を防ぐことができるといった結果となっている。