平成20年版男女共同参画白書

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第1節 地域における女性の活動・参画の現状

1 地域における活動への女性の参加についての意識と実態

(1)地域活動への参加についての意識

(つながりの希薄化に対する女性の認識)

地域における活動には,住民同士のつながりが大きく関係しているといえる。そこで,地域のつながりについてみると,少子高齢化や人口減少の進展,近隣との関係の希薄化,地域における世代間の交流の減少,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現の困難さといった現象がみられる中,以前と比較して地域のつながりは希薄化していることがうかがえる。また,つながりが希薄化していることに対する危機感や当事者意識は女性の方が多く感じていることが分かる(第1図)(第2図)。

第1図 地域とのつながり-10年前との比較-
第1図 地域とのつながり-10年前との比較-

第2図 地域のつながりが弱くなっていると思われる理由
第2図 地域のつながりが弱くなっていると思われる理由

(高まる地域活動への参加意欲)

地域のつながりが薄れる一方で,社会への貢献意欲や地域活動への参加意欲は高まっている。性別・年代別にみると,女性は,20歳代の若い世代で参加意欲が最も高く,子育て期と重なる30歳代,40歳代でいったん低下しているのが特徴的である(第3図)。

第3図 地域が元気になるための活動に参加したいと思うか(性別・年代別)
第3図 地域が元気になるための活動に参加したいと思うか(性別・年代別)

(女性の活動の目的は「自分自身の成長」と「他人への貢献」)

勤労者がボランティア活動を行う目的をみると,特に女性は,「自分自身の成長のため」と答える人の割合が男性を上回っており,「人のために役立つため」と並んでいる(第4図)。

第4図 活動者がボランティア活動を行う目的
第4図 活動者がボランティア活動を行う目的

(女性が貢献したい分野は「環境保護」,「社会福祉」等)

社会のために役立ちたいと思っている内容については,「自然・環境保護に関する活動」,「社会福祉に関する活動」について女性で割合が高くなっている(第5図)。それ以外で,男女差の大きな項目として,「家事や子どもの養育を通して」社会に貢献したいと考える人の割合は,女性が男性よりも高くなっている。

第5図 社会への貢献内容
第5図 社会への貢献内容

(女性が活動に際して抱える問題点は,「時間・情報」の不足)

ボランティア活動者が感じている問題点をみると,男女とも「時間がない」が最多であり,さらに,特に女性は,時間や情報等を十分に得られていない状況がうかがえる(第6図)。

第6図 活動者が感じているボランティア活動における問題点
第6図 活動者が感じているボランティア活動における問題点

(固定的役割分担意識)

女性が地域において能力を十分に発揮するためには,男性を含む地域社会全体の理解と協力が不可欠であるが,地域における女性の活躍を妨げる要因として,いまだに「世帯や組織の代表は男性」に代表される固定的な役割分担意識が存在することが考えられる。地域において女性が活躍するための基盤を築くためには,こうした固定的役割分担意識を克服することが不可欠である。


(2)地域における活動の実態

(全体的に低い地域活動への参加率)

一方,地域における活動への実際の参加状況についてみてみると,例えば,町内会自治会への参加は男女とも参加していない人が半数以上を占めるなど男女問わず決して高い水準とはいえない。


(「子育て・介護」,「まちづくり」,「環境保護」で活発な女性のボランティア活動)

実際にボランティア活動を行っている人の割合を性別・年代別にみると,女性は男性と比較して高齢者を除くほとんどの年代で高くなっている(第7図)。

性別・年代別にみると,特に,行動者率で大きく男性を上回っている30歳代後半から40歳代にかけての女性は,子どもを対象とした活動,安全な生活のための活動について行動者率が高くなっており,この世代の女性は子育てや生活の安全への関心が高いことが分かる(第8図)。その他,50歳代以上の年代についてみると,女性では高齢者を対象とした活動の行動者率が高く,男性はまちづくりのための活動の行動者率が高くなっていることが特徴的である。

第7図 ボランティア性別年代別行動者率
第7図 ボランティア性別年代別行動者率

第8図 性別年代別活動の種類別行動者率
第8図 性別年代別活動の種類別行動者率

(少ない特定非営利活動法人の女性代表者)

特定非営利活動法人の代表者に占める女性の割合をみると,全体では22.5%となっている。分野別にみると,「男女共同参画社会の形成の促進を図る活動」で女性が過半数を超えている以外は男性の方が多い。しかし,「保健,医療又は福祉の増進を図る活動」,「子どもの健全育成を図る活動」では女性代表者が比較的多くなっている(第9図)。

第9図 主たる活動分野別の特定非営利活動法人の代表者に占める女性の割合
第9図 主たる活動分野別の特定非営利活動法人の代表者に占める女性の割合

2 地域の様々な分野における女性の参画状況

(1)分野別の女性の活躍状況

(まちづくり・観光)

商店街等中心市街地の空洞化や地方経済の低迷等を背景に,女性を含む市民によるまちづくりや観光の重要性が増している。

まちづくりのための活動は,ボランティアの活動率も比較的高くなっており,魅力あるまちづくりについての女性の関心は高く,比較的その活動も活発であるといえる。

一方で,意思決定への参画は必ずしも多くなく,まちづくりの推進を図る活動に関する特定非営利活動法人の代表者に占める女性の割合は1割に満たない。


(子育て・教育・介護)

民生委員・児童委員については,平成7年以来,女性の割合が半数を超え,18年度末には,約22万7千人のうち58.6%を女性が占めている。

市区町村の教育委員に占める女性の割合は全国で27.1%(平成17年度)であり,市区町村の教育長の女性割合は2.5%(平成17年度)である。社会教育委員の女性割合は増加傾向にあり,既に3割に達している。一方,小・中学校のPTA会長については,全国で10.1%(平成19年)にとどまっており,また,都道府県ごとにばらつきがみられる(第10図)。

第10図 都道府県別単位PTA会長(小中学校)に占める女性の割合
第10図 都道府県別単位PTA会長(小中学校)に占める女性の割合

(農山漁村)

農業就業人口に占める女性の割合は,過半に達しており,農業のみならず地域活動においても重要な役割を果たしている。また,農業分野に関連した女性の起業も近年増加しており,平成17年度には9,000件を超えている(第11図)。

しかし,一方で,農業委員,認定農業者,農業協同組合・漁業協同組合・森林組合の役員に占める女性の割合は,低い水準にとどまっている。

第11図 農村女性による起業活動件数の推移
第11図 農村女性による起業活動件数の推移

(防災・防犯)

消防団員は,総数が減少しているのに対し,女性団員は増え続けており,全体に占める割合は1.7%(平成19年)と低水準ながらも,ここ10年で倍増している(第12図)。

一方で,都道府県防災会議の議員に占める女性の割合は全国で2.8%と低く,防災分野の意思決定過程への女性の参画は進んでいるとはいえない。

第12図 消防団員に占める女性割合の推移
第12図 消防団員に占める女性割合の推移

(環境)

環境カウンセラーについては,全国で,平成8年度8.9%,19年度13.6%と増加傾向にあり,水準的には高いとはいえないものの,環境分野への女性の関心の高まりを示唆している(第13図)。

第13図 環境カウンセラーに占める女性割合の推移
第13図 環境カウンセラーに占める女性割合の推移

(2)横断的分野において活躍する女性の現状

分野横断的に活躍する女性の状況をみると,特に,地域のリーダーなど政策・方針決定過程への女性の参画は総じて遅れているといえる。


(政治・行政におけるリーダー)

市区町村の首長や,市区町村議会議員に占める女性の割合は低く,平成19年末現在,それぞれ全国で0.9%,10.5%となっている。


(地縁型の地域活動)

さらに,住民により身近な地縁活動の主体として自治会をみても,その代表に占める女性の割合は,わずか3.8%となっている。都道府県別にみると,1割を超える県もある一方で1%に満たない県も複数あり,地域によって格差がある。