平成19年版男女共同参画白書

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第10章 メディアにおける男女共同参画の推進

第1節 女性の人権を尊重した表現の推進のためのメディアの取組の支援等

1 メディアにおける男女共同参画の推進,人権尊重のための取組等

(1)性・暴力表現を扱ったメディアの,青少年やこれに接することを望まない者からの隔離

内閣府では,青少年の健全な育成の観点から,青少年が各種メディア等を通じて性描写や暴力・残虐表現を含む情報に接することに関する問題に対応するため策定した「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針」(平成16年4月青少年育成推進課長会議申合せ)に基づいて,国,地方公共団体,関係業界団体等及び国民が一体となった取組を推進している。また,有害環境の実態について調査・分析,情報の提供等を行うことにより,地域における有害環境の浄化活動に関する取組の推進及び関係業界等の自主的な取組の促進を図っている。

警察では,青少年保護育成条例により青少年への販売等が規制されている有害図書類について,関係機関・団体,地域住民等と協力して関係業界に対して自主的措置を講ずるよう働き掛けるとともに,個別の業者に対する指導の徹底や悪質な業者に対する取締りの強化を図っている。

また,インターネット上の過激な暴力シーンや性的な描写を含むサイト等の少年に有害なコンテンツと少年を切り離すため,警察では,家庭におけるフィルタリングシステムの普及のための広報啓発を行っている。

警察庁では,平成18年4月,有識者等から成る「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」を開催し,同研究会において,いわゆるバーチャル社会が子どもにもたらす弊害やその対策の現状及び問題点,今後の取組の強化に向けての方向性等が検討され,同年12月,最終報告書が取りまとめられた。警察庁では,事業者,教育関係者等広い範囲にそれぞれの立場での取組を要請するなど,本報告書に沿った取組を進めている。

(2)児童を対象とする性・暴力表現の根絶

警察では,平成15年6月に制定されたインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号)を効果的に運用し,インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪からの児童の保護を図っている。

また,平成16年6月に法定刑の引上げ等の改正がなされた児童買春・児童ポルノ法に基づき,児童ポルノ事犯の取締りを積極的に推進するとともに,心身に有害な影響を受けた児童の保護に努めている。

特にインターネット上の児童ポルノ事案の深刻さにかんがみ,児童ポルノ画像自動検索システム(CPASS(Child-Pornography Automatic Searching System):児童ポルノ画像等を警察庁が管理するデータベースに登録し,同一の画像等が更にインターネット上にあるかを検索し,ヒットした場合には登録した都道府県警察に自動的に通知するシステム)を運用しているほか,各国の保有する情報を共有化し,効率的かつ迅速な捜査,国際協力を推進するため,児童ポルノに関する国際的なデータベースの構築に向けて取り組んでいる。

2 インターネット等新たなメディアにおけるルールの確立に向けた検討

(1)現行法令の適用による取締りの強化

警察では,ネット上に流通するわいせつな情報や性を商品化した違法・有害情報を,サイバーパトロール等を通じて早期に把握し,違法情報について検挙等の措置を講ずるとともに,有害情報については,関係団体に通報するなどして自主的措置の促進を図っている。

(2)インターネット等新たなメディアにおける情報の規制等及び利用環境整備の在り方等に関する検討

IT安心会議(インターネット上における違法・有害情報等に関する関係省庁連絡会議)では,フィルタリングソフトの普及,プロバイダ等による自主規制の支援等を柱とする「インターネット上における違法・有害情報対策について」(平成17年6月策定)に基づき政府一体となった取組を推進しており,その進捗状況について,平成18年7月に取りまとめた。

総務省では,性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から未成年者を保護するため,関係事業者による「フィルタリングの普及啓発アクションプラン」の実施を支援するとともに,平成18年11月には,総務大臣から携帯電話事業者等に対し,一層のフィルタリングの普及促進に取り組むよう要請を行うなど,フィルタリングの普及活動を推進している。

経済産業省では,インターネット上の違法・有害なコンテンツ(性・暴力)に対応したレイティング基準(Safety Online3)の策定を行った。また,関係事業者による「フィルタリングの普及啓発アクションプラン」の実施と合わせ,セミナーの開催等を通じ普及啓発を進めている。

総務省では,プロバイダ等に対して自主的なルールの形成及びその遵守を促し,情報提供発信を行う者のモラルを確立するため,広報啓発活動を推進している。また,平成17年8月から,学識経験者,プロバイダ等から成る「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」を開催し,インターネット上の違法・有害情報に対するプロバイダ等による自主的措置及びこれを効果的に支援する方策等について検討し,18年8月に最終報告書を公表した。これを受け,同年11月に業界団体において違法な情報への対応に関する新たなガイドライン及び契約約款に基づく自主的な対応を促すための契約約款モデル条項が策定された。

警察では,産業界等との連携の在り方について検討を行う総合セキュリティ対策会議を開催しているほか,都道府県単位での「プロバイダ等連絡協議会」の設置を推進し,有識者,関係機関・団体,産業界等を通じ,官民が一体となってわいせつ情報等の違法・有害情報の排除を図っている。

また,平成18年6月に警察庁からの業務委託を受け運用を開始したインターネット・ホットラインセンターでは,インターネット利用者から,インターネット上のわいせつ情報等の違法・有害情報に関する通報を受け付け,警察への通報や,プロバイダ等への削除依頼等を行っている。

3 メディア・リテラシーの向上

総務省では,放送分野におけるメディア・リテラシー(メディアからの情報を主体的に読み解き,自ら発信する能力)の育成に資する教材を広く公開することにより,メディア・リテラシーの向上を支援している。また,新たにインターネット,携帯電話等の情報通信分野におけるメディア・リテラシーの育成に資する教材の開発を行った。

文部科学省では,学校教育,社会教育を通じて,情報を主体的に収集・判断し,インターネットを始めとする様々なメディアが社会や生活に及ぼす影響を理解することで,情報化の進展に主体的に対応できる能力の育成を図っている。