平成19年版男女共同参画白書

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第2節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

1 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

急速な少子化の流れを変え,子どもの育ちや子育て家庭を社会全体でしっかりと応援するため,平成18年度においては,「子ども・子育て応援プラン」に基づき,若者の自立や働き方の見直し,地域における子育て支援など総合的な取組を進めている。

また,平成17年4月に次世代育成支援対策推進法が本格施行したことに伴い,地方公共団体においては,地域における子育て支援や母性,乳幼児の健康の確保・増進等を内容とする地域行動計画の策定が義務づけられ,18年10月1日現在で,すべての都道府県及び市区町村が策定済みであり,これに基づく取組が進められている。

さらに,平成18年3月に「少子化対策に関する政府・与党協議会」が設置され,人口減少社会の到来を踏まえ,対策の拡充・強化に向けた議論が進められ,18年6月に「新しい少子化対策について」がとりまとめられた。

(1)保育サービス等の充実

厚生労働省では,「子ども・子育て応援プラン」に基づき,延長保育や休日保育などの多様な保育サービスの充実を図るとともに,待機児童数が50人以上いる市町村を中心に,平成19年度までの3年間で集中的に受入れ児童数の増大を図ることとしている。

また,国庫補助対象の放課後児童クラブを900か所増の1万4,100か所とした。このほか,年長児童等が赤ちゃんと出会い,ふれ合う場づくり,中・高校生の交流の場づくり,絵本の読み聞かせ,親と子の食事セミナーを開催するなどの「児童ふれあい交流促進事業」を実施した。

(2)幼稚園における子育て支援の充実

文部科学省では,幼稚園の通常の教育時間(4時間)の前後や長期休業期間中などに行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行うなど,幼稚園における子育て支援を推進している。

また,幼児期からの「人間力」の向上を図るため,平成17年度から,教育委員会等に保育カウンセラー等の専門家からなる幼児教育サポートチームを設置し,幼稚園,保護者・家庭等を支援する「幼児教育支援センター事業」を実施している。さらに,18年度には,幼稚園の機能を活用し,親に子育ての喜びを実感する機会を提供し,親の子育て力の向上を図る「幼稚園における親の子育て力向上推進事業」を実施している。

(3)認定こども園制度の開始

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月閣議決定)等を踏まえ実施することとされた「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」(認定こども園)については,平成18年6月に,就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)が成立し,同年10月から施行された。この法律では,幼稚園,保育所等のうち,就学前の子どもに教育・保育を提供する機能(保育に欠ける子どもも欠けない子どもも受け入れて教育・保育を一体的に行う機能),地域における子育て支援を行う機能(すべての子育て家庭を対象に,子育て不安に対応した相談や親子のつどいの場の提供などを行う機能)を備える施設について,都道府県が「認定こども園」として認定する仕組みを設けるとともに,各般の特例措置を講ずることとしている。

(4)幼稚園就園奨励事業の促進

保護者の所得状況に応じて経済的負担を軽減するとともに,公・私立幼稚園間における保護者負担の格差の是正を図ることを目的として,保育料等を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,文部科学省では,幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部を補助している。

当該補助金は,これまで兄弟姉妹の同時就園を条件に,第1子の園児の保護者負担に対して,第2子以降の園児の保護者負担を軽減する優遇措置を講じてきたところであるが,平成18年度から,同時就園の条件を満たしていない場合であっても,小学校1年生に兄・姉を有する園児について優遇措置の対象とする条件緩和を講じたところである。

(5)地域の子育て・介護支援体制整備

厚生労働省では,乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として,保育施設までの送迎や放課後の預かり等の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進している。

厚生労働省では,子どもの突発的な病気の際の預かりや,急な残業,出張の際の宿泊を伴う預かり等,子育て中の労働者の育児等に係る緊急のニーズに対応するため,看護師,保育士等の有資格者や緊急対応可能な者をスタッフとして登録,あっせんする緊急サポートネットワーク事業を展開している。

経済産業省では,商店街の空き店舗等を活用して,保育所等の育児支援施設を設置・運営する際の改装費や賃借料など立ち上げに係る費用の一部を補助し,待機児童問題の解消や女性の社会進出といった少子化社会等への対応を図っている。

また,保護者等のニーズを踏まえ,NPO・民間企業等の連携による新たな育児支援関連サービスの提供の支援を実施した。

(6)家庭教育支援

文部科学省では,子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親の相談に気軽に応じ,アドバイスを行う子育てサポーター同士の相互連携の促進や,情報交換の機会の提供などの役割を担う「子育てサポーターリーダー」を養成し,相談支援体制の一層の充実を図っている。平成17年度からは,新たに,携帯電話やパソコンを活用した子育て相談や情報提供を行う手法の開発・普及を行っている。

また,子育てのヒント集として,家庭における子育てやしつけの在り方や様々な相談窓口を紹介した「家庭教育手帳」を作成し,乳幼児等を持つ親に配布しているほか,平成18年度から,早寝早起きや朝食をとるなど,子どもの望ましい基本的生活習慣を育成し,生活リズムを向上させるため,さまざまな民間団体と連携して「早寝早起き朝ごはん国民運動」を推進している。

さらに,独立行政法人国立女性教育会館では,家庭教育の重要性にかんがみ,現代の家庭教育・子育て支援の現状と課題の把握,さらに子育ての新たな支えあいと連帯を推進するため,「家庭教育・次世代育成地域協働フォーラム」などを開催するとともに,日本および諸外国の家庭・家族の変化,家庭教育の実態や親の意識等に関する国際比較調査結果を公表した。

(7)児童虐待への取組の推進

児童虐待の防止については,関係府省庁,関係団体(40団体)等による児童虐待防止対策協議会において,国レベルのネットワークの構築を図っている。

また,関係府省庁や地方自治体,関係団体等が連携・協力して,児童虐待の発生予防から早期発見・早期対応,子どもの保護や自立に向けた支援,アフターケアに至るまでの切れ目のない総合的な取組を推進している。

厚生労働省では,(1)発生予防の観点から,子育て中の親子に対する交流・つどいの場の提供や地域子育て支援センター事業の推進及び養育が困難になっている家庭を訪問し,育児・家事の援助等を行う育児支援家庭訪問事業の推進,(2)早期発見・早期対応の観点から,児童相談所が夜間休日を問わず,いつでも相談に応じられる体制の整備(24時間・365日体制),子どもの生命の安全と心身のケアに万全を期し,迅速かつ的確な対応を図るため,児童福祉司の配置基準の見直しなど児童相談所の体制強化,(3)虐待を受けた子ども等を保護・支援する観点から,児童養護施設等における小規模化の推進,総合的な家庭環境調整を行う家庭支援専門相談員の配置などを行った。

また,地域の住民に最も身近な市町村における要保護児童地域対策協議会(子どもを守る地域ネットワーク)の設置を促進している。

法制度についても,(1)児童虐待に係る通告義務の範囲の拡大等を内容とする児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)の改正(平成16年10月施行),(2)児童相談に関する体制の充実等を内容とする児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正(平成17年4月施行)など,その充実が図られているところである。

警察では,児童虐待防止法の趣旨を踏まえ,児童虐待事案の早期発見と迅速かつ確実な通告,児童相談所長等による児童の安全確認等に万全を期するための適切な援助,適切な事件化と児童の支援等に努めるなど,関係機関と緊密な連携をとりつつ,児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応を図ることとしている。

法務省の人権擁護機関においては,子どもの人権問題に関する専用の電話相談窓口である「子どもの人権110番」を設置し,全国一斉「子どもの人権110番」強化週間を実施するほか,相談用の便せん付き返信用封筒「子どもの人権SOSミニレター」を小中学生に配布するなどして相談体制の充実を図っている。また,人権擁護委員の中から選任された,子どもの人権に関わる問題を専門に扱う「子どもの人権専門委員」を全国に設置し,「児童虐待防止推進月間(11月)」の取組の一環として,子どもの人権専門委員全国会議を開催し,児童虐待防止に向けた活動の強化を図っている。さらに,全国各地で講演会・研修会等の実施などの啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,児童虐待への適切な対応等について,学校教育及び社会教育関係者に対し引き続き周知を図り,学校教育・社会教育関係者と児童相談所等の関係機関との緊密な連携を図っている。また,各学校・教育委員会における児童虐待防止に向けた取組の充実を図るため,国内・海外の先進的取組等の収集・分析などを行う「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究」を平成17年度より実施し,18年5月に報告書をとりまとめた。18年度においても,本調査研究を引き続き実施し,児童虐待防止に向けた学校等における取組を促進するよう,教員等向けの研修モデルプログラムの開発を進めている。

(8)子育てを支援する良質な住宅,居住環境及び道路交通環境の整備

国土交通省では,子育てを支援する良質な住宅,居住環境の整備として,公共賃貸住宅の整備等において保育所等の子育て支援に資する施設等の一体的整備を推進している。加えて大規模な公共賃貸住宅団地の建替えに際し,保育所等の施設との併設を原則化し,生活拠点の形成を図っている。また,平成18年度からは,高齢者の所有する戸建て住宅等を,広い住宅を必要とする子育て世帯等へ賃貸することを円滑化する制度により,子育て世帯等の生活に適した広い賃貸住宅の供給を図っている。さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自動車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備等,交通安全施設等の整備を推進している。

警察では,子ども連れでも自宅周辺や通学路を安心して歩くことができるよう,「あんしん歩行エリア」として国土交通省とともに指定している死傷事故発生割合が高い住居系地区や商業系地区において,信号機,光ビーコン等の交通安全施設等を重点的に整備し,生活道路における通過交通の進入抑制や速度抑制,外周となっている幹線道路における交通流円滑化等の道路交通環境の整備に努めている。

また,交通安全の観点からの子育て支援策として,幼稚園・保育所,病院等と連携したチャイルドシートの取付け講習会を実施し,正しい着用の徹底を図るほか,地方公共団体,民間団体等が実施している各種支援制度の活用を通じて,チャイルドシートの普及促進に積極的に取り組んでいる。

(9)子育てバリアフリー等の推進

国土交通省では,高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成12年法律第68号)や高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)(平成18年12月20日以降は,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号))等に基づき,多くの方が利用する建築物,公共交通機関及び道路や都市公園等の公共施設について,妊産婦や子連れの方にも利用しやすいように段差の改善等のバリアフリー化を推進してきた。また,平成18年12月には一体的・総合的なバリアフリー施策を推進するため,これら法律を統合・拡充した高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)を施行し,一定地域内におけるこれらの施設等及びこれらの間の経路の一体的・総合的なバリアフリー化を推進している。

また,ハード整備と併せて,高齢者等の介助体験・疑似体験等を内容とする「交通バリアフリー教室」の開催等により「心のバリアフリー社会」の実現を図るとともに,「らくらくおでかけネット」や「都道府県別バリアフリー情報」を構築し,施設のバリアフリー化の状況に関する情報提供を行うなどソフト面の施策についても積極的に推進している。

さらに,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS:スペシャル・トランスポート・サービス)の普及を推進している。

2 ひとり親家庭等に対する支援の推進

厚生労働省では,母子家庭の母等について,平成15年4月に施行された改正母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)に基づき,子育て短期支援事業,日常生活支援事業等の子育て・生活支援策,母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭自立支援給付金等の就業支援策,養育費の確保策,児童扶養手当の支給,母子寡婦福祉貸付金の拡充等の経済的支援策といった自立支援策を総合的に展開している。

また,平成15年7月に成立し,同年8月に施行された母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法(平成15年法律第126号)に基づき,より一層の就業支援策を講じている。

さらに,平成18年度より母子自立支援プログラム事業を全国展開し,より一層の就業支援策を講じている。