平成19年版男女共同参画白書

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第3節 女性がより活躍できる環境に向けた取組

1 ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)のための取組

第15表 各国の子育て支援制度等別ウインドウで開きます


第15表 各国の子育て支援制度等 第15表 各国の子育て支援制度等

(各国の子育て支援制度)

育児休業制度が充実している国としては,スウェーデンがあり,両親合わせて480日間という期間の長さに加えて,給付水準も賃金の80%と高く,利用率も高くなっている。ノルウェーは,やや期間が短いが,スウェーデン同様給付水準は高い。また,フランスでは,養育休暇が両親合わせて最長3年間取得でき,就業の要件に応じて給付がある。ドイツでは,子が8歳になるまでの間,両親合わせて最長3年間(給付は2年間,所得制限あり)の休業がとれる。日本では,子が1歳に達するまで(一定の場合には,子が1歳6か月に達するまで)の間,育児休業を取得する制度があり,また,一定の要件を満たす育児休業取得者に対しては,雇用の継続を目的として,休業前賃金の40%相当額(平成19年10月より暫定的に同50%相当額に引き上げ予定)が給付される。なお,米国,オーストラリアは休業給付制度がなく,フィリピン等アジア諸国には育児休業制度自体がない国も多い。

(各国の労働時間制度)

実労働時間が従来から短い国としては,ノルウェー,スウェーデン等北欧諸国と,オーストラリアなどがあるが,その他のヨーロッパ諸国では,EU労働時間指令(1993年制定,2005年改正案採択)を受けて,労働時間の短縮化の動きが見られる。

(パートタイム労働制度)

 スウェーデン,ドイツ,英国等ヨーロッパ諸国では,1997年のEUパートタイム労働指令の影響を受け,パートタイム労働法が整備されている国も多く,パートタイム労働者の均等待遇,不利益処遇の禁止のほか,フルタイム労働とパートタイム労働の相互転換がスムーズに行えるようになってきている。

(取組の成果)

こうした取組によりワーク・ライフ・バランスが確立されることによりもたらされる効果は,女性だけにとどまらず男性にも,また,労働者だけにとどまらず経営者にも広く及ぶ。

日本においても,働く場におけるワーク・ライフ・バランスの効果が認識され始めている。職場環境と仕事の満足度の関係に関する調査によれば,職場が「子育てする人が働きやすい」「女性登用が進んでいる」環境である方が,既婚女性のみならず,既婚男性や独身男女も仕事の満足度や意欲が高い。

2 女性の登用促進のための取組

女性の登用促進のための取組として,ポジティブ・アクション(積極的改善措置)がある。ポジティブ・アクションとは,一般的には,社会的・構造的な差別によって,現在不利益を被っている者に対して,一定の範囲で特別の機会を提供すること等により,実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置のことをいうとされている。日本では,男女共同参画社会基本法により積極的改善措置を定義し,国及び地方公共団体の責務と位置づけている。また,男女雇用機会均等法においても,別途,「女性労働者に係る措置に関する特例」としてポジティブ・アクションを規定している。

(女性議員増加のための取組)

諸外国で行われている女性議員の選出を増やすための取組のうち,主なものとして,性別等を基準に一定の人数や比率を割り当てるクォータ制(割当制)がある。

クォータ制を導入する場合,最も効果がある形態や方法等については,各国の女性の議会への参画状況や社会的背景を反映して様々である(第16表)。

第16表 女性議員増加のための取組別ウインドウで開きます
第16表 女性議員増加のための取組


(その他の特徴的な取組)

その他の特徴的な取組としては,ドイツ,英国の政党において行われている現職の議員が候補者に対して教育的指導や経済的援助などを行うメンター制や,米国,英国でみられる民間団体による女性議員候補者への資金の援助や選挙キャンペーンの協力等がある。

(各国での女性公務員の採用・登用拡大の取組)

女性国家公務員の採用・登用拡大に関する取組としては,一定の目標値などを定め,女性の採用・登用を促す方法と女性に対する研修や教育を充実させる方法が挙げられる。

(管理的職業従事者の増加のための取組)

公的部門以外での管理的職業従事者の増加のための取組は,企業の自主的な努力を支援する形のものが多い。

日本においては,「2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」の目標における「指導的地位」の中には,企業等の管理職等も含まれており,政府として企業等の自主的な取組を奨励している。企業においても,女性の登用を積極的に進める取組が徐々に広がりつつある。また,女性の登用の促進は,女性自身だけでなく,質の高い労働力の確保や生産性の向上を通して,企業にも好影響をもたらすといえる。

3 おわりに

女性の参画が企業の経営に好影響を与えている可能性や,仕事と生活との調和のとれた環境が仕事に対する満足感をもたらすことを指摘する調査結果も報告されており,男女が仕事にも家庭生活等にもバランスよく参画できるような環境を整備することにより,男女ともに自らが希望する生き方を選択し,活躍できる社会を構築することが必要である。