平成18年版男女共同参画白書

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第10章 メディアにおける女性の人権の尊重

第1節 女性の人権を尊重した表現の推進のためのメディアの取組の支援等

1 メディアにおける人権尊重,性・暴力表現を望まない者からの隔離等に関する方策の推進

(1)性・暴力表現を扱ったメディアの,青少年やこれに接することを望まない者からの隔離

内閣府では,青少年の健全な育成の観点から,青少年が各種メディア等を通じて性描写や暴力・残虐表現を含む情報に接することに関する問題に対応するため策定した「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針」(平成13年10月青少年育成推進課長会議申合せ)に基づいて,国,地方公共団体,関係業界団体等及び国民が一体となった取組を推進している。また,有害環境の実態について調査・分析,情報の提供等を行うことにより有害環境の浄化を推進するとともに,関係業界等の自主的な取組の促進を図っている。

警察では,青少年保護育成条例により青少年への販売等が規制されている有害図書類について,関係機関・団体,地域住民等と協力して関係業界に対して自主的措置を講ずるよう働き掛けるとともに,個別の業者に対する指導の徹底や悪質な業者に対する取締りの強化を図っている。

また,インターネット上の過激な暴力シーンや性的な描写を含むサイト等の少年に有害なコンテンツと少年を切り離すため,警察では,家庭におけるフィルタリングシステムの普及のための広報啓発を行っている。

(2)児童を対象とする性・暴力表現の根絶

警察では,平成16年6月に法定刑の引き上げ等の改正がなされた児童買春・児童ポルノ法に基づき,児童ポルノ事犯の取締りを積極的に推進するとともに,心身に有害な影響を受けた児童の保護に努めている。

特にインターネット上の児童ポルノ事案の深刻さにかんがみ,児童ポルノ画像自動検索システム(CPASS(Child-Pornography Automatic Searching System):児童ポルノ画像等を警察庁が管理するデータベースに登録し,同一の画像等が更にインターネット上にあるかを検索し,ヒットした場合には登録した都道府県警察に自動的に通知するシステム)を運用しているほか,各国の保有する情報を共有化し,効率的かつ迅速な捜査,国際協力を推進するため,児童ポルノに関する国際的なデータベースの構築に向けて取り組んでいる。

(3)地域の環境浄化のための啓発活動の推進

内閣府では,青少年の健全な育成の観点から,地域の団体・住民等による環境浄化活動を推進している。

2 インターネット等新たなメディアにおけるルールの確立に向けた検討

(1)現行法令の適用による取締りの強化

警察では,ネット上に流通するわいせつな情報や性を商品化した違法・有害情報を,サイバーパトロール等を通じて早期に把握し,違法情報について検挙等の措置を講ずるとともに,有害情報については,関係団体に通報するなどして自主的措置の促進を図っている。

(2)インターネットにおける不適切な情報を受信者側で排除できるシステムの開発,普及

総務省では,性や暴力に関する情報から児童を保護し,その健全な育成を図るため,現在パソコン向けに実現している有害コンテンツのフィルタリング機能をモバイル(携帯電話等)向けにも実現するための研究開発を推進した。

また,インターネット上における違法・有害情報の増大に対処し,利用者によるサイトの安全性の判断に資する観点から,サイト開設者が自らのサイトの安全性を示すマークの活用に向けての取組を推進している。

経済産業省では,受信者側でインターネットにおける有害情報を選択的に排除できるフィルタリングシステムについて,ソフトの無償配布等による普及啓発や,社会情勢に応じた排除基準の見直しを実施している。

(3)プロバイダ及び情報発信者に対する広報・啓発活動の推進

総務省では,プロバイダ等に対して自主的なルールの形成及びその遵守を促し,情報提供発信を行う者のモラルを確立するため,広報啓発活動を推進している。

また,平成17年8月から,学識経験者,プロバイダ等から成る「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」を開催し,インターネット上の違法・有害情報に対するプロバイダ等による自主的措置及びこれを効果的に支援する方策等について検討しており,18年1月に中間取りまとめを公表した。

警察庁では,産業界等との連携の在り方について検討を行う総合セキュリティ対策会議を開催しているほか,都道府県単位での「プロバイダ等連絡協議会」の設置を推進し,有識者,関係機関・団体,産業界等を通じ,官民が一体となってわいせつ情報等の違法・有害情報の排除を図っている。

(4)自主ガイドラインの策定の支援等

総務省では,プロバイダ等の団体である(社)テレコムサービス協会が策定した自主規制のためのガイドライン(平成10年2月策定,15年5月改訂)及びこのガイドラインの趣旨を具体化するためのモデル契約約款(平成11年1月)の周知,普及及び改訂等の取組等を支援している。

経済産業省では,(財)インターネット協会が作成した「インターネットを利用する方のルール&マナー集」の普及啓発活動を支援している。

(5)インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の効果的な運用

警察庁では,平成15年6月に制定されたインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号)を効果的に運用し,インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪からの児童の保護を図っている。

3 メディア・リテラシーの向上

総務省では,放送分野におけるメディア・リテラシー(メディアからの情報を主体的に読み解き,自己発信する能力)の育成に資する教材を広く公開することにより,メディア・リテラシーの向上を支援している。

文部科学省では,学校教育,社会教育を通じて,情報そのものを主体的に収集・判断等できる能力やインターネットを始め様々なメディアが社会や生活に及ぼす影響を理解し,情報化の進展に主体的に対応できる能力の育成を図っている。