平成18年版男女共同参画白書

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第6章 生涯を通じた女性の健康

(低下傾向にある母子保健関係指標)

女性は,妊娠や出産をする可能性があることもあり,ライフサイクルを通じて男性とは異なる健康上の問題に直面する。

母子保健関係の主要な指標の昭和50年から平成16年までの動向をみると,いずれの指標も総じて低下している(第1-6-1図)。

第1-6-1図 母子保健関係指標の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-1図 母子保健関係指標の推移

(総数では減少傾向にあるものの若年層の比重が増す人工妊娠中絶件数)

人工妊娠中絶件数・人工妊娠中絶実施率(15歳以上50歳未満女子人口千対)の昭和50年から平成16年までの動向をみると,総数では件数,実施率ともに総じて減少傾向にある。しかしながら,20歳未満の件数は昭和55年の約1.8倍となっており,若年層の全体に占める比重が以前より増加している。20歳未満を1歳別でみると,19歳は12.9千件で,実施率は約55人に1人の割合に当たる18.4に上っている(第1-6-2図)。

第1-6-2図 年齢階級別にみた人工妊娠中絶の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-2図 年齢階級別にみた人工妊娠中絶の推移

(若年での感染が多いHIV感染者)

HIV感染者とは,HIV(ヒト免疫不全ウィルス)に感染している者を指す。一方,AIDS患者とは,HIV感染によって免疫不全が生じ,カリニ肺炎等の日和見感染症や悪性腫瘍が発生した者を指す。

凝固因子製剤による感染例を除いて,平成16年末までに我が国において報告されたHIV感染者及びAIDS患者の累計数は,HIV感染者数6,560人,AIDS患者数3,277人となっている。

平成16年に新規で感染が報告されたHIV感染者は780人,AIDS患者は385人で,HIV,AIDSともに過去最高の報告数となった(第1-6-3図)。HIV感染者の推定感染地域をみると,全体の82.4%が国内感染となっている。

第1-6-3図 HIV感染者の性別,年代別年次推移 別ウインドウで開きます
第1-6-3図 HIV感染者の性別,年代別年次推移

HIV感染者累計数について,感染が報告された時点の年齢をみると,20歳代が全体の38.9%を占めており,若年での感染が多いことがわかる。一方,40歳以上で感染した人も全体の26.2%に上り,ここ数年,新規感染者の3割前後が40歳以上の感染者となっている。

(女性の疾病)

女性に特有もしくは非常に多い疾病として子宮がん,乳がんなどがあり,これらの疾病の総患者数を厚生労働省「患者調査」(平成14年)でみると,子宮がんは5.4万人,乳がんは15.8万人となっている。

地域保健・老人保健事業報告(平成16年度)によると,保健所が実施する40歳以上を対象とした検診の受診率は,子宮がん13.6%,乳がん11.3%で,肺がんや大腸がんの受診率より低くなっている。疾病は早期発見が重要であることから,より一層,健康診断等の受診の必要性について広く周知していく必要がある。

(健康増進に必要な適切な自己管理)

健康増進や生活習慣病予防のためには,自ら健康管理を行うことが重要である。厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」(平成15年)をみると,肥満者の割合は,男性はいずれの年齢層でも20年前に比べ増加しており,30~60歳代では3割以上となっている。女性も60歳まで年齢とともに肥満の割合が高くなっており,60歳代では3割以上となっている。一方,低体重(やせ)の割合は,20歳代女性で2割を超えているものの,現実の体型が「普通」もしくは「低体重(やせ)」であるにもかかわらず体重を減らそうとしている者の割合も若年層を中心に多い。

健康に生活するための自己管理について,より一層適切な情報提供が求められる。

(20歳代女性で高い喫煙率)

昭和50年からの喫煙率の推移をみると,全年齢では男性が約30ポイント低下し,女性はほぼ横ばいで推移している。

これを年代別でみると,20歳代男性の喫煙率が昭和50年の81.5%から平成17年の51.6%に低下している一方で,20歳代女性は昭和50年の12.7%が平成14年には24.3%まで増加し,その後徐々に低下して17年では20.9%となっているものの,男性に比べ増加傾向が目立つ結果となっている(第1-6-4図)。

第1-6-4図 性別喫煙率の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-4図 性別喫煙率の推移

喫煙は,肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇などにより喫煙者自身の健康に悪影響を及ぼすだけでなく,受動喫煙によって非喫煙者にも影響を及ぼすことが指摘されている。平成15年5月には健康増進法が施行され,病院や劇場,百貨店,事務所,官公庁施設,飲食店その他多数の者が利用する施設には,受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずる努力義務が課された。これにより,公共の場での受動喫煙の機会が減少することが期待されるが,家庭などでの受動喫煙によって,非喫煙妊婦の低出生体重児出産の発生率が上昇するという研究報告もあり,更に喫煙の健康への悪影響について広く周知していく必要がある。

(上昇を続ける女性医師の割合)

女性の高学歴化に伴い,医師等の専門職に進出する女性も増加している。

医療施設で働いている医師のうち,女性の割合は平成16年で16.4%となり,過去最高となった(第1-6-5図)。

第1-6-5図 女性の医療施設従事医師の割合の推移 別ウインドウで開きます
第1-6-5図 女性の医療施設従事医師の割合の推移

女性医師の増加や女性専門外来の充実等により,女性が気兼ねなく医療が受けられる環境が整えられつつある。

一方で,医師等が仕事と出産・育児等を両立しやすい環境作りも求められる。