平成18年版男女共同参画白書

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NPOによる支援の事例

結婚・出産を機に職場を離れ,子育てが一段落したら働きたいと考えている女性にとって,実際に再就職活動を始める際に大きなハードルとなるのがITスキルである。妊娠,出産,子育てで職場から遠ざかっているうちに,世の中の情報化は進み,以前の職場で使っていたITスキルは役に立たなくなってしまっていることが多い。しかし,講習を受けて失ったスキルを取り戻したいと思っても,子どもを預けられる環境がなければ,子育て中の女性が安心して学習することは難しい。

子育て中の女性がこうした状況にあることを受け,NPO法人新座子育てネットワークでは,平成15年8月,3日間にわたり,「子育てママのためのIT講習」を行った。これは,新座子育てネットワークと新座市教育委員会が共催で企画し,東京都に本社を置くコンピュータ企業(従業員数23,528人)の協力で行われたものである。

このIT講習の特徴は,講習場所の隣室に保育室を設け,子どもを預けることを可能にすることによって,子育て中の女性に安心して参加しやすい学習環境を提供したことである。企業からは,講師の派遣,カリキュラムの検討,諸費用の大部分の負担という協力を,新座市教育委員会からは,講習場所,パソコンの提供を受けて行われた。

受講者からは「保育があるから参加できた」という感想が多く寄せられ,また,職場で使用する機会が最も多いと考えられるエクセルを対象とするなど,講習の内容についても好評であった。

新座市での第1回の講習が成功したことから,以降,同講習はこれまでに全国16か所で開催されている。全国の子育てネットワークやNPOからの開催要望を受け,資金の援助,講師の派遣,テキストの提供等を企業が行い,各地の教育委員会や公民館などからは会場の提供などの協力を得て,新座子育てネットワークはコーディネーター役として,企業との連絡,事業開催のノウハウの伝授や全体の事業管理を行うことにより運営されている。

受講した女性達の中には,その後,NPO法人のスタッフや看護師として勤務を始めたり,自宅で住宅検査の仕事を始めた人などがいる。いずれも基本的なITスキルが必要となる仕事であり,講習を受けたことが就職後役立っているということである。また,受講後まだ再就職をしていない人についても,講習を受けたことによってITに関する苦手意識がなくなり,今後の資格取得や就職活動に意欲的になるなど,自信を持てるようになったことが大きな収穫のようである。

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