平成18年版男女共同参画白書

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企業による支援の事例

東京都に本社を置くコンピュータ企業(従業員数1,775人)では,地域のNPO,市民活動団体などとの協力により,「女性のためのUP(Unlimited Potential)プログラム」を実施している。

これは,ドメスティックバイオレンスの被害女性や,経済的な困難を抱えるシングルマザー,経済的理由から再就職を希望する主婦など,ITにアクセスする機会が少ない女性達を対象に,ITスキル習得のための研修を実施するものである。そして,このプログラムの受講により,ドメスティックバイオレンス被害女性達の自信回復や,経済的に困難な課題を抱える女性達の就労実現による社会的自立,再就職を希望する女性の労働市場への参画の促進等を目指している。

これまでのところ,NPO法人WING21,財団法人横浜市男女共同参画推進協会,東京ボランティア・市民活動センターの3団体と連携してプログラムを実施している。

NPO法人WING21におけるプログラムは,ドメスティックバイオレンス被害者や,シングルマザー,経済的理由から再就職を希望する主婦など,経済的に困難な課題を抱える女性を対象に,ITスキル習得を通じた就労支援を目的として,平成16年7月から2年間の予定で実施されている。平成18年3月現在の実績では,受講者175名のうち,48名が就労を実現している。WING21は女性の就労やキャリア開発を支援する活動を行っているNPO法人であり,専門的に就労支援できるメンバーが集まっていることから,短期的に就労につながるような研修内容としていることが特徴である。

横浜市男女共同参画推進協会におけるプログラムは,生活保護の適用者や,児童扶養手当の受給者,母子生活支援施設入居者等の経済的に困難な状況にあり就労を目指している女性を対象に,ITスキル習得を通じた就労支援を目的として,平成17年5月から1年間の予定で実施されている。平成18年2月現在の実績では,受講者247名の中で,アンケート調査に回答した61名のうち,36名が就労を実現している。横浜市男女共同参画推進協会は,総合的な女性支援体制を持っていることから,ITスキル講習,就労支援講習だけではなく,協会が実施しているその他の取組も合わせて総合的な支援を実施したことが特徴である。また,保育サービスがついていることから,小さな子どものいる女性にとっては,安心して学習できる環境が整っている。

東京ボランティア・市民活動センターにおけるプログラムは,ドメスティックバイオレンスや子どもの頃の虐待,障害や外国籍など困難な課題を抱えている女性達を対象に,ボランティアがITの基礎スキルを教えることにより,対象者が社会の中で自信を持って自立して生きていく支援をすることを目的として,平成17年夏から1年間の予定で実施されている。平成18年3月現在の実績では,受講者272名のうち,11名が就労を実現している。ITスキル指導,保育サービスなど多数のボランティアの参加によって運営されていること,また,精神的にも回復途上にあり通常のパソコン講座に参加できない女性を対象としているため,シェルターや母子生活支援センターなど対象者の居住地の近くで小規模のグループ型研修を実施していることが,東京ボランティア・市民活動センターのプログラムにおける特徴である。

プログラム受講者の多くはドメスティックバイオレンス被害者など困難な状況にある女性達であるが,受講によって,精神的な落ち着きや社会とのつながりを取り戻すことができ,資格取得や就職活動を開始するなど自分の将来に対して意欲的になっている様子が受講者の声からはうかがえる。ITスキルを学んだことで当初の予想とは違って事務パートとして就職できたという人や,データ入力のパート勤務を始めた人など,実際の就職に結びついている人もいる。