平成18年版男女共同参画白書

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第3節 誰でも再就職・起業等ができる社会を目指して

1 我が国社会の将来像

(1)誰もが再挑戦できる社会

誰もが就業や起業等に何度でも再挑戦でき,主体的に人生を切り開くことによって,その個性と能力を十分に発揮できる社会。また,子育て等で離職したことが,女性のキャリア形成にとって障害にならない社会。

(2)自分の選択する人生設計のできる社会

一人一人の女性が,家族の協力や社会の支援の下に,仕事と子育て等とをバランスよく両立しながら,ライフステージに応じて柔軟に活動を選択でき,自分に合った人生設計ができる社会。

(3)安心して子育てできる社会

ライフステージに応じた多様な選択や再挑戦が可能となることにより,自らのキャリア形成に不安を感じることなく,男女が互いに協力しながら安心して子育てに取り組むことができる社会。

2 企業のニーズと女性の意欲

(企業が求めているのは専門的・技術的人材)

正社員として再就職女性の採用実績のある企業に不足感がある職種分野を聞いたところ,専門的・技術的職業従事者の不足感が大きい。専門や技術を身につけた女性は再就職先を見つけやすい状況にあるといえる(第15図)。

第15図 再就職女性の採用実績別,企業が不足感を感じている職種別ウインドウで開きます
第15図 再就職女性の採用実績別,企業が不足感を感じている職種


3 企業,NPO等による支援

(企業に求められる両立支援)

実際に女性が再就業に当たって企業に対応して欲しいことをみると,「子どもの病気や行事時などの休暇制度」,「短時間勤務制度」などの家庭との両立に関する事項や,「採用時の年齢制限の緩和,撤廃」などの企業の採用行動に関する要望が多くみられる(第16図)

第16図 再就業にあたって企業に対応して欲しいこと別ウインドウで開きます
第16図 再就業にあたって企業に対応して欲しいこと


4 行政による支援策(現状と今後の課題)

(女性の再チャレンジ支援プラン)

政府は平成17年12月に「女性の再チャレンジ支援プラン」を取りまとめた。プランでは,子育て等でいったん就業を中断した女性の再就職・起業等を総合的に支援するため,次の5つを主な柱として平成18年度を中心に具体的施策を講ずることとしている。

(1)地域におけるネットワークの構築等による再チャレンジ支援

子育て中の女性が再チャレンジに必要な支援情報や相談サービスを身近な地域で受けられるよう,地域における支援ネットワークづくり,相談窓口の設置等。

(2)学習・能力開発支援

再チャレンジを希望する女性に対する就業等も視野に入れた学習・能力開発の機会の充実。

(3)再就職支援

マザーズハローワークの設置など円滑な再就職支援策の充実。また,経済界・労働界への働きかけや好事例の収集・顕彰,求人年齢制限緩和の促進,中小企業における少子化対応経営の普及など,企業における取組を促進。優れた研究者の出産・育児等による研究中断からの復帰支援。

(4)起業支援

経営に必要なノウハウ・知識の習得支援,融資等の資金援助。

(5)国における総合的な情報提供・調査

再就職や起業などに関する情報をインターネット上で効率的に提供。出産前後の母親を対象に行う総合的ライフプランニング支援プログラムを作成。


(地域における女性の再チャレンジ支援事業)

これまで,地域の男女共同参画センター等において,先駆的な取組として,例えば以下のような女性の再チャレンジを支援する事業を実施してきている。

(東京ウィメンズプラザ)

平成15年度に「再就職したい?再就職するなら!-女性のための実践的プログラム-」を開催。これは,出産・育児・介護等で離職した女性が,就職活動を効果的に行う方法や,家事や育児と仕事を両立させるコツなど具体的ですぐ役立つ再就職のノウハウを学ぶための講座であり,2日間の開催で75名の参加を得ている。

(男女共同参画センター横浜/横浜南/横浜北)

開館(昭和63年)以来,女性のための職業計画プログラム「再就職準備講座ルトラヴァイエ」を継続的に開講。平成15年9月に実施した修了者の追跡調査では,回答者の就業率は75%。現在は働いていないが過去に働いた経験がある人をあわせると, 87%の人がなんらかの職業についており,大きな成果を上げている。

(京都府女性総合センター)

京都府における女性のチャレンジ支援の拠点施設として,キャリアカウンセラーによる女性チャレンジ相談,実践的ノウハウやスキルを学べる再就職準備セミナー,女性のための起業セミナー,起業を目指す女性の交流サロンCo-Co等を実施。全国初の女性起業家向けインキュベーション「女性チャレンジオフィス」には6社が入居し,子育て支援や生活を楽しく豊かにするビジネスを展開中。

(熊本県男女共同参画センター)

くまもと県民交流館(パレア)の複合施設(男女共同参画センター,NPO・ボランティア協働センター,生涯学習推進センター,しごと相談・支援センターが併設)としての特徴を活かし,技術講習会やキャリアカウンセラーによる就業相談,キャリアアドバイザーの養成,女性の起業支援講座を実施するほか,「熊本の女性のチャレンジ事例集」を作成し,具体的に再チャレンジをイメージできるようにしている。

(今後の取組課題)

女性が安心して子育てしながら再チャレンジしやすい環境を整備する上で,今後,さらに次のような課題に取り組む必要があると考えられる。


(1)子育て中の女性の利用しやすさに配慮した支援

子育て中の女性は時間的制約から必要な情報・サービスを入手しにくいといった事情を抱えている。このため,インターネット等を活用した情報提供,能力開発支援,相談等をさらに充実する必要がある。また,子ども連れで行く身近な場所で保育や就業支援に関する情報を入手できたり,子ども連れでも各種支援機関を利用できたりする環境整備も引き続き必要となる。

さらに,本人のニーズや活動段階に応じて必要な情報・サービスをワンストップで受けられるよう,男女共同参画センター等を中核とし,各種支援機関のネットワーク化や地域で気軽に相談できる窓口の設置を一層進める必要がある。

(2)再チャレンジに必要な子育て支援の充実

情報収集や各種セミナー・講座の受講,求職活動など再チャレンジに向けて準備を進める段階でも,保育サービス等仕事と家庭の両立支援策を利用しやすくする必要がある。

(3)企業における再就職女性が活躍しやすい取組の促進

再雇用制度の普及促進や育児等でいったん退職した者に対し正社員も含めて門戸を広げる取組の推進,求人年齢制限の緩和など,再チャレンジ女性を積極的に採用する取組を,さらに進める必要がある。また,短時間勤務,テレワークなど多様で質の高い働き方,パート・アルバイトから正社員への転換等柔軟な人事管理,パートタイム労働者と正社員との均衡処遇などの取組が進むよう支援を行う必要がある。


上記の課題に取り組むと同時に,引き続き,男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援と,働き方の見直しを大幅に進めることが重要である。