平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第8章 > 第4節 売買春への対策の推進

1 売買春の取締りの強化,売買春からの女性の保護,社会復帰支援

捜査機関では,売春防止法(昭和31年法律第118号),風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号),児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号。以下「児童買春・児童ポルノ法」という。),児童福祉法,刑法(明治40年法律第45号)及び地方公共団体が定める青少年保護育成条例等の厳正な運用を図っている。

法務省では,刑務所,少年院及び婦人補導院において,矯正教育の一層の充実に努めている。

厚生労働省では,売買春を未然に防止するため,婦人相談所及び婦人保護施設並びに婦人相談員による婦人保護事業の積極的な実施に努めている。

2 児童買春に対する対策の推進

警察では,児童買春の根絶を図るため,平成16年6月に法定刑の引き上げ等の改正がなされた児童買春・児童ポルノ法に基づき,取締りを強力に推進するとともに,被害児童に対しては,関係機関等と連携しつつ,必要に応じ継続的な支援等を実施するなどの保護対策を推進している。

厚生労働省では,児童買春の被害者となった児童に対し,相談,一時保護,児童養護施設等への入所を行い,場合により心理的治療を行うなどその心身の状況に応じた適切な処遇を図っている。

3 国際的動向への対応及び人身取引に対する総合的・包括的な対策の推進

我が国は,平成17年1月,性的搾取から児童を保護することを目的とする「児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」について批准を行った。

また,政府は,国際的な組織犯罪である人身取引は基本的人権を侵害する深刻な問題であるとの認識の下,平成16年4月,内閣に内閣官房副長官補を議長とし,関係省庁の局長級を構成員とする「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置した。同会議においては,16年12月に人身取引の防止・撲滅,人身取引被害者の保護等を主眼とする「人身取引対策行動計画」が決定されたが,同月,同行動計画は,全閣僚を構成員とする犯罪対策閣僚会議に報告され,人身取引に対する総合的・包括的な上記対策を政府全体として着実に実施していくことが確認された。

人身取引対策行動計画においても主要な施策の一つとして掲げられている「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」を,平成17年の通常国会に提出した。

平成16年9月には,法務大臣から法制審議会に対し,人身取引その他の人身の自由を侵害する犯罪に対処するための法整備に関し,人身売買罪の創設等を内容とする刑法等の一部改正について諮問がされ,法制審議会は,審議の結果,平成17年2月,諮問どおり法整備を行うことが相当であるとの答申を決定し,法務大臣に答申した。政府はこれを受けて立案作業を進め,同月,第162回通常国会に「刑法等の一部を改正する法律案」を提出した。

また,我が国は,政府協議調査団をタイ,フィリピン,コロンビア等に派遣し,先方政府やNGO等の関係機関との協力を促進するとともに,人身取引に関連した地域間会合等の主催や人身取引の防止等に関して国際的な支援を行うなど積極的な取組を行っている。

内閣府では,男女共同参画会議の女性に対する暴力に関する専門調査会において,男女共同参画基本計画の改定の一環として,女性に対する暴力に関する部分の検討を進めているところであるが,その中で人身取引についてもテーマとして取り上げているところであり,さらに,女性に対する暴力をなくしていく観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

警察では,女性と児童の人身取引を防止するため,関係法令による適切な取締りを始め,被害女性の保護等の総合的な対策を,関係省庁,関係団体と連携して推進する一方で,日本国民による海外での児童買春等の問題については,児童買春・児童ポルノ法に基づく取締りを推進するとともに,CSEC(Commercial Sexual Exploitation of Children)東南アジアセミナーの開催等により,外国捜査機関との情報交換の緊密化や連携強化に取り組んでいる。さらに,警察庁では,人身取引問題について,在京大使館,関係NGO等との間で,人身取引問題に関するコンタクトポイントを設置して人身取引に関する情報交換を行っている。

また,平成17年2月,風俗営業等に係る人身取引を防止するため,接待飲食等営業を営む風俗営業者等に対し,接客従業者を雇用等する際には,その国籍,生年月日や就労資格等を確認することを義務付けることなどを内容とする風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案を国会に提出した。

法務省では,「興行」の在留資格が人身取引に利用されることを防止するため,「興行」の在留資格に関する上陸許可基準から,「外国の国などが認定した資格を有する」場合について入国を認める規定を削除した。

また,人身取引被害者の保護を図るため,被害者について,一部の退去強制事由から除くほか,被害者のうち人身取引等により他人の支配下に置かれたために不法滞在状態に陥った者についても,在留特別許可等の対象となることを明示すること,人身取引の加害者について新たに退去強制事由等を設けることなどすることとし,出入国管理及び難民認定法の改正案を刑法その他の法律の改正案と合わせて「刑法等の一部を改正する法律案」として国会に提出した。

その他,法務省では,本年開催した第18回東南アジア諸国出入国管理セミナーにおいて,「各国における人身取引の現状と対策」を議題として取り上げ議論し,その結果,この問題が国際協力の真価を問う喫緊の課題であり,関係国・地域・国際機関相互のより緊密な協力体制を構築していくとの見解で一致した。

厚生労働省では,これまでも各都道府県に設置されている婦人相談所一時保護所において,人身取引被害者の保護を行ってきたところであるが,「人身取引対策行動計画」に被害者の保護について,婦人相談所のシェルターとしての活用,民間シェルターへの一時保護委託の新たな実施等が位置づけられたことに伴い,被害者の状況に応じた適切な保護・支援の措置を講ずることとしている。

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