平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 第1節 夫・パートナーからの暴力の実態

(潜在する被害)

内閣府が全国の20歳以上の男女4,500人を無作為に抽出し実施した「配偶者等からの暴力に関する調査」(平成14年)では,現在または過去に配偶者や恋人がいる(いた)女性(1,714人)のうち,“身体に対する暴行”“恐怖を感じるような脅迫”“性的な行為の強要”のいずれかまたはいくつかをこれまでに1度でも受けたことのある女性は328人(19.1%)で,約5人に1人であった。また,これらの行為が「何度もあった」女性は117人(6.8%)となっている。

配偶者等から暴力を1度でも受けたことのある女性328人のうち,このことをだれ(どこ)にも相談しなかった人は138人(42.1%)で,「友人・知人に相談した」と「家族や親戚に相談した」が約3割と,ほとんどの人が公的機関に相談していない。

相談しなかった理由としては,「相談するほどのことではないと思ったから」と「相談してもむだだと思ったから」が5割以上で,被害が潜在していることが明らかとなっている。

(配偶者間における暴力の被害者の多くは女性)

警察庁の統計によると,平成16年中に検挙した配偶者(内縁関係を含む)間における殺人,傷害,暴行は1,694件,そのうち1,554件(91.7%)は女性が被害者となった事件である。

女性が被害者となった割合は,殺人はやや低くなっているが,傷害は1,198件中1,143件(95.4%),暴行は290件中284件(97.9%),とそれぞれ高い割合になっており,配偶者間における暴力の被害者は多くの場合女性であることが明らかになっている(第1-5-1図)。

第1-5-1図 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者(検挙件数の割合)別ウインドウで開きます
第1-5-1図 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者(検挙件数の割合)

(暴行が増加した夫から妻への暴力の検挙件数)

配偶者間における犯罪のうち女性が被害者である場合の検挙件数の推移を罪種別にみると,暴行,傷害はそれぞれ平成12年以降,大幅に増加していたが,16年においては,暴行が284件で前年よりも54件(23.5%)の増加,傷害が1,143件で68件(5.6%)の減少となっている(第1-5-2図)。

第1-5-2図 夫から妻への犯罪の検挙状況別ウインドウで開きます
第1-5-2図 夫から妻への犯罪の検挙状況

(増加傾向にある夫からの暴力を理由とする婚姻関係事件数)

家庭裁判所における婚姻関係事件の既済総件数は6万8,296件,うち妻からの申立総数は4万9,306件,夫からの申立総数は1万8,990件となっている。

「暴力を振るう」を理由とする妻からの申立件数は増加傾向にあり,平成15年では妻からの申立てが1万4,588件,裁判所における既済総数の21.4%(妻からの申立件数の29.6%)となっており,妻からの申立ての中では,「性格が合わない」に次いで2番目に多い理由となっている(第1-5-3図)。

第1-5-3図 婚姻関係事件における申立ての動機別割合別ウインドウで開きます
第1-5-3図 婚姻関係事件における申立ての動機別割合

(配偶者暴力相談支援センター等への相談件数)

平成13年10月「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)が施行された(配偶者暴力相談支援センター等に係る規定については14年4月から施行)。なお,16年12月2日には,同法の改正法が施行された。

平成14年4月から,各都道府県は,婦人相談所等その他の適切な施設において配偶者暴力相談支援センターの業務を開始したが,16年12月の改正では,市町村においても配偶者暴力相談支援センターの設置が可能となった。16年12月2日現在,全国121施設が配偶者暴力相談支援センターとして,相談,カウンセリング,被害者やその同伴家族の一時保護,各種情報提供等を行っている。14年4月から16年12月末までに,全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談は11万6,255件に上っている。また,法施行後16年12月末までの間に,警察に対し寄せられた配偶者からの暴力に関する相談等への対応件数は,4万4,726件となっている。

(婦人相談所における一時保護並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設の入所理由)

平成15年度中の,婦人相談所一時保護所への入所理由のうち,夫等の暴力は66.6%と全体の半分を超えている。婦人保護施設及び母子生活支援施設の入所理由をみると,「夫等の暴力」を挙げた割合はそれぞれ36.3%,43.3%となっている。いずれの施設においても暴力を理由とする入所は高い割合となっている(第1-5-4図)。

第1-5-4図 婦人相談所一時保護所並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由(平成15年度)別ウインドウで開きます
第1-5-4図 婦人相談所一時保護所並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由(平成15年度)

(シェルター数は増加)

シェルター(配偶者からの暴力などから逃れてきた女性のための一時避難所)として利用できる施設で,法律に設置根拠があるものとしては,婦人相談所,婦人保護施設,母子生活支援施設がある。婦人相談所は売春防止法(昭和31年法律第118号)に基づき,各都道府県に1か所,婦人保護施設は同じく売春防止法に基づき,全国に51か所(公営23か所,民営28か所(平成15年4月1日現在)),母子生活支援施設は,児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づき,全国に287か所(公立182か所,私立105か所(平成16年3月末現在))がそれぞれ設置されている。

このほかに,民間の団体等が自主的に運営している「民間シェルター」がある。

平成16年11月現在,内閣府が把握している民間シェルター数は30都道府県81か所であり,特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という。)や社会福祉法人など法人格を有しているものもあるが,約49%(40施設)(平成15年調査では約58%)は法人格を有していない。

民間シェルターは,被害者の保護を積極的に行うなど,配偶者からの暴力の被害者支援に関し,先駆的な取組を実施している。

(保護命令の申立て及び発令状況)

配偶者暴力防止法では,被害者の申立てにより,裁判所が加害者に対し接近禁止命令,退去命令を発する保護命令の制度を新設し,この命令違反に対して刑事罰を科すこととしている。

平成16年12月に,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の改正法が施行され,被害者への接近命令と併せて,被害者と同居する未成年の子への接近禁止命令も発令できるようになった。

保護命令の申立書に,配偶者暴力相談支援センターの職員または警察職員に相談等を求めた事実等の記載がある場合は,配偶者暴力防止法第14条第2項に基づき,裁判所は配偶者暴力相談支援センターまたは警察に対し,被害者が相談等を求めた状況等を記載した書面の提出を求めることとなっている。申立書にこうした事実の記載がない場合は,公証人役場で認証を受けた宣誓供述書を申立書に添付しなければならない。法施行後から平成16年12月末までに終局した保護命令事件5,506件のうち,支援センターへの相談等の事実の記載のみがあったのは1,108件,警察への相談等の事実の記載のみがあったのは2,200件,双方への相談等の事実の記載があったのは1,728件となっている。また,申立書に宣誓供述書が添付されたのは458件となっている。

法施行後平成16年12月末までの間に,裁判所に申し立てられた保護命令事件の件数は5,601件で,そのうち裁判が終了したのは5,505件となっている。裁判が終了した事件のうち,保護命令が発令された件数は4,436件(80.6%),そのうち被害者に関する保護命令のみ発令されたのは4,376件(98.6%),子への接近禁止命令が発令されたのは60件(1.4%)となっている。

法施行後平成16年12月末までの間に保護命令が発令された事件の平均審理期間は11.7日となっており,速やかに裁判が行われ,被害者の保護が図られている。

なお,法施行後から平成16年12月末までの間の保護命令違反の検挙件数は141件である。

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