平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 第2節 雇用の分野における女性

(有配偶者で低い女性の労働力率と非労働力人口における就業希望の状況)

女性の年齢階級別労働力率を未婚者,有配偶者別にみると,20歳代から40歳代にかけて有配偶者の労働力率は未婚者の労働力率よりかなり低くなっている。未婚者は20歳代後半をピークに年齢とともに徐々に下降するのに対し,有配偶者では40歳代後半がピークとなっており,この傾向は昭和50年,平成2年,16年とも変わらない。

有配偶女性について,年齢階級別に年を追ってみると,20歳代後半の労働力率は過去に比べ大きく上昇しているが,30歳代前半の変化はそれほど大きくなく,平成16年の30歳代後半の労働力率は,むしろ平成2年よりも低くなり,昭和50年の水準に近づきつつある。これは,子育ての時期が遅くなったことにより,労働市場から離れる時期が高い年齢層に移行したことも影響していると考えられる(第1-2-7図)。

第1-2-7図 配偶関係別女性の年齢階級別労働力率の推移別ウインドウで開きます
第1-2-7図 配偶関係別女性の年齢階級別労働力率の推移

このように,有配偶女性においては40歳代前半まで非労働力化する傾向があるが,非労働力人口となっている女性の就業希望についてみると,労働力率が低い30歳代で就業を希望する者が多いことがわかる。

この就業希望者数を労働力人口に加えて算出した潜在的労働力率では,労働力率にあったM字のくぼみはほとんどなくなり,台形に近くなる。これは,子育て期においても就業を希望する意識はある一方で,現実的には子育てと就業の両立は困難という状況を反映しているものと考えられる(第1-2-8図)。

第1-2-8図 女性の年齢階級別潜在的労働力率別ウインドウで開きます
第1-2-8図 女性の年齢階級別潜在的労働力率

(女性雇用者の平均年齢の上昇や勤続年数の長期化)

女性雇用者の平均年齢の上昇や勤続年数の長期化がみられる。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成16年)によると,平成16年の雇用者のうち女性の平均年齢は38.3歳(昭和60年35.4歳),平均勤続年数は9.0年(同6.8年)であった。男性は平均年齢41.3歳(同38.6歳),平均勤続年数13.4年(同11.9年)となっている。

女性の雇用者構成を勤続年数階級別にみると,昭和56年には勤続年数1~2年が最も多かったが,平成16年では5~9年が最も多くなっており,10年以上の勤続年数の勤続者割合も上昇傾向にある(第1-2-9図)。

第1-2-9図 勤続年数階級別雇用者構成割合の推移別ウインドウで開きます
第1-2-9図 勤続年数階級別雇用者構成割合の推移

(変化する女性の就業に関する意識)

女性の年齢階級別労働力率の変化や勤続年数の長期化等の背景には,女性の就業に関する国民の意識変化がある。

女性が職業をもつことについての考えは,男女ともに,「子どもができてもずっと働きつづけるほうがよい」と考える「継続就業」支持が,「子どもが大きくなったら再就職するほうがよい」と考える「一時中断・再就職」支持を,初めて上回った。男性は前回調査(平成14年)もこの回答が最も多かったが,女性の回答で「継続就業」支持が最多になったのは,調査開始以来,初めてのことである(第1-2-10図,第1-2-11図)。これは,この考え方に賛成する40歳代,50歳代の女性が大幅に増えたことによるもので,世代を超えて,生涯を通じて女性が職業をもつことを肯定的にとらえる意識が女性の間でも増加しているといえる。

第1-2-10図 一般的に女性が職業をもつことに対する女性の意識変化別ウインドウで開きます
第1-2-10図 一般的に女性が職業をもつことに対する女性の意識変化

第1-2-11図 一般的に女性が職業をもつことに対する男性の意識変化別ウインドウで開きます
第1-2-11図 一般的に女性が職業をもつことに対する男性の意識変化

一方,現在育児中の者も多いと思われる30歳代女性の回答では,平成16年調査でも「子どもが大きくなったら再び職業をもつほうがよい」との回答が最多になっており,女性の労働力率がM字カーブを描くことが意識面からもみえる。

また,固定的性別役割分担意識についてはかる指標とされている「夫は外で働き,妻は家庭を守るべき」という考えでも,初めて反対が賛成を上回った。男女別にみると,女性は反対が賛成を上回っているが,男性は依然賛成の方が多くなっている。しかしながら,男性においても賛成と反対の差は以前に比べて縮小しており,固定的性別役割分担に関する意識は,男女ともに着実に変化している(第1-2-12図,第1-2-13図)。

第1-2-12図 夫は外で働き,妻は家庭を守るべきという考え方について別ウインドウで開きます
第1-2-12図 夫は外で働き,妻は家庭を守るべきという考え方について

第1-2-13図 夫は外で働き,妻は家庭を守るべきという考え方について(男女別)別ウインドウで開きます
第1-2-13図 夫は外で働き,妻は家庭を守るべきという考え方について(男女別)

(管理職に占める女性の推移)

女性の社会進出は徐々に進展しているが,管理職に占める女性割合は依然として少ない。

総務省「労働力調査」(平成16年)によると,管理職に占める女性の割合は,平成16年は10.1%(前年9.7%)で,初めて1割を超えたが依然として低い水準にある。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」で女性管理職を役職別にみると,係長相当職の割合が最も高く,平成16年は11.0%と初めて1割を超えた。また,役職が上がるにつれて女性の割合は低下し,課長相当職は5.0%,部長相当職では2.7%と極めて低くなっている(第1-2-14図)。

第1-2-14図 役職別管理職に占める女性割合の推移別ウインドウで開きます
第1-2-14図 役職別管理職に占める女性割合の推移

(女性の能力発揮の促進をめぐる動き)

女性雇用者が増加しつつある一方で,その能力が十分に発揮されているといえない状況を受け,企業戦略の一環としても女性の能力発揮の促進は不可欠との認識が企業間に生まれており,現在の状況を改善するための様々な取組が行われるようになっている。

その取組の一つに「ポジティブ・アクション」がある。これは,過去の経緯や固定的な性別役割分担意識などが原因で,男女労働者間に事実上生じている格差を解消することを目的として,個々の企業が進める自主的かつ積極的取組のことであるが,厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成15年度)によると,ポジティブ・アクションに既に取り組んでいる企業と今後取り組むこととしている企業をあわせると38.3%となっている。これらの企業がポジティブ・アクションを必要と考える理由は,「男女ともに職務遂行能力によって評価されているという意識を高めるため」が68.0%で最も多く,次いで「女性の能力が有効に発揮されることにより,経営の効率化を図るため」となっている。なお,実際に行われている取組事項をみると,「人事考課基準を明確に定める」が最も多く,次いで,「女性がいない又は少ない職務について,意欲と能力のある女性を積極的に採用する」となっている。

また,昭和61年の男女雇用機会均等法施行前後に,それまでの男女別の雇用管理制度を改め,総合職,一般職のコースを設定し,コースごとの処遇を行うシステムとして企業に導入されるようになったコース別雇用管理制度については,その運用において,男女で異なる取扱いがなされたり,固定的な性別役割分担意識等の結果として,管理職候補となる総合職のほとんどを男性が占め,一般職を女性のみとするなど,事実上の男女別雇用管理といえる事例も多くみられるという問題が指摘されている。厚生労働省「女性雇用管理基本調査」によると,過去3年間に「コース転換の柔軟化」等のコース別雇用管理制度の見直しをした企業割合は23.0%となっており,コース別雇用管理制度の導入割合が高い5,000人以上規模の企業では,45.2%が見直しを行っており,大規模企業での見直しが進んでいる。

(賃金格差や就業形態の違いを背景とした男女の給与所得格差,女性の6割以上が300万円以下の所得者)

男女の給与所得には大きな差がある。

国税庁「民間給与実態統計調査」(平成15年度)によると,1年間を通じて勤務した給与所得者について男女別に給与水準をみると,300万円以下の所得者の割合が男性では18.7%であるのに対し,女性では65.1%に達している。また,700万円超の者は,男性では22.1%となっているのに対し,女性では3.3%に過ぎない(第1-2-15図)。

第1-2-15図 給与階級別給与所得者の構成割合別ウインドウで開きます
第1-2-15図 給与階級別給与所得者の構成割合

この状況の背景としては,正規雇用者の男女間で依然として賃金格差があることに加え,正社員に比べて賃金水準が低いパートタイム労働に女性の就労が多いなど,雇用形態においても男女間に違いがあること,また,パートタイム等に従事する女性では,収入が一定範囲を超えないよう調整する者もいることなどが考えられる。

(賃金格差は,一般男女労働者間は長期的には縮小傾向,パートタイム労働者と一般労働者間もやや縮小)

正規雇用者など一般労働者における男女の1時間当たり平均所定内給与額の差は,以前に比べ縮小傾向にあり,平成16年については,男性一般労働者の給与水準を100とした時,女性一般労働者の給与水準は68.8となっている。

次に男性一般労働者と男女のパートタイム労働者の給与格差についてみると,平成16年では,男性一般労働者の給与水準を100とした時,男性パートタイム労働者は50.6となっており,前年に比べ0.7ポイント縮小しているものの,依然としてその格差は大きい。また,男性の一般労働者と女性パートタイム労働者では,女性のパートタイム労働者の給与水準は男性一般労働者の43~45台でほぼ横ばいで推移しており,16年は45.2と,前年に比べ0.7ポイント格差が縮小しているものの,依然非常に低い水準にとどまっている(第1-2-16図)。

第1-2-16図 労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移別ウインドウで開きます
第1-2-16図 労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移

パートタイム労働者の給与水準が依然として低い要因は,第1-2-5図で示したように,企業が人件費の節約を主な理由として雇用者の非正規化を進めていることなどにある。

第1-2-5図 就業形態別非正社員の主な雇用理由別ウインドウで開きます
第1-2-5図 就業形態別非正社員の主な雇用理由

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