平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 第3節 科学技術と男女共同参画の今後に向けて

これまで見てきたように,科学技術の進展は,家事の負担軽減,職域や活動範囲の拡大など,暮らしと働き方に大きな変化をもたらす。暮らしと働き方の変化は,新たなニーズを生み,科学技術を変えていく原動力ともなる。このような相互に影響を及ぼし合う,らせん的な関係を有効かつ積極的に活用することにより,私たちの暮らしと働き方をよりよいものに変えていくことができる。

科学技術は,暮らしと働き方のみならず,自然災害の防止,疾病の克服,食料・エネルギー資源の確保等人類が直面する課題の解決に役立つとともに,新製品の創出,生産性の向上,新たな販路の開拓等を通じて経済的な国際競争力の向上にも資する。

一方,科学技術には,別の側面もある。科学技術の発展に伴う人間活動の領域の広がりや活発化に伴って,地球環境問題,生命倫理問題,情報力格差など新たな社会的課題が顕在化している。また,科学技術に関する最低限の知識を有しているといないとでは,例えば,日々の健康管理から病気の際の治療選択に至るまで,あらゆる場面で判断の的確さにおいて差が生じる可能性がある。このため,科学技術に関する基礎的素養を男女ともに備える必要がある。

我が国の男女の学力については,高校1年生まで科学的・数学的リテラシーに差がないことが国際的調査で示されている。また,最先端の研究開発を行う研究者の多くが,男女の能力差を感じていない。しかしながら,男女共同参画の視点で,国民の科学技術への関心及び研究者の活動実態を見ると,男女間に開きがあるように見える。

科学技術分野において女性の参画割合が低くなる原因の一つには,理工系分野を将来の進路として選ぶ女子が少ないことが挙げられる。科学技術を学び仕事として選ぶことについて,教師や親が自分に期待していないと感じる女子が男子よりも多いこと,身近に女性の研究者,技術者等が少なく,将来の職業イメージが描けないことなどが,その背景にあると考えられる。このため,女子本人とともに親や教師等を対象に,女性の研究者,技術者等が活躍している姿を様々な機会・媒体を通じてわかりやすく情報提供するなど,女子の理工系分野へのチャレンジを促す方策を講じることが重要である。

研究現場においては,女性が研究者として採用されても,長時間の研究活動に加え,出産・育児等で研究の継続が困難になったり,能力を十分発揮できなかったりする場合も少なくなく,また,これらに対応するための受入態勢が整備されていないことが課題として指摘されている。

平成11年6月の男女共同参画社会基本法の施行以降,科学技術分野では,研究者の自主的な積極的改善措置(ポジティブ・アクション)として,目標数値及び達成期限の設定,男女共同参画に専門的に取り組む組織の構築,子育て支援のための託児施設の設置などが進められている。

また,平成13年度から17年度までを対象期間とする第2期科学技術基本計画においても,男女共同参画の観点から,女性の研究者への採用機会等の確保及び勤務環境の充実を行う旨が明記されている。競争的研究資金制度の中では,研究者の育児と研究の両立支援のための措置が講じられ始めている。第3期科学技術基本計画においても,更なる措置の充実が求められる。

このような取組の推進に当たっては,達成状況を客観的に評価するための定期的なフォローアップが重要である。男女共同参画会議は,女性の置かれた状況を客観的に把握できる統計調査等の充実,利用者のニーズに応じた情報提供の推進等が必要であることを平成15年7月に決定している。科学技術分野においても,女性研究者の採用,登用,育児休業等に係る男女別統計情報等の収集・整備・提供が求められる。

科学技術分野における男女共同参画の動きは活発化しており,今後の持続的発展が期待される。社会の少子高齢化が進展する中で,男女が共に科学技術を育て活用していくことは,科学技術系人材の需要の高まりにこたえるためにも重要である。

女性も生き生きと科学技術活動に参加し,仕事と生活の調和を図り,よいロールモデルになり,科学技術が描く夢と希望を次代の子どもたちに伝えられるようにすることが大切である。男女の共同参画による科学技術分野の多様性の確保は,国民の強い要請である安全・安心な社会の形成にもつながる。

科学技術分野の男女共同参画の推進に向けて,様々な主体による積極的な取組が必要である。

(コラム:宇宙飛行における男女共同参画)

(コラム:医療分野で活躍する女性)

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