平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 2 理工系分野における学力,関心及び進路選択

(1)中高生の理工系分野の学力

経済協力開発機構(OECD)は,平成16年12月,主要41か国・地域の15歳児の生徒を対象に,15年に行った学習到達度調査(PISA2003)の結果を公表した。OECD平均では,読解力部門は34点差で女子の平均点が,数学的リテラシー部門及び科学的リテラシー部門では,それぞれ11点差及び6点差で男子の平均点が高く,これら3つの部門で統計的に有意な差があったが,問題解決能力部門では,統計的に有意な差はなかった(第1-序-31表)。

第1-序-31表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2003年結果別ウインドウで開きます
第1-序-31表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2003年結果

我が国においては,読解力部門では22点差で女子の平均点が高く統計的に有意な差があった。その他の部門では,数学的リテラシー部門及び科学的リテラシー部門で,それぞれ男子の平均点が8点差及び4点差で女子を上回り,問題解決能力部門で女子の平均点が男子を2点上回ったものの,統計的な有意差はないことが示された。前回調査(PISA2000)では,女子の科学的リテラシー部門の得点が男子を7点差で上回っていた。今回の調査では,男女の得点が逆転した結果が示されたが,2回の調査ともに,数学的リテラシー部門及び科学的リテラシー部門において,男女に有意な差がないことが統計的に示された(第1-序-32表)。

第1-序-32表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2000年結果別ウインドウで開きます
第1-序-32表 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2000年結果

(コラム:国際数学オリンピック)

(2)科学技術に対する関心及び進路選択

(小中学生の理数科目の好き嫌い)

小中学生のころ理科を「好きだった」と感じている割合は,男性の方が女性よりも2割から3割程度多いとの結果が示されている(第1-序-33図)。

第1-序-33図 小中学生の頃の理科の好き嫌い別ウインドウで開きます
第1-序-33図 小中学生の頃の理科の好き嫌い

小中学生を対象とした意識調査の結果によれば,理科や算数(数学)の重要性,必要性に関する認識は,男子・女子で差は少ないが,好き嫌いや,自分の将来の進路に結び付く項目では男女差が比較的大きく,女子が理数系を敬遠する傾向にあることがうかがえる(第1-序-34図)。

第1-序-34図 小中学生の勉強に対する意識(理科,算数(数学))別ウインドウで開きます
第1-序-34図 小中学生の勉強に対する意識(理科,算数(数学))

また,理科の成績や進路に関する教師や親の自分に対する期待について男女の意識の違いが現れている。女子が自然科学を敬遠する理由としては,このような周囲の意識が影響していることも考えられる(第1-序-35図)。

第1-序-35図 中学2年生からみた理科の学習に対する周囲の意識別ウインドウで開きます
第1-序-35図 中学2年生からみた理科の学習に対する周囲の意識

(高校生の職業意識)

高校3年生の将来の職業に関する意識調査結果においては,男子が大学教授・研究者・学者,システムエンジニアなど研究・技術系の職業を希望する仕事として多く挙げている一方,女子では保育士,幼稚園教諭,看護師,美容師等が上位を占めており,従来男性又は女性が就くことが多かった職業のイメージが男子及び女子の職業選択に影響を与えているとの指摘がある(第1-序-36表)。

第1-序-36表 高校3年生が将来就きたい職業別ウインドウで開きます
第1-序-36表 高校3年生が将来就きたい職業

(大学生・大学院生の専攻分野)

大学(学部)における学生の専攻分野別割合を見ると,平成16年5月現在,女子学生が人文科学・社会科学を専攻する割合はそれぞれ約3割である。しかしながら,女子学生が理学を専攻する割合は2.2%,工学では4.7%であり,理工系分野への進路選択が少ない。一方,男子学生の専攻分野別割合は,社会科学で44.1%,工学で26.1%であり,それぞれ女子学生の割合を10ポイントから20ポイントほど上回っている。男子学生が人文科学を専攻する割合は女子に比べて少なく1割に満たない。男子学生が理学を専攻する割合は4.3%であり,女子と同様に少ないが,男子の在学生数は理学全体の74.2%を占めており,女子の25.8%と比較して3倍ほど多い(第1-序-37図)。

第1-序-37図 学部学生の専攻分野別割合別ウインドウで開きます
第1-序-37図 学部学生の専攻分野別割合

また,大学学部,大学院修士課程,博士課程と進むにつれて在学生に占める女子の割合は減少し,学部で40.1%,修士課程で29.4%,博士課程で29.2%となる。その減少傾向は薬学において特に顕著であり,学部で57.9%,修士課程で45.1%,博士課程で21.0%へと減少し,学部と博士課程で37ポイントの開きがある。理学及び農学においても,学部と博士課程で10ポイント近い差が生じている。工学においては,課程による男女割合の変化はあまり見られないものの,在学生に占める女子の割合は10%程度であり,他分野と比較して低い(第1-序-38図)。

第1-序-38図 学部学生・院生に占める女性割合別ウインドウで開きます
第1-序-38図 学部学生・院生に占める女性割合

OECD加盟国との比較において,大学型高等教育(第一学位(学士),第二学位(修士))及び上級研究学位プログラム(博士)の卒業者に占める女性割合はOECD加盟国中最も低く,それぞれ39%,26%,23%であり,OECD各国平均の55%,51%,40%と比較して20ポイント近い差がある。また,生命科学・自然科学・農学分野及び工学・製造・建築分野における大学型高等教育及び上級研究学位プログラムに占める女性卒業者の割合も,それぞれ39%,10%であり,OECD各国平均の49%,23%と比較して10ポイント程度低く,工学・製造・建築分野では加盟国中で最小の割合を示す(第1-序-39図)。

第1-序-39図 高等教育卒業者に占める女性の割合(OECD諸国比較)別ウインドウで開きます
第1-序-39図 高等教育卒業者に占める女性の割合(OECD諸国比較)

このように,高校1年生のときには理数科目の学力に男女差がないものの,理工系分野を将来の進路として選択する女子の割合は男子に比較して少ない。

(男女の科学技術への関心とその影響)

18歳以上の国民においても,「科学技術についてのニュースや話題」に「関心がある」と回答した男性が6割程度であるのに比較し,女性が4割程度であり,女性の関心が低い。若年層においては,男女ともに関心の低下傾向が見られる(第1-序-40図)。

第1-序-40図 科学技術についてのニュースや話題への関心別ウインドウで開きます
第1-序-40図 科学技術についてのニュースや話題への関心

男女ともに若年層の理工系離れが進む中,科学技術分野の人材不足が懸念されている。女子が理工系分野を進路として選ぶ割合が男子より低い傾向が続くことは,社会の少子化とあいまって,女性研究者や理数系の女性教員等の減少を招く負の循環につながる。創造的かつ調和の取れた社会を形成するために,多様性の確保は不可欠であり,女性の研究者等が活躍する姿をロールモデル情報として伝えるなど,女子が進んで理工系分野にチャレンジするための支援策が求められる。

(コラム:欧米における女性研究者・若年層のチャレンジ支援)


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