平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 2 交通・建築技術の発達と住まい等の変化

交通・建築技術の発展も家庭生活に大きな影響を与えた。建築技術の発達は鉄筋コンクリート団地の建設を可能とし,昭和30年代に日本住宅公団から2DK(ダイニングキッチン)団地が開発,供給された。団地という新しい居住形態は,核家族の増加に伴い都市部の勤労生活者を始めとした人々に受け入れられ,40年代以降,全国に広く一般化した。

団地の立地状況もライフスタイルに大きな影響を与えたといえる。高度経済成長期における都市化の進展と,鉄道や道路技術の発達,自動車の普及等の交通網の整備による通勤圏の拡大が重なり,団地の多くは大都市郊外に立地された。このことにより通勤には職住が接近していた時期に比べ,大幅に時間がかかるようになり,時間の面からも職場のある地域と家庭がある地域が分離されるようになった。大都市郊外における団地の誕生は,より多くの核家族世帯を生み,その職住分離の生活は,父親は職場,母親は家庭という性別役割分担を,より定着させるものとなった。

昭和60年代以降,建築物の高層化技術の利用が更に進んだ。20階以上の超高層マンションの建設を可能とした技術開発としては,高層化を可能とするコンクリートの強度増加と地震等の災害に対応する免震技術,高速昇降機の開発が挙げられる。

これらの技術進歩に伴い,バブル期には東京都心部を始めとして大都市圏に豪華な設備や眺望を売り物にした高額な超高層マンションが登場した。

バブル崩壊後は,地価の下落に加え,超高層化がマンション1棟当たりの供給戸数を増加させたことに伴う価格下落が起こり,マンションを購入して都心に移動する層も一部の富裕層から30歳代の子持ちのファミリー世帯や夫婦,またリタイヤ後の高齢者に広がっている(第1-序-6図)。東京都内マンション着工新築戸数は増加しており(第1-序-7図),住まいの都心回帰の流れが進んでいる。都心の超高層マンションが職場に近いことから,共働き世帯の受け皿にもなる動きも生じている。近年の新たな試みとしては,住宅の建替え等に際して,住宅と保育所との併設を促進している例がある。

第1-序-6図 東京都8区の分譲マンション購入者における世帯主の年齢別・転居前居住地別世帯数の状況別ウインドウで開きます
第1-序-6図 東京都8区の分譲マンション購入者における世帯主の年齢別・転居前居住地別世帯数の状況

第1-序-7図 東京都における分譲マンションの着工新築戸数の推移別ウインドウで開きます
第1-序-7図 東京都における分譲マンションの着工新築戸数の推移

上記のように,近年の建築技術の活用は,結果として職住近接の実現をもたらし,あわせて居住の利便性も向上するなど,新たなライフスタイルを創出したといえる。しかしながら他方で,建築技術の進歩に伴う超高層マンションの開発等が,急速な人口増加に伴う学校などのインフラ不足,環境や治安の悪化など,様々な問題を顕在化させている面があるとの指摘もあり,新たな問題を誘発する側面も持っているといえる。これらの問題への対応としては,開発や居住に関するルールを地域が自ら策定するなど,住民やNPO等が主体的な取組を行っている事例がある。

また,少子高齢化,女性の社会進出の進展,家族構成やライフスタイルの多様化を反映して,若者,高齢者などの様々な要望を満足させるための住宅商品が増えている。

例えば,「あらゆる年齢,身体,能力の人が,ごく普通に利用できるように,都市や住宅,設備,家具等の対応範囲を可能な限り拡張する」というユニバーサルデザインの考え方に従った技術開発が見られる。具体的には,梁,柱,骨格など住宅の構造体(スケルトン)と内装等,間取りといった住宅内部の消耗的な部分を分け,強固な構造と,容易に変更できる間取りを両立させた「スケルトンインフィル住宅」,危険防止や使い易さを備えた「バリアフリー住宅」が挙げられる。これらの中でも,特に,高齢化が急速に進展する中で,高齢者等の自立や介護に配慮した,バリアフリー住宅のニーズはかなり高まると予想される。

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