平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 第1節 暮らしと働き方の変化

ここでは,特に家事,住まい,職業,医療などの観点から科学技術とライフスタイルの相互関係について検討する。


第1節のポイント

1 家電製品及びその他の技術成果の普及と家事負担の軽減

  • 女性の家事時間は高度経済成長期以後減少しているが,これには,冷蔵庫,洗濯機,掃除機などの家電製品やインスタント食品,冷凍食品の開発・普及が影響していると考えられる。これら技術の発展は,女性の家事時間の短縮や社会進出と家庭の両立に貢献した。その一方,この間,男性の家事時間に大きな変化はなく,技術発展は,固定的性別役割分担を維持した社会構造の中での女性の負担を軽減することには貢献した。また,育児時間についてはむしろ増加傾向にある。

2 交通・建築技術の発達と住まい等の変化

  • 建築技術の発達は鉄筋コンクリート団地の建設を可能にした。多くの団地が郊外に立地され,鉄道や道路技術の発達などによって,時間を要するものの都心への通勤が可能となり,都心の業務空間と郊外の居住空間が分離した。職住分離の生活は,職場は父親,家庭は母親という性別役割分担にも適応したものであった。
  • バブル崩壊後,地価下落に加え,コンクリート強度増加や免震技術などを利用した高層化に伴うマンションの供給戸数増が都心回帰の動きを促した。この動きは,通勤時間の短縮や職住近接の実現などをもたらし,超高層マンションが共働き世帯の受け皿ともなっている。
  • 少子高齢化の進展の中,住宅にもユニバーサルデザイン(万人向け設計),バリアフリーの構想に従った技術開発が見られる。

3 職場の機械化・情報化と女性の職域拡大

  • 工作機械の発達や産業用ロボットの導入により,肉体的に負担の大きい作業が減少し,女性の進出を容易にした。オフィスでの自動化も進展した。省力化技術が進み,トラック運転手など体力を要する職種へも女性の職域が拡大する例が見られるようになった。
  • さらに,情報通信機器,インターネット,ユビキタス技術が発達する中で,新しい働き方としてのテレワーク,SOHO(スモール・オフィス,ホーム・オフィス)が普及しつつあるなど,仕事と生活の両立支援のツールとしても活用され始めている。一方で,ストレス,VDT(視覚表示装置)作業時における悪影響など健康面での課題も生じている。また,情報通信機器の利用率には男女差が残っており,情報通信化に伴い,個人や企業間の情報力格差をもたらす可能性がある。

4 知的財産の活用,知識集約型産業

  • 近年の科学技術の発展は,情報通信産業やハイテク産業など知識集約的な産業の創出・拡大に重要な役割を果たしている。金融などサービス業の分野でも,高度な専門知識が企業の経営収益を左右する一つの要素となっており,企業経営の基盤として,特許等知的財産権,人材,組織プロセス,顧客とのつながりなど多様な知的資産の活用が課題となる。
  • サービス産業化の進展に伴い,第3次産業に従事する女性就業者の割合は上昇しているが,知識集約型産業を支えるべき研究者には女性の進出が後れており,理工系科目への関心にも男女差が見られる。能力のある女性人材が知的資産の一つとして位置づけられ,日本経済活性化の重要な担い手となると期待できる。

5 農業技術

  • 機械化を始めとした農業技術の進展により,日本の農業は,戦後,省力化が進んだ。
  • 農業技術の進展により,全体としてみると労働負担は大幅に軽減したが,現在に至るまで,機械操作は主に男性が担っていることがうかがわれ,農業の省力化は,主に男性側の負担を軽減したといえる。機械の導入後も,女性は機械化が不可能な労働集約的な作業を担うことが多かったため,女性の労働は男性ほど軽減されなかったが,女性の労働環境にも一定の変化が見られた。
  • 女性農業者は,その配偶者に比べ労働時間が長く,過重労働が問題となっている。

6 医療・公衆衛生

  • 医療・公衆衛生の向上は,過去において感染症による死亡を減少させ,これらの死亡の減少は,出生抑制の動機の一つとなった。
  • 生殖補助医療の進歩は,不妊症のために子を持つことができない人々が子を持てる可能性を増加させている。一方,医療を受ける女性の健康や生命倫理の課題もある。
  • 様々な疾患の原因,治療法等が男女で異なることがわかってきたことから,いわゆる性差医療が始まっている。
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