平成16年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 序説 男女共同参画社会へのあゆみと現状

前節まで男女共同参画社会の実現のための枠組みが「国際婦人年」である昭和50年以降どのように整えられてきたのかを振り返ってきたが,実際の男女共同参画の進展状況を主な指標でみてみる(第1-序-13表)。

第1-序-13表 主な男女共同参画の進展状況別ウインドウで開きます
第1-序-13表 主な男女共同参画の進展状況

まず政治・行政分野での女性の参画については,国会議員に占める女性割合はやや上昇しているものの,国家公務員の管理職に占める女性割合は著しく低い水準にとどまっている。労働分野における女性の参画については,専門的・技術的職業従事者の女性割合は比較的高く,就業者に占める女性割合は徐々に上昇しているものの,管理的職業従事者の女性割合は依然として低い水準にある。男女間の賃金格差は縮小傾向にはあるものの依然として大きい。また,育児期にある(6歳未満の子どものいる)有業の夫の仕事時間は長く,家事時間,育児時間はほとんど増加していない。これに対し,有業の妻の家事時間は減少しておらず,育児時間は増加している(第1-序-14図)。

第1-序-14図 育児期にある有業夫婦の仕事,家事,育児時間別ウインドウで開きます
第1-序-14図 育児期にある有業夫婦の仕事,家事,育児時間

妻の仕事時間は減少しているが,これはパートタイム労働者の割合が高まっているためと考えられる。このように男女共同参画は,男女共同参画社会の実現のための基本的な枠組みの整備状況に比較して政治・行政分野,労働分野及び家庭内ともそのあゆみは緩やかであると言える。

男女共同参画が法律や制度の整備の進ちょくに見合った形で期待するほど進展していない要因の一つとして男女の意識があると考えられることから,まず男女の基本的意識の変化について検討する。

1 男女の基本的意識の変化

(共働き世帯の増加の背景にある意識変化)

昭和50年代中ごろの夫婦共働き世帯は600万世帯程度であったが,平成15年度では949万世帯となっている。一方,夫が働き妻は無業の片働き世帯は1,100万世帯程度から870万世帯へと減少し,現在では共働き世帯数が片働き世帯数を超える状況にある。昭和50年代と比較すれば女性の就業割合は増加しているが,その就業スタイルは仕事を継続するよりも,子育て期にいったん就業を中断し,その後パートタイムなどの比較的短時間勤務に従事する割合が高くなっている。

こうした女性の就業の増加は,女性の就業を肯定的にとらえる方向に意識変化が進んでいることが影響していると思われる。他方で,再就職後の女性が比較的短時間労働に従事する背景の一つには「夫は外で働き,妻は家庭を守る」等の根強い固定的性別役割分担意識の存在がうかがわれる。

(女性の就業に関する意識変化と就業スタイルに関する男女間での意識差)

結婚後も働きたいと考える女性はこの30年間で増加している。特にこの10年間で「ずっと職業を続けるほうがよい」と考える「中断なし就業」支持の女性が急増しており,平成14年では,昭和47年の3倍以上となった。しかし,「子供が大きくなったら再就職するほうがよい」と考える「一時中断型」を支持する者の数も依然多く,平成14年においても一時中断型の支持が最多となっている。世代別では,30歳代・50歳代で中断なし就業の支持が一時中断型支持を上回ったが,他の世代では一時中断型を支持する女性が最も多い状況となっている(第1-序-15図)。

第1-序-15図 一般的に女性が職業をもつことに対する女性の意識変化別ウインドウで開きます
第1-序-15図 一般的に女性が職業をもつことに対する女性の意識変化

一方,男性の意識も女性の就業を肯定的にとらえる方向に着実に変化している。30年前には,女性は一生無業もしくは結婚したら専業主婦がよいと考える男性が,全体の約4割を占めていたが,平成14年では約1割まで減少している。これに反比例して,結婚後も女性が働くことを支持する男性の比率が増え,特に4年からの10年間で,中断なし就業を支持する男性が急増し,14年では20歳代から70歳以上のすべての世代で最も多くなっている。一時中断型支持と中断なし就業支持を合計すると,7割近くの男性が女性の就業について肯定的な考えをもっている(第1-序-16図,第1-序-17表)。

第1-序-16図 一般的に女性が職業をもつことに対する男性の意識変化別ウインドウで開きます
第1-序-16図 一般的に女性が職業をもつことに対する男性の意識変化

第1-序-17表 一般的に女性が職業をもつことについてどう思うか別ウインドウで開きます
第1-序-17表 一般的に女性が職業をもつことについてどう思うか

この男性の急激な意識変化を,過去からの社会情勢に重ね合わせてみると,賃金の伸び悩みやリストラの増加などの厳しい社会経済情勢が,その意識にかなり影響していると考えられる(第1-序-18図)。

第1-序-18図 女性が職業をもつことに対する男性の意識変化と経済情勢別ウインドウで開きます
第1-序-18図 女性が職業をもつことに対する男性の意識変化と経済情勢

現在の日本では,給料が右肩上がりに増えていた高度成長期とは違い,家族のうちで男性一人が働く構図では家計を支えきれなくなるリスクが増大している。生計を維持することへの危機感が,世代に関係なく,女性もともに働くことを支持する男性の増加を促している大きな要因と思われる。

このように女性の就業については,男女ともに肯定的に考える方向に意識が変化しているものの,その就業スタイルに関する考えには男女間でずれが生じている。現在では,男性は,中断なし就業を支持する者が一時中断型を支持する者をやや上回るようになった一方で,女性は,一時中断型を支持する者も依然として多く,中断なし就業をやや上回っている。これは,多くの家庭では家事・育児を主に女性が行っており,妻が夫同様に就業した場合でもこの状況に変化がないということを,男性以上に女性が認識しているために生じる差と思われる。現在における家庭内の役割分担状況を具体的にみると,掃除・洗濯・炊事のいずれにおいても,有業無業,就業状況にかかわらず,7割以上の家庭で女性が主に家事を担当している(第1-序-19表)。

第1-序-19表 家庭内の家事を主に担当しているのは誰か別ウインドウで開きます
第1-序-19表 家庭内の家事を主に担当しているのは誰か

この状況は,約4割に達する,家庭内が男女平等であると感じている家庭でも変わりがない(第1-序-20図)。

第1-序-20図 家庭生活において男女の地位は平等と思うか別ウインドウで開きます
第1-序-20図 家庭生活において男女の地位は平等と思うか

このように,固定的性別役割分担が家庭内で行われていることがうかがわれ,こうした状況が,諸制度の充実等に比べ男女共同参画のあゆみが緩やかなものとなっている要因の一つであると思われる。

(「夫は外で働き妻は家庭を守る」という意識の変化)

「夫は外で働き,妻は家庭を守る」という考え方についてみると,昭和47年では男女ともに賛成が8割を超えていた(第1-序-21図)。

第1-序-21図 家庭内の役割分担意識の変化(男女別)別ウインドウで開きます
第1-序-21図 家庭内の役割分担意識の変化(男女別)

世代別・男女別にみてもこの考えに賛成する傾向に大差はなく,反対という意見が最も多かった20歳代でも賛成が男女ともに78%に達していた。約30年後の平成14年では,男性の42.1%,女性の51.1%がこの考え方に反対しており,昭和47年と比較すれば反対する割合は大幅に増加している。しかし一方で,依然として男性の51.3%,女性の43.3%がこの考え方に賛成しており,男女ともに反対と賛成の割合がほぼ拮抗する状況となっている。性別にみれば男性より女性の方が反対する割合が高く,世代別で最も反対が多かったのは男性では20歳代,女性では30歳代で,最も少なかったのは男女とも70歳以上であった。世代別にみた特徴としては,男性より女性の方が世代間の考え方により大きな隔たりがある点が挙げられる。特に20歳代,30歳代の女性で反対という考えが多く,「妻は家庭を守るべき」という考えに比較的賛成意見の多い高齢者層とは明らかに違う意見をもっている(第1-序-22表)。

第1-序-22表 家庭内の役割分担意識の変化(性別・年齢階級別)別ウインドウで開きます
第1-序-22表 家庭内の役割分担意識の変化(性別・年齢階級別)

しかし,この20歳代,30歳代の女性でも,結婚後は自分自身のことよりも夫や子どもなど家族を中心に考えて生活した方がよいと考える人が半数近くおり,平成4年と比較すると,この10年間での変化は,他の男女別世代別と比べてかなり小さい。完全に家庭に入ってしまうことは否定しつつも,結婚後は家庭が優先すると考える女性が,現在の若年層にも多いことがうかがわれる。この考え方が,結婚後出産を契機に仕事を辞めてしまう女性が多い意識的背景の一つと考えられる(第1-序-23表)。

第1-序-23表 家庭内の役割分担意識の変化(家庭における妻のあり方)(性別・年齢階級別)別ウインドウで開きます
第1-序-23表 家庭内の役割分担意識の変化(家庭における妻のあり方)(性別・年齢階級別)

(男女間の就労理由の違い)

男女別に就労理由をみると,男性が最も多く挙げているのは生計維持である。一方,女性がこの理由を挙げる割合は男性に比べて低く,自分自身の経済的・精神的満足感を得るために働くという考え方が男性より多い。常勤で働く女性でも,就労理由を「生計維持のため」とする割合は男性に比べかなり少なくなっており,現在でも,男性が生計維持を自分の役割と考える傾向にある一方で,女性は自らの収入を,生計を維持するための補助的収入と考える傾向がある状況がうかがわれる。男女ともに「夫は外で働き,妻は家庭を守る」という意識をもっていることが就労理由の差にも現れている。(第1-序-24図)

第1-序-24図 家庭内の役割分担意識の変化(家庭における妻のあり方)(性別・年齢階級別)別ウインドウで開きます
第1-序-24図 家庭内の役割分担意識の変化(家庭における妻のあり方)(性別・年齢階級別)

平成4年から14年までの10年間での就労理由の変化をみると,女性の就労理由は,経済情勢の悪化に伴って生計維持を選ぶ比率が多少増えたものの,その他の理由を選ぶ比率にはそれほど変化がない。しかし男性の就労理由では,生計を維持するため以外のほとんどの理由が減少傾向にあり,特に「働くことが当然だから」とする回答が急激に減少している。男性は厳しい経済情勢を背景として,以前より強く,家族を支えなければならないという「義務感」を意識しているため,就労に経済的意義以外の意義を感じる余裕を失っているのではないかとも考えられる。また,この意識の裏返しが妻の就労を希望する男性の増加にもつながっていると言えよう。

2 ライフステージと人生の出来事

前述のように女性の就労を肯定的にとらえる意識は増えているものの,女性の就労スタイル,家事・育児の分担状況など実際の行動には意識との乖離があり,依然として固定的性別役割分担に縛られている行動がうかがわれるところである。こうした男女共同参画社会への過渡期にある現在の状況を,ライフステージにおける選択という観点から検討する。

(1)家族の変貌

(少子化の進行と世帯規模の縮小)

合計特殊出生率の推移により少子化の状況をみると,昭和50年以降ほぼ一貫して低下しており,平成14年には1.32となった(第1-序-25図)。

第1-序-25図 平均世帯人員と合計特殊出生率別ウインドウで開きます
第1-序-25図 平均世帯人員と合計特殊出生率

出生率低下の主な要因としては,晩婚化・非婚化が挙げられる。日本においては,子どものほとんどは婚姻関係に基づくものであり,晩婚化・非婚化の進展はそのままに少子化につながるものとなっている。また,最近では夫婦の出生力の低下も指摘されており,国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(14年1月推計)」によれば,夫婦の完結出生児数(一生涯に持つ平均的な子どもの数)は中位1.72人,低位1.49人と推計されているが,これは平成9年1月推計(中位1.96人,低位1.76人)よりも低いものとなっている。

少子化の進行や高齢者の同居率の低下を背景に,近年は更に世帯人員が減少し,家族構成も変化している。昭和50年に約4割を占めていた「夫婦と未婚の子のみの世帯」が平成14年には約3割に減少する一方,「夫婦のみの世帯」や「単独世帯」が増加している(第1-序-26図)。

第1-序-26図 世帯構造別構成割合の年次推移別ウインドウで開きます
第1-序-26図 世帯構造別構成割合の年次推移

(家庭の役割)

世帯規模の縮小による家庭内労働の担い手の減少や女性の社会進出を背景に,家庭内労働の外部化・省力化の必要性が高まったことを受け,外食産業など家事の外部化に関するサービスが広がり,育児や介護などの社会保障制度も充実してきている。従来家庭内で担われてきた家事・育児・介護といった機能の外部化が進む中で,家族の持つ情緒面での機能が重視されている。「あなたにとって家庭はどのような意味を持っていますか」という問いに対し,「家族の団らんの場」を挙げた者の割合が最も多く,「休息・やすらぎの場」,「家族の絆(きずな)を強める場」が続いている。また,「家族の絆(きずな)を強める場」,「夫婦の愛情をはぐくむ場」といった家族の特別なつながりを重視する項目は,過去3年間一貫して増加している(第1-序-27図)。

第1-序-27図 家庭の役割別ウインドウで開きます
第1-序-27図 家庭の役割

(コラム:家電製品などの普及で進む家事時間の短縮)

(2)ライフサイクルの変化

世帯規模の縮小や家庭の役割の変化の中での女性のライフサイクルの変化をみるため,男女共同参画社会の形成の草創期と現在の女性のライフサイクルを比較する。昭和50年に結婚した女性と平成14年に結婚した女性のモデルをそれぞれ20歳の時の平均余命を寿命として設定する(第1-序-30図)。

第1-序-30図 女性のライフサイクルモデルの比較別ウインドウで開きます
第1-序-30図 女性のライフサイクルモデルの比較

これによると,男女とも長寿化が進展しており,女性は7.7年,男性は5.6年と女性の寿命の伸長が著しい。また,高学歴化や結婚観の変化等により晩婚化が進んでいる。このため男女ともライフサイクルは伸びており,それぞれのライフステージにおける人生の出来事は総じて遅くなっている。

一方,晩婚化が進んでいるものの,それ以上に長寿化が進んでいることから,人生に占める有配偶期間は46年から50年へと増加している。結婚から子どもの出産期間はほとんど変化しておらず,末子の小学校入学後の人生は,女性で43年から48年へ,男性で36年から40年へと増加している。

このようにライフサイクルが変化し,多様な選択が可能になってきている現在,いかなる人生を送るのかを主体的に考えることがますます重要となってきている。人生の節目となる大きな出来事を人生の経過に沿って概観する。

(3)進学

社会に出る前段階である教育期に,どのような教育を受けたかはその後の職業選択などの進路選択に大きな影響を与える。平成15年の高等教育への入学者状況を男女別にみると,全体で男性は約53.5万人,女性は約53.2万人と男女ほぼ同数となっている。これを学校種類別にみると,短期大学を除く大学では女性は男性より約11万人少なくなっている一方,短期大学(本科)では約8.6万人,専修学校(専門課程)では約2.8万人多くなっている。また,大学の学部学生数についてみると,女性は男性に比べて人文科学を専攻する者の割合が格段に高く,逆に工学・理学を専攻する者の割合は男性に比べて低い。また,女性の社会科学専攻者の割合は約3割を占めているが,男性の4割強と比較すると低くなっている(第1-序-31図)。

第1-序-31図 高等教育入学者の男女別状況別ウインドウで開きます
第1-序-31図 高等教育入学者の男女別状況

(4)就業

(就職)

学校卒業後,就職を契機に社会に出ることになるが,企業の新卒採用抑制姿勢を受けて若年層の就職環境は悪化しており,失業率は昭和50年ごろから大きく上昇している(第1-序-32図)。

第1-序-32図 年齢階級別完全失業率の年次推移別ウインドウで開きます
第1-序-32図 年齢階級別完全失業率の年次推移

就職内定率を男女別にみると,大学卒,高校卒ともに女性は男性に比べて低くなっており,依然として就職活動において女子学生は男子学生よりも不利な立場に立たされることが多いことがうかがわれる(第1-序-33図)。

第1-序-33図 就職内定率の推移別ウインドウで開きます
第1-序-33図 就職内定率の推移

また,女子学生は男子学生よりもパートタイム労働に流れることが多い。新規学卒入職者に占めるパートタイム労働者の割合は男女ともに総じて上昇傾向にあるが,女性は男性よりも高い傾向がある(第1-序-34図)。

第1-序-34図 新規学卒入職者に占めるパートタイム労働者の割合の推移別ウインドウで開きます
第1-序-34図 新規学卒入職者に占めるパートタイム労働者の割合の推移

そこで,若年女性雇用者数の推移を就業形態別にみると,正規雇用者は平成3年ごろまでは増加傾向にあったが,その後の景気の低迷と企業の雇用管理の変化の中で伸びが鈍くなっており,9年以降は減少が続いている。かわって増加しているのが正規雇用に比べて労働条件が不利であることの多い非正規雇用で,14年の非正規の若年女性雇用者数は,昭和60年時に比べておよそ2.8倍になっている(第1-序-35図)。

第1-序-35図 就業形態別若年女性雇用者数の推移別ウインドウで開きます
第1-序-35図 就業形態別若年女性雇用者数の推移

このような状況を反映してか,女性の資格志向は高まっており,医師や弁護士といった資格職を職業として選択する女性は近年着実に増加している(第1-序-36図)。

第1-序-36図 各種資格職従事者に占める女性割合の推移別ウインドウで開きます
第1-序-36図 各種資格職従事者に占める女性割合の推移

(なお低い女性の管理的職業従事者)

職業別に男女の割合を昭和50年と平成15年で比較すると,管理的職業従事者に占める女性割合は,5.3%から9.7%へ増加したもののその低さは変わっていない一方で,事務従事者に占める女性割合は上昇している。事務従事者には,いわゆる一般職など補助事務従事者も多いとみられ,女性の登用は全体としてはいまだ低調であることがうかがわれる(第1-序-37図)。

第1-序-37図 職業別男女割合別ウインドウで開きます
第1-序-37図 職業別男女割合

なお,専門的・技術的職業従事者は男女差が小さくなっているが,これは看護師や保育士など,従来いわゆる女性向きの仕事とされている職業のほとんどが女性で占められていることによるもので,個々の職業別にみると男女差が大きいものが多い。

(5)結婚

(未婚化,晩婚化)

就職に続くライフイベントの一つに結婚がある。結婚については,結婚するかしないか,結婚するとしていつ結婚するかという選択があるが,結婚をめぐる変化として未婚化・晩婚化がある。年齢階級別に未婚率の推移をみると,女性は20歳代後半,男性は30歳代前半の未婚率の上昇が著しい。また,男性は女性に比べ,幅広い年齢層で大きく未婚率が上昇しており,30歳代後半以降は同年代の男女の未婚率の差が大きくなっている(第1-序-38図)。

第1-序-38図 年齢階級別未婚率の推移別ウインドウで開きます
第1-序-38図 年齢階級別未婚率の推移

50歳時の未婚率である生涯未婚率も上昇しているが,特に男性は上昇が著しく平成12年では12.3%(女性5.6%)となっている。

平均初婚年齢も上昇が続いており,平成14年の平均初婚年齢は男性が29.1歳,女性が27.4歳となっている。未婚者が独身にとどまっている理由は,男女ともに「適当な相手にめぐり会わない」が最も多いが減少傾向にある。「必要性を感じない」「自由や気楽さを失いたくない」といった理由も多く,特に結婚の必要性を感じないとする男性は一貫して増加している。結婚することへの周囲の圧力が弱まり,独身であることが社会的に不利であると感じなくなってきていること,特に男性については家事の外部化・サービス化の進展などを背景に,生活の面でも独身の不都合を感じなくなってきていることが,結婚を急がないもしくは結婚しないという選択へとつながっていると考えられる。また,「結婚資金が足りない」も男性で高くなっており,男性は女性よりも結婚に対する経済的責任を重く感じていると言える(第1-序-39図)。

第1-序-39図 独身にとどまっている理由別ウインドウで開きます
第1-序-39図 独身にとどまっている理由

(離婚)

人生のいずれかの段階で離婚という選択をする場合もある。離婚件数及び離婚率は,昭和60年代に一時減少したものの,平成2年以降は増加し続け,14年には過去最高となった(第1-序-41図)。

第1-序-41図 離婚件数と離婚率の推移別ウインドウで開きます
第1-序-41図 離婚件数と離婚率の推移

家庭に入っていた女性が離婚後に就職しようとする場合,就業継続による技能が形成されていないなどの理由から不利な条件の下で労働市場に直面せざるを得ず,好条件の雇用機会を得るのは難しい場合が多い。特に,母子世帯の場合,子育てと生計の担い手という二重の役割を担うことになるが,子どもへの保育サービスの確保や就職・再就職には困難を伴うことも多い。厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成14年)によると,母子世帯の1世帯当たりの平均所得金額は243.5万円であり,全世帯の平均所得金額である602.0万円の約4割となっており,経済的に非常に厳しい状況となっている。

(6)出産・子育て

(両立か就業中断か)

平均初婚年齢は上昇したものの,夫婦が結婚してから第1子が生まれるまでの平均期間は平成14年は1.92年で昭和50年の1.55年から余り変わっていない。結婚や出産後,女性は就業をどうするかについての選択を迫られることが多い。国立社会保障・人口問題研究所「第12回出生動向基本調査(夫婦調査)」(平成14年)によると,結婚前就業していた妻について,結婚5年未満で子を持ちながら就業するケースは全体の2割弱で,正規雇用に限ると約1割となっている。また,結婚5年未満で子を持つ妻の就業状態は専業主婦が格段に高く,子が小さいうちは就業を継続せず専業主婦となっているケースが多いと推測される。意識面では「子どもができてもずっと職業を続けるのがよい」という方向へ変化してきているものの,現実には仕事と子育ての両立が困難であることがうかがえる。一方,結婚後10~14年では子を持つ就業者が専業主婦を上回っており,子育てが一段落ついた段階で再度就業を選択するケースが多いことが推測される(第1-序-42表)。

第1-序-42表 結婚持続期間別にみた,妻の就業状態および子どもの有無の構成別ウインドウで開きます
第1-序-42表 結婚持続期間別にみた,妻の就業状態および子どもの有無の構成

また,第1子出産前後の母の就業状態に着目すると,出産1年前に働いていた母の約7割が仕事を辞めて無職となっている(第1-序-43図)。

第1-序-43図 母(子1人)の出産1年前と現在の就業状況別ウインドウで開きます
第1-序-43図 母(子1人)の出産1年前と現在の就業状況

就業を希望しつつも仕事を探していない母親について,年齢別に仕事を探していない理由をみると,若い世代においては圧倒的に「育児のため」が多いのに対し,子が大きくなり育児負担が少なくなってくる40歳代後半になると,「適当な仕事がありそうにない」が最も多くなっている(第1-序-44図)。

第1-序-44図 母の年齢階級別にみた仕事を探していない理由別ウインドウで開きます
第1-序-44図 母の年齢階級別にみた仕事を探していない理由

(コラム:家事・育児への協力は結婚相手の重要な条件)

(妻に偏る家事・育児負担)

妻が育児のために就業を中断する背景として,共働き世帯においても相変わらず妻に家事・育児負担が偏っていることが挙げられる。妻の就業の有無にかかわらず夫が家事や育児などにかける時間は妻と比べて著しく短く,男性は共働きであるか否かで生活実態はほぼ変わらないものの,女性は共働きの場合は仕事をしながら家事や育児も担い,余暇時間が少なくなってしまっている(第1-序-45図)。

第1-序-45図 夫婦の生活時間別ウインドウで開きます
第1-序-45図 夫婦の生活時間

妻に家事や育児の負担が偏ってしまうのは,固定的性別役割分担意識がいまだ根強いということもあるが,男性が仕事に忙しく家事・育児を行う余裕がないということもその要因として挙げられる。就業時間を男女別にみると,男性は長時間就業者の割合が上昇しており,中でも低年齢の子がいる場合が多いと思われる若い世代の所定外労働時間が長くなっている。また,女性は短時間就業者の割合が上昇する一方で,長時間就業者割合も増加している(第1-序-46図,第1-序-47図)。

第1-序-46図 男性の年齢階級別労働時間数別ウインドウで開きます
第1-序-46図 男性の年齢階級別労働時間数

第1-序-47図 週間就業時間別雇用者数の構成比別ウインドウで開きます
第1-序-47図 週間就業時間別雇用者数の構成比

(育児休業の取得)

厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成14年度)によると,平成14年度の男性の育児休業取得率は0.33%と極めて低い。これに対し女性の育児休業取得率は64.0%となっている。父親が育児休業を取得しなかった理由を男女別にみると,男女ともに「父親が仕事の都合がつかなかった」が最も多くなっており,「父親の給料が入らないと経済的に困るから」「父親が休む必要がなかった」も男女ともに高くなっている。また,「父親がひとりで育児はできない・したくない」とする女性は3割弱となっている(第1-序-50図)。

第1-序-50図 父親が育児休業を取得しなかった理由別ウインドウで開きます
第1-序-50図 父親が育児休業を取得しなかった理由

しかし,今後子どもが生まれた場合,夫に育児休業取得を希望する者も過半数を占めている(ニッセイ基礎研究所「男性の育児休業取得に関する調査(個人調査)」(2002年))。

(仕事と子育ての関係)

就学前の子どもがいる男女について,仕事と子育ての関係について思うことをみると,男性は「子供ができて仕事をするはりあいができた」が最も高く,育児を経済面から支えているとの自負がみえる。女性は「仕事と育児で生活にめりはりができた」が最も高いが,「子育てをしているために仕事が十分にできない」も男性に比べて格段に高く,育児負担が女性に偏っていることをうかがわせる。一方で「子育ての経験が仕事に役立つことがある」「仕事をすることが子育てに好影響を与えている」も女性が多く,仕事と子育てが相互に好影響を与えていると思っている女性も多い(第1-序-51図)。

第1-序-51図 仕事と子育ての関係について思うこと別ウインドウで開きます
第1-序-51図 仕事と子育ての関係について思うこと

(コラム:子どもは女子が好まれる)

子育てについて「楽しいと感じることと辛いと感じることが同じくらい」「辛いと感じることの方が多い」と感じている人の子育ての辛さの内容をみると,「子どもの将来の教育にお金がかかること」が最も多い(第1-序-52図)。

第1-序-52図 子育ての辛さ別ウインドウで開きます
第1-序-52図 子育ての辛さ

子どもの教育費については,子どもの進学とともに増加していき,特に大学4年間の負担は重いものとなっている(第1-序-53図)。

第1-序-53図 子ども1人当たりの教育費別ウインドウで開きます
第1-序-53図 子ども1人当たりの教育費

子育ての辛さの内容を男女別にみると,経済的負担に関する項目は男性が多く,肉体的・時間的負担,仕事との両立の困難,周囲の理解の不十分に関する項目は女性が多くなっており,男性は主に子育てを経済面から支え,実際に子どもに接して子育てを行っているのは女性が中心となっていることを反映していると言える。

(7)再就職

(再就職)

出産・子育てなどが一段落ついた段階で就業する場合,パートタイムでの再就職が多くなっている。年齢階級別に女性の入職時の就業形態をみると,新規学卒者が多い20歳代ではパートタイムは全体の3割程度であるが,いったん家庭に入ってから就職する層が多いと思われる30歳代後半はパートタイムが大半となっている(第1-序-54図)。

第1-序-54図 年齢階級別女性の入職形態別ウインドウで開きます
第1-序-54図 年齢階級別女性の入職形態

厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査」(平成13年)によると,パートタイム労働者がパートタイムとしての働き方を選んだ理由として「家事・育児の事情で正社員として働けないから」を挙げた者の割合は,男性が0.1%であるのに対し,女性は18.3%に上る。また,パートタイム労働者の賃金水準は一般労働者よりも低く,女性のパートタイム労働者のうち,主に自分の収入で生活している者は2割に満たない。主たる生計の維持を配偶者などにゆだね,家事や育児を担当しながらパートタイムとして働いている女性の状況がうかがえる。

(家計における妻の収入)

既にみたように,女性が働き続けることを肯定する意識が男女ともに強まってきており,共働き世帯も増加してきているが,妻の収入は補助的なものにとどまっている。核家族共働き世帯の家計の収入の推移をみると,妻の収入により,夫のみが働いている世帯の収入を上回っているが,妻の収入が夫の収入の3割強である状態はこの10年で変わっていない(第1-序-55図)。

第1-序-55図 核家族共働き世帯における夫婦の収入別ウインドウで開きます
第1-序-55図 核家族共働き世帯における夫婦の収入

(8)退職

(退職後の夫婦)

平均寿命が延びた結果,定年後に夫婦で過ごす期間を昭和50年と平成14年で比べると,13.3年から18.9年へと大幅に延びている。この期間は夫婦関係が基本となってくるが,内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」(平成14年)により高齢者夫婦の意識をみると,「心配ごとや悩みごとの相談相手」や「介護を頼む相手」について,男性は「配偶者」と答えた者の割合が最も多かったのに対し,女性は「子ども」と答えた者の割合が高くなっており,退職後に男性は女性に比べて配偶者を頼る傾向が強いことがうかがえる。

また,女性は男性より平均寿命が長く,配偶者の死亡後に一人で暮らす割合が高くなっており,65歳以上の者の家族形態を男女別にみると,一人暮らしの割合は女性が19.3%,男性が7.4%と,女性は男性の2倍以上に上っている(第1-序-56図)。

第1-序-56図 男女別,65歳以上の者の家族形態別ウインドウで開きます
第1-序-56図 男女別,65歳以上の者の家族形態

高齢単身世帯においては,男女ともに収入に占める公的年金の割合は高くなっているが,女性の受給額は男性より少ないことから支出に対する不足額は大きくなっている(第1-序-57図)。

第1-序-57図 高齢無職単身世帯の収支別ウインドウで開きます
第1-序-57図 高齢無職単身世帯の収支

(9)生涯設計

女性の平均寿命が85歳を上回り,男性も80歳に近づくなど長寿化が進展しており,生涯設計を考える重要性は増している。各ライフステージの出来事を踏まえ,夫婦と子ども2人の世帯を設定して,妻が出産後退職し,末子が小学校に入学した時にパートタイムで再就職した場合における生涯にわたる収入と支出を試算して,家計からみた人生設計において考慮すべきポイントを検討する(第1-序-58図)。

第1-序-58図 モデル世帯の生涯収支別ウインドウで開きます
第1-序-58図 モデル世帯の生涯収支

もちろんこれは,現在の賃金構造,社会保険制度や家計の支出構造等を前提にした,一つの世帯のあり得るパターンの一つを試算しているにすぎず,この試算をもって一般化することはできないが,世帯の生涯設計を考える際の材料の一つを提供するという意義はあると考えられる。

(生涯可処分所得)

試算は最近の平均値・最頻値などを用いたライフサイクルに基づいて設定している。女性は大学卒業後22歳で就職し,27歳で29歳の大学卒の男性と結婚する。29歳で第1子を出産し,同時に退職する。2年後の31歳で第2子を出産する。第2子が小学校に入学した38歳の時に所得税がかからず配偶者控除が受けられる100万円の年間収入でパートタイム就業を開始する。夫の収入は,学歴別・年齢別の賃金及び賞与から各種控除を勘案して算出した社会保険料,所得税及び住民税を差し引いて各年齢別の可処分所得を求めている。女性が58歳の時,夫が60歳で定年退職し,同時にパートタイム勤務も辞めるものとする。以降は厚生年金のみの収入とし,女性が76歳の時に夫が死亡し,女性は遺族年金を受給し,87歳で死亡するとしたものである。試算による世帯の可処分所得は約3億3,300万円であり,うち女性の収入分は約6,900万円となっている。

(生涯支出)

支出の経年的な変化を追ったものではなく,各ステージに対応した世帯の支出を累計したものである。生涯における支出の変動要因の大きなものとしては,子どもの教育費と住宅取得費が挙げられる。子ども1人の大学卒業までにかかる教育関係費は,子どもが1人増えれば比例して増加する経費であり,子どもの年齢差が小さければ親の中年期に短期に集中してかかり家計を圧迫することになる。また,住宅取得費も住宅ローンにより長期に家計に重くのしかかる経費となっている。ここでは,2人の子どもの教育費は,それぞれが私立幼稚園2年保育から公立小学校,公立中学校,私立高校,私立大学まで進むものとして,私立については前述の子ども1人当たりの教育費を算入して試算した。また,夫が40歳の時に住宅を取得すると仮定し,住宅ローン返済も支出に含めた。こうして試算した家計支出は約3億900万円となっている。

(生涯収支)

生涯収支は約2,400万円の黒字となる。もちろんこれは仮定に基づく試算であり,一応の目安の数値ではあるが,妻のパートタイム勤務の収入分が無ければ生涯収支の黒字分の大半は無くなり,家計には厳しい状況となっている。

各年の収支をみると,子どもが高校・大学在学中の女性の40歳代後半と年金受給を開始してしばらくの60歳代から70歳代前半には家計収支は赤字となっている。しかしこれは各年の動きをみたものであり,実際はそれまでの貯蓄などがあるため累積値でみる必要がある。累積黒字額(累積可処分所得-累積支出)の累積可処分所得に対する比率で余裕度をみると,結婚後急上昇した後,30歳代後半までは30%弱で推移しているが,住宅取得時に急落し,子どもが大学を卒業するまで下落を続け,その後ほぼ横ばいで推移した後,夫の退職時に一時的に急上昇し,その後は生涯を通じなだらかに低下を続けている(第1-序-59図)。

第1-序-59図 ライフサイクルの余裕曲線別ウインドウで開きます
第1-序-59図 ライフサイクルの余裕曲線

これまでみてきたように,この試算においては生涯における家計収入の大半は夫の勤労収入であり,妻の勤労収入は補助的なものにとどまっているが,生涯の収支は若干の黒字であり,家計からは生涯の設計は成り立っている。しかし,夫の賃金が現在の年功序列的な賃金構造からの積み上げであることや社会保険料等を現行の制度を前提として試算していることから,試算上の生涯収入は今後必ずしも十分に期待できる収入とはなっていない。また,最近の厳しい経済情勢,社会の変化の激しさなどを踏まえると,失業,転職,離職等の収入面でのリスクがあり,女性の働き方の変化と相まって,今後,家計収入に占める女性の収入の割合が高まると見込まれる。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019