平成16年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 序説 第2節 地域社会における男女共同参画の進展

地域においても,男女共同参画推進体制の整備,政策・方針決定過程への女性の参画の拡大など,男女共同参画社会に向けてのあゆみは着実に進展している。また,女性は従来地域活動の主たる担い手となってきたが,近年はNPO活動やボランティアへの積極的な参加がみられ,女性の活躍は「地域社会」の活性化の大きな力となっている。

(地方行政における男女共同参画体制の充実)

国が昭和50年に国内本部機構を設置し,52年には「国内行動計画」を策定したことを契機に,地方公共団体においても女性に関する施策を所管する部署や首長の諮問機関の設置が始まり,以後,女性に関する行政を推進する体制が作られてきた。その後,平成11年の男女共同参画社会基本法の制定に伴い,男女共同参画に関する施策を所管する体制となっている。

平成15年4月現在での地方自治体における体制の整備状況は,全都道府県・政令指定都市に男女共同参画・女性問題に関する専管課(室)や諮問機関が設置され,その他の市区町村における各自治体内の行政連絡会議の設置割合は26.1%,諮問会議の設置割合は25.4%となっている。

また,男女共同参画に係る計画の策定も着実に進んでいる。平成15年4月現在では全都道府県で策定されているほか,男女共同参画社会基本法で計画策定が努力義務とされている市区町村においても,28.8%に当たる924市区町村で計画が策定済みである(第1-序-11図)。

第1-序-11図 市区町村における男女共同参画計画の策定率の推移別ウインドウで開きます
第1-序-11図 市区町村における男女共同参画計画の策定率の推移

この計画策定に基づき各自治体の審議会等への女性委員の登用も進み,平成5年に11.7%であった都道府県・政令指定都市の審議会等委員に占める女性比率は,10年後の15年には26.2%となった。現在では,審議会等委員への女性の登用方策の一つとして,地域の女性を対象とした各種講座などの人材育成事業を実施している自治体も多く,15年4月現在で35都道府県・1政令指定都市において同事業が行われている。また,39都道府県・10政令指定都市では審議会委員の公募を行っており,女性委員の登用を促進する重要な方策の一つとなっている。

各自治体による地域住民の男女共同参画社会への理解を深めるための各種施策も活発に行われており,各地に出かけて啓発活動を行う出前講座や地域の推進員・リーダーの養成が広く行われている。また,男女共同参画センター等の総合的施設が40都道府県・12政令指定都市に開設されており,男女共同参画に関する広報啓発事業の実施,女性の起業支援・再就職支援などのセミナーの開催や各種相談事業の実施など,幅広い活動を行っている。

(コラム:地方自治体自らがモデル職場となり推進する男女共同参画)

(地方における政策・方針決定過程への女性の参画)

地方における政策・方針決定過程への女性の参画も進展している。地方議会における女性議員割合の推移をみると,昭和50年代は,都道府県議会については1%強,市議会については2%台,町村議会については1%にも満たなかったが,その後着実に増加し続け,平成15年末現在では,都道府県議会は6.9%,市議会は11.9%,町村議会では5.6%まで伸びている。また,特別区議会については,昭和50年代当時も女性議員割合は6~7%台と他に比べて高かったが,平成15年末現在は21.5%にまで達している。

また,前述のとおり審議会等委員への女性の登用が進められているほか,女性地方公務員の採用・登用の拡大のための取組も推進されている。

(地域社会における女性の活躍)

近年,国民の価値観の多様化等により,行政サービスや企業活動のみでは対応できない様々なニーズが生まれ,各種住民活動が盛んになってきている。特に,NPOなどの市民活動団体の活動内容は非常に多様で,高齢者への給食サービスや障害者の外出サポートサービスなどの福祉分野から,まちづくりや地域安全活動などの地域全体にかかわる活動,また,人権の擁護や平和の推進,男女共同参画社会の推進などの住民意識の向上を目的として活動している団体もある。平成10年には,特定非営利活動促進法(NPO法)が制定され,これらの活動を行う団体が法人格を有することができるようになり,法人格を有することで社会的信用も一層増し,活動の幅も更に広がっている。法制定後1年を経過した11年12月に1,176であったNPO法人数もその後急激に増加し,15年12月末日現在,1万4,657に上っている。

これらの活動の担い手についてみると,財政的には必ずしも十分ではない中で,女性が活動の中核になっていることが分かる。内閣府委託調査「市民活動団体等基本調査」(平成13年4月)では,約8万8,000の市民活動団体から抽出した4,000団体強の活動内容等について分析を行っている。この調査によれば,活動開始時期が昭和45年以前の団体もある一方で,1980年代に活動を開始した団体が調査対象全体の約25%,1990年代が約40%となっており,この20年間に活動を開始した団体が多くなっている。財政規模をみると,年間支出が30万円未満の団体が全体の半数に上り,無給の非常勤スタッフだけで事務局を運営している団体が6割を超えている。女性の事務局スタッフが多い団体は5割強に上る(第1-序-12図)。

第1-序-12図 市民活動団体における事務局スタッフの性別別ウインドウで開きます
第1-序-12図 市民活動団体における事務局スタッフの性別

スタッフの担い手については,主婦などの家事従事者が全団体の48.5%,年金生活者・定年退職者が31.4%となっている。

ボランティアの場においても,女性は主たる担い手として活躍している。(社福)全国社会福祉協議会「全国ボランティア活動者実態調査」(平成13年)によると,ボランティア活動者の職業は「仕事をもっていない主婦」が最も多い(38.1%)。

さらに,女性のNPO活動や地域活動が起業に転化する事例が増えてきており,福祉,子育てや地域づくりなどに女性が主体となって活躍し,貢献している好事例が注目される。

(コラム:女性の自立と社会参画を支援するNPO法人(京都府宇治市))

(コラム:地元の食べ物のおいしさを広く知ってもらう(愛媛県内子町))

(コラム:自らの育児経験が起業につながった(福岡県福岡市))

起業,地域活動等にチャレンジする女性を支援する取組も進められており,平成15年4月の男女共同参画会議及び同年6月の男女共同参画推進本部においては,「女性のチャレンジ支援策」が決定され,関係機関が提供している情報のワンストップ・サービス化,事例紹介によるロールモデル形成など,地域の実情に応じた女性のチャレンジ支援策が進められている。

今後は,地方分権等が進む中,住民が自主的に取り組む地域コミュニティの活動がより重要になると考えられ,女性だけでなく男性も含めて,一人一人の個性と能力を地域の場で発揮することが求められている。

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