平成16年版男女共同参画白書

本編 > 第1部 > 序説 第1節 法律・制度の充実と男女共同参画の進展

男女共同参画を推進するための国内本部機構や法律,男女の雇用機会均等や仕事と家庭の両立に関する制度などの基本的枠組みが,国連を中心とした国際的な取組の動きと連動して,どのように整えられてきたのかを振り返る。あわせて雇用分野等での男女共同参画推進のための具体的な取組について整理・検討する。

1 男女共同参画を推進するための国内外の取組

(1)男女共同参画社会形成の草創期の社会的背景

昭和40年代後半から50年代に日本ではサービス経済化が進み,女性の働く場が広がり始め(第1-序-1図),女性雇用者の有配偶化も進んだ。有配偶の女性雇用者の割合の推移をみると,40年代後半に大幅に増加している。特に45年から50年までの5年間で約10ポイント増加している(第1-序-2図)。

第1-序-1図 雇用者総数及び短時間雇用者総数に占める女性の割合とGDPの推移別ウインドウで開きます
第1-序-1図 雇用者総数及び短時間雇用者総数に占める女性の割合とGDPの推移

第1-序-2図 女性雇用者の配偶関係別構成比の推移別ウインドウで開きます
第1-序-2図 女性雇用者の配偶関係別構成比の推移

また,経済の発展とともに家計が豊かになる一方,少子化が次第に進行するとともに家事の電化が進む中,女性たちは家事に専念するだけではなく家庭外にも目を向け始め,様々な社会活動に参加することや,自分の能力を高めるための自己啓発活動などに関心を持つようになり,カルチャーセンター等も出現した(第1-序-3図)。

第1-序-3図 個人教授所数と増加率の推移別ウインドウで開きます
第1-序-3図 個人教授所数と増加率の推移

こうした社会状況の変化の中で,海外の女性権利拡大運動の影響もあって,日本の女性が社会の中で置かれている立場に対して疑問を呈する声が次第に高まり,日本における男女平等を求める大きな流れとなった。それを加速させたのが,「国際婦人年」に始まる男女平等を求める世界的潮流である。

(2)国連等の動きに対応した国内本部機構を中心とした取組

昭和50年(1975年)の「第1回世界女性会議」の開催以来,国連による世界女性会議は4回開催されているが,そのほかにも,採択事項,宣言事項の検討など,様々な活動が行われてきた。また,ILO(国際労働機関)やUNESCO(国連教育科学文化機関)などの国連機関及びOECD(経済協力開発機構)やEU(欧州連合)などの国際機関でも,男女共同参画を推進するための取組が行われ,各国内の取組に大きな影響を与えてきた。

日本も積極的にこれら国際的な活動に参加し,会議での議論や採択事項に対応した形で,男女共同参画を推進するための国内本部機構の構築・充実,様々な法律の整備や制度の充実などを進めてきた(第1-序-4図)。

第1-序-4図 世界女性会議での決定事項に対応した日本の取組別ウインドウで開きます
第1-序-4図 世界女性会議での決定事項に対応した日本の取組

以下では,世界女性会議を中心とした国際的な活動とその動きに対応した日本での男女共同参画社会の形成のための取組を振り返ってみる(第1-序-5表)。

第1-序-5表 国連及び日本の男女共同参画に関する取組別ウインドウで開きます
第1-序-5表 国連及び日本の男女共同参画に関する取組

(第1回世界女性会議(メキシコシティ)後)

昭和47年(1972年)の第27回国連総会において,女性の地位向上のための世界的規模の行動を行うべきことが提唱され,これを受けて,50年(1975年)にメキシコシティで「国際婦人年世界会議」が開催された。この会議において,平等,発展,平和への女性の寄与に関する宣言が行われ(メキシコ宣言),それを具体化するための指針である「世界行動計画」が採択された。メキシコでの世界会議後,第30回国連総会において,1976年から1985年を「国連婦人の十年-平等・発展・平和」とすることが宣言された。

これを受けた日本の取組として,「国際婦人年世界会議」終了後,政府は直ちに閣議決定により,国内本部機構として内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部を設置した。同本部は,昭和52年(1977年)に女性の地位向上に関する初めての総合的な計画である「国内行動計画」を策定した。

(第2回世界女性会議(コペンハーゲン)後)

昭和55年(1980年)にコペンハーゲンにおいて「『国連婦人の十年』中間年世界会議」が開催され,「国連婦人の十年」の前半期の成果の検討と後半5年間に優先して取るべき行動の指針を決定した。同会議では,「雇用・健康・教育」を中心に十年の後半期において特に配慮すべき優先的分野について各国政府,国際機関が取るべき行動が示され,「国連婦人の十年後半期行動プログラム」が採択された。また,同会議において「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「女子差別撤廃条約」という)の署名式が行われ,日本も条約に署名した。

日本では,「国連婦人の十年後半期行動プログラム」に対応し,「国内行動計画後期重点目標」を本部決定した。その中では,女子差別撤廃条約の批准に向けて国内法制等諸条件の整備を行うことを重点課題として盛り込み,同条約批准のための条件整備を開始した(日本は昭和60年(1985年)に同条約を批准)。

昭和59年(1984年)には「国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律」が公布され,翌年から施行された。主な改正点は,父母両系血統主義の採用,日本国民の配偶者の帰化条件を夫も妻も同一にしたことである。

また,昭和60年(1985年)には男女雇用機会均等法が制定され,あわせて労働基準法も改正され,女子保護規定が緩和されるとともに母性保護措置は強化された(これらの法律は翌年に施行された)。

家庭科教育についても,昭和59年(1984年)に,高等学校家庭科の女子のみ必修から男女とも選択必修とすることなどの「家庭科教育に関する検討会議」の報告等が行われた。

その他,生活扶助基準については,男性受給者へは女性より高い額が支給されていたが,女性の社会的進出や生活実態から,男女差は是正される必要があるとして,昭和57年(1982年)から格差是正が開始され,60年(1985年)に男女差は完全是正された。

(第3回世界女性会議(ナイロビ)後)

昭和60年(1985年)には,「『国連婦人の十年』ナイロビ世界会議」が開催され,「国連婦人の十年」の成果を検討,評価するとともに「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」が採択された。この中では男女平等を達成するために,男女平等の法的基盤の強化,教育や雇用における平等の確保,適切な国内機構の創設,女性の地位に関する調査・統計の充実等の具体的措置を列挙している。

これを受けて日本では,昭和62年(1987年)に「西暦2000年に向けての新国内行動計画」が策定された。

平成2年(1990年)には,国連経済社会理事会で「ナイロビ将来戦略」の第1回見直しが行われた。その際の勧告等を踏まえて,日本でも「新国内行動計画」の見直しが行われ,3年に改定された。その中では,21世紀の社会はあらゆる分野へ男女が平等に共同して参画することが不可欠であるとの基本的認識の下に,総合目標が従来使用していた「男女共同参加」から「男女共同参画」へと改められた。

この間,他の法律,制度も更に整備され,平成3年(1991年)には「育児休業等に関する法律」(平成3年法律第76号。以下「育児休業法」という。)が公布され,翌年施行された。

(第4回世界女性会議(北京)後)

平成7年(1995年)に「第4回世界女性会議」が北京で開催された。会議では「ナイロビ将来戦略」の第2回見直しが行われるとともに,2000年までの優先事項として12の重大問題領域に沿った女性のエンパワーメントのための課題を盛り込んだ「北京宣言及び行動綱領」が採択された。

平成12年(2000年)には,ニューヨークで国連特別総会「女性2000年会議-21世紀に向けての男女平等・開発・平和-」が開催され,「北京宣言及び行動綱領」の実施状況の検討・評価及びその完全実施に向けた今後の戦略が協議された。

「北京宣言及び行動綱領」は,他の国連会議での合意事項にも基礎を置いており,女性及び少女に対するあらゆる形態の暴力の撤廃,女性のリプロダクティブ・ヘルスの促進,女性及び少女のあらゆる人権の促進と保護,持続可能な開発のための女性の能力開発促進,政策決定過程における男女の平等な参画,女性の地位向上のための途上国への支援などが盛り込まれている。

日本では,北京会議の成果を踏まえ,平成8年(1996年)にこれらの概念を新たに盛り込んだ「男女共同参画2000年プラン」を策定した。さらに,11年(1999年)に男女共同参画社会基本法を公布・施行し,12年(2000年)に同法に基づく男女共同参画基本計画を策定した。

男女共同参画社会基本法では,男女共同参画社会の形成に関する基本理念として男女の人権の尊重,社会における制度又は慣行についての配慮,政策等の立案及び決定への共同参画,家庭生活における活動と他の活動の両立,国際的協調を掲げ,この基本理念にのっとり,国や地方公共団体は男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を策定・実施すること,国民は男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めることが,それぞれの責務として明文化されている。さらに,男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項として,国や地方公共団体における男女共同参画計画等の策定,施策の策定等に当たっての配慮,国民の理解を深めるための措置,苦情の処理等,調査研究,国際的協調のための措置,地方公共団体及び民間の団体に対する国の支援などが定められた。

男女共同参画社会基本法の成立は,国や地方公共団体の施策に大きな影響を与えている。

農業分野では,平成11年(1999年)に農業基本法が改正され,「食料・農業・農村基本法」(平成11年法律第106号)が成立した。同法には,女性の農業経営における役割を適正評価し,女性が自らの意思によって農業経営活動等に参画する機会を確保するための環境整備を推進する旨の規定が盛り込まれた。また,12年(2000年)には「食料・農業・農村基本計画」が策定され,女性の参画を推進するための具体的施策が盛り込まれた。

また,男女共同参画社会基本法の成立と前後して,男女雇用機会均等法及び労働基準法が平成9年に改正,11年に施行され,職場における均等待遇に関する規定が強化された。労働基準法における女子保護と母性保護については,女子保護に関する規定が撤廃されるとともに,母性保護についてはより強化された(母性保護に関する規定については平成10年から施行)。

(国内本部機構の充実)

前述のとおり,昭和50年(1975年)の「国際婦人年世界会議」の宣言を受けて,日本は,国内本部機構として内閣総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部を設置し,事務局として婦人問題担当室を設けるとともに,諮問機関として婦人問題企画推進会議を設けたが,その後も国内本部機構の充実を図ってきた。

まず,昭和61年(1986年)には前年のナイロビでの世界女性会議の採択事項を受けて,婦人問題企画推進本部の構成を全省庁に拡大し,婦人問題企画推進会議は婦人問題企画推進有識者会議に改組した。

平成3年(1991年)には,「新国内行動計画」が改定され,本部機構の充実強化を図るため,その機能の在り方,制度上の仕組み及び法的整備等について検討を行うこととされた。

平成4年の宮澤内閣の改造時には,婦人問題担当大臣(後に「男女共同参画担当」)が置かれ,内閣官房長官が指定された。5年に婦人問題企画推進本部は「男女共同参画型社会づくりに関する推進体制の整備について」を取りまとめ,本部の改組,男女共同参画担当官の指名,審議会の設置及び事務体制の整備について決定した。6年には,上記本部決定に基づき,総理府に男女共同参画審議会及び男女共同参画室が設置されるとともに,総理府に置かれていた婦人問題企画推進本部が,内閣に置かれる男女共同参画推進本部に改組され,構成員は事務次官から閣僚に格上げされた。また,各省庁には,男女共同参画担当官が設置され,本部員の補佐と男女共同参画関連施策の調整を担当することとなり,ここに,本部と審議会が,車の両輪のように男女共同参画社会の実現に向けた取組を推進し,総理府の男女共同参画室及び全省庁の担当が緊密な連携を保ちつつ,それらの活動を実質的に支えるという現行体制の基礎が確立された。

さらに,平成9年(1997年)にそれまで政令による時限組織であった男女共同参画審議会の任務を引き継ぎ,かつ売春対策審議会の任務を発展的に継承する,法律に基づく恒久的な男女共同参画審議会が設置されることとなった。

平成13年(2001年)には中央省庁等改革に伴い,内閣府に男女共同参画会議及び男女共同参画局が設置され,更なる体制強化が図られて現在の国内本部機構の姿となった。また,男女共同参画担当は内閣府設置法(平成11年法律第89号)に基づく特命担当大臣となった。

男女共同参画会議は,内閣府に置かれる重要政策に関する会議の一つとして,男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な方針,基本的な政策及び重要事項の調査審議を行うほか,男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況の監視,政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査を行うこととされている。

同会議の下には,「基本問題専門調査会」,「女性に対する暴力に関する専門調査会」,「苦情処理・監視専門調査会」,「影響調査専門調査会」,「仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会」(平成13年6月の最終報告後に廃止)が設置され,それぞれの関連事項について調査・審議を行っている。

2 法律・制度の充実と各分野の取組

(1)雇用分野での取組

昭和40年代後半から50年代までは,前述のとおり,サービス経済化が進み,女性雇用者が増加するとともに,パートタイム労働に対する企業のニーズが高まり,取り分け女性労働者のパートタイム化が進んだ時期であった。

このころ,ほとんどの企業では,基幹的業務は男性が従事し,女性は補助的業務に従事するという性別役割分担が慣行として行われていた。安い労働力として女性をパートタイムとして雇用しつつ,女性の正社員についても,若年定年制,結婚・妊娠退職慣行など,女性の早期退職を促す男女差別的な雇用管理を行う企業が多く見られた。

また,当時の労働基準法は,女性は身体的に配慮すべき性であり,家庭責任を負っているという考え方を前提として定められていたため,昭和61年及び平成11年の労働基準法の改正までは,母性保護規定以外にも,女性一般に,時間外労働,深夜業,休日労働等の女子保護が規定されていた。このため,企業は,女性を活用する際には男性と異なる特別の配慮が必要であった。

しかし,雇用の分野における男女均等取扱いを目的とする男女雇用機会均等法の誕生により,前述のような男女別の雇用管理は大きく変化した。一部企業は,基幹的業務に従事する総合職と補助的業務を担う一般職などの雇用区分を作り,配置等で異なる雇用管理を行う,コース別雇用管理を採用した。男女別からコース別の雇用管理に変わったことにより,女性が基幹的業務に従事する機会が広がった。しかし,一般職のほとんどは女性であり,また,総合職として女性が採用された場合も,長い労働時間や転勤等を要求され,結婚後の家事・育児との両立は困難であった。(財)21世紀職業財団「総合職女性の就業実態調査」によると,平成12年調査時点で6年以前に採用された総合職の女性の4割強から5割強までが退職している。

このように,家事・育児と仕事の両立を可能とする環境整備は重要な課題であったが,平成4年の育児休業法の施行とともに,事業所には育児休業の導入が義務化されるなど(事業所規模により適用除外があったが,現在は事業所規模にかかわらず適用されている),徐々にではあるが,企業にも仕事と家庭の両立のための雇用管理制度が普及し始めた。

こうした中で,女性雇用者数の増加や女性の勤続年数の伸長などが進んだが,男女の職務分離,管理職に占める女性割合の低さや職場でのセクシュアル・ハラスメントなどの課題が依然として残されていた。

このため,平成9年に男女雇用機会均等法が改正され,雇用管理の全ステージにおける女性に対する差別が禁止されるとともに,同法に企業のセクシュアル・ハラスメント防止のための配慮義務,ポジティブ・アクションについての規定が新設された。これを受け,セクシュアル・ハラスメント防止対策及びポジティブ・アクションの取組などが企業に普及しつつある。

また,一部企業においては,女性の活躍の推進を企業戦略の一環としてとらえ,女性の活躍及び女性が働きやすい環境の整備に自主的に取り組もうとする動きが出てきている(第1-序-6表)。

第1-序-6表 企業が取り組む女性活用の雇用管理例別ウインドウで開きます
第1-序-6表 企業が取り組む女性活用の雇用管理例

日本経営者団体連盟(当時)の「日経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」では,日本人男性正社員を中心とする人材活用の考え方では,今後の成長は望めないとして,ダイバーシティを企業の経営戦略と位置づけている。ダイバーシティを進めるために,今まで活かされてこなかった人材をいかに活用するかがポイントであり,ポジティブ・アクションの実施や諸制度の見直し,新しい仕組み作りなどの労働環境の整備が求められるとして,企業での性,国籍,年齢にとらわれない人材活用を促している。また,2003年版「日本経団連経営労働政策委員会報告」では,少子化への対応を打ち出し,育児と仕事の両立支援,職場における男性の意識改革,保育施設対策などを提言している。

さらに,近年の経済のグローバル化,情報化,消費者意識の変化,社会的責任投資の普及等に伴い,企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)をより広い視野からとらえ直すことが重要であるとの認識が高まり,国際的にCSRの在り方が議論されている。(社)経済同友会が平成15年3月に発表した第15回企業白書「『市場の進化』と社会的責任経営-企業の信頼構築と持続的な価値創造に向けて-」においては,優れた人材の登用と活用,ファミリー・フレンドリーな職場環境の実現,働きやすい職場環境の実現など「人間」を一つの評価軸とし,機会均等,女性役員・女性管理職比率,育児・介護支援などを企業評価基準の評価項目としている。

(コラム:女性の能力活用と企業・社会の利益)

(2)公務分野での取組

公務部門においても,職業生活と家庭生活の両立のための支援策を講じつつ,女性国家公務員の採用・登用の拡大のための取組を推進している。

婦人問題企画推進本部は,昭和51年2月に行政機関における女性の登用等について本部決定を行い,積極的に取組を始めたが,「国内行動計画」でもこれを重要な柱の一つとして位置づけ,52年には「婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱」を策定した。同要綱においては,女性公務員の採用及び能力開発を政府部内の推進事項として,女性の公務員の採用・登用及び職域の拡大並びに研修・訓練の機会の積極的活用による能力の開発,試験区分中女性の受験を制限している職種の見直しを掲げた。

国家公務員試験における女性の受験制限については,昭和50年当時は一般職の12の職種について女性の受験が制限されていたが,徐々に解除され,平成元年度に国家公務員?種の郵政事務Bが解除されたのを最後にすべての職種で女性の受験制限が無くなった。特別職についても,防衛大学校生について女性の受験制限が3年度から廃止され,5年度からは,海上自衛隊及び航空自衛隊の航空学生の受験制限が廃止された。これらの受験制限の解除とともに,11年には女子職員の深夜勤務,時間外勤務の制限が撤廃され,女性が活躍できる場を広げる条件が整備されていった。

また,女性の職場への進出が進む中,職業生活と家庭生活の両立を図る施策の必要性がより広く認識されるようになり,両立を支援する制度の充実が図られていった。平成4年に現行の育児休業法が民間の育児休業法と同時に施行され,1歳未満の子を持つ職員は男女を問わず育児休業や部分休業の取得ができるようになり,6年9月には介護休暇(3か月)が導入された。14年4月には,育児休業法等の改正により対象となる子の年齢が3歳未満に引き上げられ,介護休暇の期間が3か月から6か月に延長されたほか,子の看護のための休暇制度が導入され,仕事と育児,介護の両立のための諸施策が一体的に拡充された。さらに,従来女子職員が受けていた深夜勤務・超過勤務の制限については,両立支援の観点から,男女を問わず育児又は介護を行う職員が請求した場合に認められるものとして導入されている。

このように制度の充実は図られてきたものの,女性国家公務員の採用・登用については,国際的にみても低い水準にとどまっている状態が続いているため,近年は,男女共同参画行政の重要課題の一つとして,女性の採用・登用拡大のためのより積極的な措置が採られるようになった。平成13年5月に人事院は「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を策定し,これに基づき,各府省は,17年度までの目標を設定した「女性職員の採用・登用拡大計画」を作成し,全府省が一体となって女性国家公務員の採用・登用の拡大に取り組んでいる。

このほか,前述「婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱」には,「国際会議等への婦人の適任者の積極的派遣」も掲げられており,国際機関への派遣や国際会議への代表団メンバーとして女性を派遣するほか,国際機関の大使・公使等への女性の任用に努めている。

(3)起業,研究分野等での取組

(起業)

社会経済情勢の変化とともに,日本の女性の社会への進出意欲は高まってきたが,近年は,女性の起業に対する関心が高まってきている。

総務省「就業構造基本調査」(平成14年)によると,自営業主のうち,調査前1年間に新たに自営業を始めた新規開業者(転職者を含む)は女性が8.2%,男性が3.8%で,自営業者に占める新規開業者の割合は女性の方が男性より高くなっている(第1-序-9図)。

第1-序-9図 男女別新規開業者数と自営業者に占める割合別ウインドウで開きます
第1-序-9図 男女別新規開業者数と自営業者に占める割合

「女性と仕事の未来館」が実施した「女性の起業に関するアンケート調査」(平成15年)によると,起業を考えた年齢は,40歳代が29.3%,30歳代が28.4%と多くなっており,育児が一段落した後,自分の能力を活かす場として起業を希望する女性が多いと考えられる。このような状況の中,最近,低利での融資,起業セミナーや情報提供等,女性に対する起業支援が官民で行われるようになってきた。

また,女性の起業は農業の分野でも盛んになってきている。前述の食料・農業・農村基本法及び食料・農業・農村基本計画において,女性の農業経営における役割の適正評価と,女性の農業経営活動参加のための環境整備等が明記されたことにより,女性の農業経営参加が促進され,農業に携わる女性の起業も年々増えている。農林水産省「農村女性による起業活動実態調査」(平成15年度)によると,平成9年度には4,040件であった女性の起業数は,15年度には8,186件と6年間で2倍以上に伸びている。

(研究分野)

大学では工学,農学,理学など女性教員や女子学生が少ない分野があり,教授や助教授に占める女性比率が低くなっている(第1-序-10図)。

第1-序-10図 大学教員における女性比率別ウインドウで開きます
第1-序-10図 大学教員における女性比率

また,大学においては,学長のリーダーシップのもと,組織的に取り組む体制や行動計画を整備し,男女共同参画を進めようとする自主的な取組が始まっており,さらに国立大学協会は,2010年までに国立大学の女性教員比率(助手・非常勤講師を含めず)を20%に引き上げることを達成目標として設定することが適切であるとする報告書をまとめた。

また,科学技術分野で男女がともに力を発揮できることを目指し,物理や化学など14の学会が,平成14年10月,「男女共同参画学協会連絡会」を発足させ,大学・研究所等での女性の参画を促すための自主的な取組を行っている。

以上みてきたように,昭和50年以降の日本の男女共同参画を推進するための取組は,国際的な動きと密接に関連し,強い影響を受けながら進んできた。日本は,国連等の男女共同参画に関する採択事項や国際条約を国内に取り入れ,男女共同参画社会の形成のための制度を整えてきた。民間団体・企業等も国の法律・制度に敏感に対応し,それぞれの領域において男女共同参画の進展に努力してきている。

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