平成15年版男女共同参画白書

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第2節 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

1 国連の諸活動への協力

(1)会議・委員会等への協力

ア 国連婦人の地位委員会

2003(平成15)年3月,第47回国連婦人の地位委員会が開催され,「メディア及びICT(情報通信技術)への女性の参加及びアクセス,それらがもたらす影響,女性の地位向上及びエンパワーメントの手段としての活用」,「女性の人権及び北京行動綱領・女性2000年会議成果文書において定義された女性と女児に対するあらゆる形態の暴力撤廃」等につき議論が行われた。同委員会には,目黒依子上智大学教授が日本代表として出席した。

イ 国連総会第3委員会「女性の地位向上」審議

2002(平成14)年秋に開催された第57回国連総会において,「女性の地位向上」に関する議論が行われた。我が国よりは,房野桂国連婦人年連絡会国際部長が出席した。

ウ 女子差別撤廃委員会

政府は,平成14年9月,「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に関し,条約実施のためにとった立法,司法,行政等の措置とその実施の進ちょく状況を含む取組を取りまとめた,女子差別撤廃条約実施状況第5回報告を国連事務総長に提出した。

(2)国連機関・基金等への協力

平成14年度には,国連婦人開発基金(UNIFEM)に対して,101.8万ドルの拠出を行うとともに,同基金の下に設置されている「女性に対する暴力撤廃のための国連婦人開発基金信託基金」に対して28.8万ドルの拠出を行った。

また,我が国が平成7年に国連開発計画(UNDP)の下に設置したUNDP日本WID基金に149.2万ドルの拠出を行った。

さらに,我が国は,信託基金を国連教育科学文化機関(UNESCO)に拠出し,アジア・太平洋地域における識字教育や途上国における人材育成事業に協力しているほか,財団法人ユネスコ・アジア文化センター等においても,成人非識字者の約3分の2を占める同地域の女性に対する教育の普及に積極的に協力している。

2 WID/ジェンダーの推進

(1)基本的な考え方

世界の人口の約半分は女性であり,均衡のとれた持続的な経済・社会開発を実現するためには,女性が男性とともに経済・社会開発に参加し,同時に開発から受益することが可能でなくてはならない。

開発における男女の平等な参加と受益に向けて努力することは,一義的にはその国自身の課題である。しかし,先進国が開発における女性の参加と受益にも配慮した開発援助を実施することを通じて,開発途上国の努力を支援することができる。このようなWID/ジェンダーに配慮した開発援助は,均衡のとれた持続的な開発に貢献し,開発途上国の女性エンパワーメントなどを促進することになる。

我が国は,従来より,国連や経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)等を始めとする国際社会における動向を踏まえながらWID/ジェンダーを推進してきており,また,平成11年8月に公表された「政府開発援助に関する中期政策」においても,「貧困や社会開発分野への支援」の項で「開発途上国における女性支援」(WID/ジェンダー)を重点的に取り組むべき課題の一つと位置付けている。

我が国としても,引き続き,WID/ジェンダーの観点から,男女格差の是正を念頭におきつつ,社会全体の持続可能な経済・社会開発を目標としていくこととしている。

(2)WIDイニシアティブの推進

ア 教育

開発途上国及び他の援助国と協力しつつ,2005(平成17)年までに,開発途上国における6歳から11歳までの男女格差をなくすことを目指す努力を支援している。また,同様にして,2010(平成22)年までに開発途上国の6歳から11歳までの女子のほぼ全員が男子と同様に学校教育を受けられるようにすることを目指す努力を支援している。

イ 健康

2010(平成22)年までに,妊産婦死亡率(出産10万人当たりの妊産婦の死亡者数)を200以下に下げることを目指す努力を支援している。また,出産に対する圧力を軽減するという観点から,2015(平成27)年までに乳児死亡率(出生1,000人当たりの1歳未満の子供の死亡者数)を35以下に下げることを目指す努力を支援している。

ウ 経済・社会活動への参加

女性のための適正技術の研修・訓練の場の提供,女性の労働環境の改善,女性問題関連の法律・制度の整備のための協力を行っている。また,経済活動への女性の参加を促進する上で,女性の起業家が多い零細企業の育成を支援していくことが有益であるため,女性に対する支援制度の導入を支援し,導入された場合には,資金協力等の積極的支援を行っている。

(3)様々な枠組みを活用した援助案件の実施

我が国としては,無償資金協力事業(草の根無償資金協力及び日本NGO支援無償資金協力を含む。),NGO事業補助金,有償資金協力事業,専門家等の派遣等の技術協力事業を通じて,WID分野における支援を継続している。さらに,これら事業の評価を行うことで,より効果的な事業の実施を図っている(第2-12-1表)。

第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助案件の実施 別ウインドウで開きます
第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助案件の実施

3 女性の平和への貢献

我が国は,平和を推進する国際機関の役割の重要性を認識し,また,紛争時において最も支援を必要とする人々は女性や子どもであることを考慮し,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連児童基金(UNICEF)等の人道支援国際機関に対し積極的な協力を行っている。

また,内閣府では,平成14年2月から,内閣官房長官の主催により「アフガニスタンの女性支援に関する懇談会」を開催している。同懇談会は,同年5月,女性/ジェンダーの観点から,「政治・制度的枠組み」,「教育」,「保健医療」,「産業・職業」,「基礎インフラ」「平和・安全」の六つの重点支援分野に「国内における取組の点検と評価」を加えた各分野について,今後我が国が女性支援を進めていくに当たっての基本的考え方,支援策の方向性及び具体的支援策等を盛り込んだ提言「アフガニスタンの女性支援策について」を取りまとめ,内閣官房長官に提出した。

4 国際分野における政策・方針決定過程への女性の参画の促進

我が国では,近年,国際会議への政府代表団の女性のメンバーが漸次増加しており,2003(平成15)年の第47回国連婦人の地位委員会及び2002(平成14)年秋の第57回国連総会においても,民間女性を「日本代表」,「政府代表代理」等の資格で派遣したほか,女子差別撤廃委員(女性)も2006年までその任期を務めることとなっている。

また,日本人女性の国際機関への参画も進んでおり,国連を含む国際機関における日本人の女性職員数(専門職以上)は,1975(昭和50)年の19人から2002(平成14)年には333人と大幅に増加している。

5 国際交流・協力の推進

(1)あらゆるレベルにおける国際交流・協力の推進

外務省では,平成7年度より毎年日本・ヨルダン・エジプト・パレスチナ女性交流プログラムを実施しており,14年度は,「女性と医療」をテーマとして,ヨルダン,エジプト,パレスチナより医療分野で活躍する女性を我が国に招へいするとともに,我が国よりは,ヨルダン,エジプトを訪問し,関係者と意見交換を行った。

技術協力事業として国際協力事業団(JICA)においては,WID/ジェンダーに知見や関心を有する外部有識者を招いた「ジェンダー・WID懇談会」並びに重点課題別支援委員会「開発とジェンダー」を定期的に開催しているほか,プロジェクトの計画段階において,WID/ジェンダー専門家が対象地域の社会/ジェンダー調査を行い,男女格差の縮小や男女の参画を促すような実施計画案への提言を行っている。また,OECD/DACジェンダー平等作業部会並びに国連婦人の地位委員会に継続して参加し,開発援助におけるジェンダーの取組について他の援助機関と知見を共有している。

内閣府は,男女平等に向けて特に早くから取組が行われている欧州諸国での男女共同参画の動きや変化について情報を得るとともに,政策担当者との意見・情報交換ネットワークづくり等を目的として,欧州評議会第26回男女平等運営委員会(2002(平成14)年11月)に,オブザーバーとして参加した。さらに,2001(平成13)年12月に「日・EU協力のための行動計画」が採択されたことを契機に,男女共同参画に関する日・EU協議(2002(平成14)年11月)を初めて実施し,相互の情報交換と今後の展望についての話合いが行われた。また,全国的視野に立った男女共同参画社会の形成の促進を図るとともに,国際的協調をより深めるべく,我が国と共通の課題を持つ諸外国の男女共同参画分野における有識者を東京都及び秋田県に招へいして「男女共同参画グローバル政策対話」を開催した。

厚生労働省では,「女性と仕事の未来館」において,我が国の女性労働関係者と開発途上国の女性労働関係者との相互交流を行い,我が国のこれまでの女性労働の経験,就労支援策に関する情報提供と技術的支援を実施する等,「開発と女性」の視点を踏まえて,開発途上国への援助を推進している。

(2)環境問題に関する国際協力等の取組の推進

2002(平成14)年8~9月に南アフリカで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」においては,21世紀最初の包括的な行動指針を示す「実施計画」が採択され,当該会議の成果の実施が女性に恩恵をもたらすことを認識する,という導入部分を始め,男女平等に基づいたあらゆるレベルの意思決定への女性の平等なアクセスを促進することなどが明記された。

(3)女性の教育分野における国際交流・協力の支援

文部科学省では,女性教育団体が行う指導者の海外派遣事業等に対して助成するとともに,女性団体等が実施する地域の国際化・国際理解に関する学習や国際交流・協力活動の促進に努めている。

また,独立行政法人国立女性教育会館では,国際的な視野からの課題分析を行うとともに,参加者間の国際的情報ネットワーク形成の推進,国際レベルでの女性のエンパワーメントを実現するための情報処理技術の研修,途上国における女性教育の推進支援等を実施している。このほか,各種団体等の国際交流機会の確保を図るとともに,同会館の活動や最新の日本女性の現状について,英文で海外に紹介する「NWEC Newsletter」を年2回発行している。

(4)経済分野における国際協力

APECにおいては,2002(平成14)年9月に第2回APEC女性問題担当大臣会合がメキシコのグアダラハラで開催され,APEC域内の持続可能なジェンダー統合及び女性の経済的利益と機会の向上のためのメカニズムを勧告する大臣共同声明が採択された。また,1999(平成11)年に採択された「APECにおける女性の統合のためのフレームワーク」の実施のため設置されたアドホック諮問グループは,2002(平成14)年末までAPECの各分野における活動にジェンダーの視点を反映させるための作業を行ってきたが,同グループの任期完了に伴い,今後はAPECの各分野の作業部会にジェンダーに関する責任者が置かれ,作業が継続されることとなった。

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