平成15年版男女共同参画白書

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第4節 家庭生活における男女の共同参画

日本では,前述のとおり多くの女性が出産・育児を契機に退職するなど仕事と出産・子育てとの両立に苦労している状況にある。そこで,家庭内において仕事と子育ての両立のためにどのような問題を抱えているか,家庭をめぐる状況の変化と子育てにおける状況について分析する。

1.家族をめぐる状況

(家族の縮小化)

戦後の高度経済成長過程で産業構造が変化し,都市化が進んだこと等により,家族における生産活動の意味は次第に薄れ,生活の単位としての性格が強くなった。その結果,日本では核家族が増えるなど家族の平均世帯人員が減少する小世帯化が進んでおり,1985年では単独世帯が18.4%,夫婦のみ世帯が14.6%であったのに対して,2001年では,それぞれ24.1%,20.6%といずれも増加している(第1-序-37図)。

第1-序-37図 世帯構成の変化 別ウインドウで開きます
第1-序-37図 世帯構成の変化

諸外国においても日本と同じく小世帯化が進む傾向にあり,工業化の進展が著しい韓国において特にその傾向が強い(第1-序-38図)。

第1-序-38図 平均世帯人員の推移 別ウインドウで開きます
第1-序-38図 平均世帯人員の推移

このような小世帯化の進行により,子どもを産み育てることや老親等の介護,さらに生活の糧を得るという家族の基礎的な機能も変わってきており,子育て等の家庭生活においても,従来の役割分担では立ち行かなくなりつつある。

(出生率の低下)

小世帯化をもたらす要因の一つである合計特殊出生率の推移をみると,アメリカでは直近で2.13となっており,1990年代から2以上を維持している。これに対しスウェーデンでは1990年前後に2を回復したが,その後再び減少に転じ,2000年には1.54となっている。イギリス,韓国も低下傾向にある。日本はドイツと同水準の1.3台で,最も低い水準にあるが,ドイツが下げ止まっているのに対し,日本は依然として低下傾向が続いている(第1-序-39表)。

第1-序-39表 合計特殊出生率の推移 別ウインドウで開きます
第1-序-39表 合計特殊出生率の推移

出生率低下をもたらす要因の一つと考えられる女性の晩婚化の状況をみると,各国とも平均初婚年齢は上昇しており,日本においても1970年には24.2歳であったのに対し,2000年には27.0歳となった(第1-序-40図)。

第1-序-40図 女性の平均初婚年齢の推移 別ウインドウで開きます
第1-序-40図 女性の平均初婚年齢の推移

これは,男性の仕事時間が長いことのほか,固定的性別役割分担意識により,女性は結婚すると家事労働などの負担が重く,キャリアも諦めなければならない状況になってしまうと考えることも背景の一つにあると考えられる。

(夫婦関係をめぐる考え方)

「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方については,第3節でみたように,日本は欧米諸国に比較して,賛成とする割合が依然として高い(第1-序-22図参照)。これを性別にみると,女性が36.8%,男性が46.6%と男性の方が高く,年齢別にみると20代,30代よりも40代,50代の方で賛成割合が高い。また,1982年の同調査と比較すると,賛成する割合は低下している。日本では,若年層を中心に固定的性別役割分担意識はやや希薄化してきているものの,欧米諸国と比較するとその意識は強く残っているといえる。

(家事労働の役割分担)

育児期にある夫の育児及び家事時間(以下,「家事関連時間」という。)についてみると,日本は2001年において0.8時間で,スウェーデンの1991年における3.7時間,ドイツの1992年における3.5時間と比較して短い(第1-序-41図)。

第1-序-41図 育児期にある夫婦の育児,家事及び仕事時間の各国比較 別ウインドウで開きます
第1-序-41図 育児期にある夫婦の育児,家事及び仕事時間の各国比較

2001年の日本の育児期にある夫の家事関連時間は1996年の0.6時間から0.2時間増加したが,育児期にある有業者の妻の家事関連時間は1996年の5.4時間から2001年の5.6時間と0.2時間増加しており,男女間の差は4.8時間と依然として大きい。

個別具体的な役割分担の実施状況をみると,食事の支度については,日本では妻が89.7%,夫が1.4%,家族全員が6.0%であるのに対し,スウェーデンではそれぞれ49.5%,14.8%,34.2%,イギリスではそれぞれ52.6%,14.6%,29.9%となっている。日本では妻に偏りがあるのに対して,欧米諸国では比較的家族全員で行う割合が高い(第1-序-42図)。

第1-序-42図 家事分担の状況 別ウインドウで開きます
第1-序-42図 家事分担の状況

(家計における役割分担)

家計費管理における最終的な決定者について,日本では妻が69.5%,夫が13.9%,夫婦が14.2%であるのに対し,スウェーデンではそれぞれ25.0%,9.9%,56.5%,ドイツではそれぞれ20.6%,11.4%,64.9%となっている。日本では妻が決める割合が高いのに対して,スウェーデン,ドイツでは夫婦で決める割合が高い(第1-序-45図)。

第1-序-45図 家計費管理における最終決定者 別ウインドウで開きます
第1-序-45図 家計費管理における最終決定者

土地・家屋の購入における最終的な決定者についてみると,日本では妻が6.5%,夫が46.9%,夫婦が35.7%であるのに対し,スウェーデンではそれぞれ2.9%,10.1%,68.5%,ドイツではそれぞれ2.3%,11.4%,74.7%となっている。日本では家計費管理の場合とは対照的に夫が決める割合が高いのに対し,スウェーデン,ドイツでは夫の決める割合が低下し,夫婦の決める割合が更に高くなる(第1-序-46図)。

第1-序-46図 土地・家屋の購入における全体的な実権 別ウインドウで開きます
第1-序-46図 土地・家屋の購入における全体的な実権

このように,日本では金額の大きな選択ほど夫が決定する割合が高くなっているのに対し,スウェーデン,ドイツでは夫婦で決定する割合が高くなっている。

(コラム:子どもと大人の家事の役割分担意識)

(意識と実態との乖離)

前述のとおり,日本では夫は外で働き,妻は家庭を守るべきであるとする固定的性別役割分担意識は年齢層が低下するほど弱くなる傾向にあるが,実態では60歳代の方が若年層よりも家事関連時間は長くなっている(第1-序-47図)。

第1-序-47図 男性の年齢階級別仕事時間,家事時間,育児時間 別ウインドウで開きます
第1-序-47図 男性の年齢階級別仕事時間,家事時間,育児時間

育児期にある夫の仕事時間が,スウェーデン,イギリス,アメリカ,ドイツでは6時間を少し上回る程度であるのに対して,日本では2001年で7.7時間と長いことから,日本の男性は,意識はしているものの仕事時間が長く,家庭で子育て,家事労働を分担し実行できる状況にないといえる。

次に,家事労働の中で,仕事との両立が困難な子育てをめぐる状況についてみてみる。

2.子育てをめぐる状況

(子育てに関する意識)

「結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はない」という考え方について,日本では賛成が48.5%,反対が46.0%であるのに対し,スウェーデンではそれぞれ87.5%,9.6%,イギリスではそれぞれ96.2%,3.2%と,諸外国と比較して反対する割合が比較的高い(第1-序-48図)。

第1-序-48図 子どもを持つことへの意識 別ウインドウで開きます
第1-序-48図 子どもを持つことへの意識

また,「社会意識に関する世論調査」(平成14年12月)における,「自分にとって子育ての辛さとはどんなことだと思うか」という問いに対しては,経済的な理由で子育ての負担を感じている者が最も多く,また「自分が思ったように働けないこと」と答えた者が女性で27.0%,男性で8.9%,「子育ての大変さを配偶者など周りの人に分かってもらえないこと」と答えた者が,女性で17.2%,男性で4.4%と男女間で認識の差がある(第1-序-49図)。

第1-序-49図 子育ての辛さ 別ウインドウで開きます
第1-序-49図 子育ての辛さ

このように,子育てと仕事との両立の困難さや子育てについて夫の理解が得られないことについての不満を感じている女性が男性に比べて多く,これが子育て期にある女性の労働力率低下の一因となっていると考えられる。

(子育てに対する社会的支援の状況)

第3節で述べたとおり,日本においては,固定的性別役割分担意識もあって働き方の柔軟化が進んでおらず,育児休業制度は比較的充実しているものの男性の取得率が極めて低い状況にある。

保育の状況をみると,日本では2002年4月時点で待機児童数は2万5千人に上り,3歳未満児童数に対する保育所入所児童数の割合は16%と,待機児童をほぼ解消したスウェーデンの41%と比べて低い。児童手当支給額についても,日本では第1子,第2子はそれぞれ5,000円,第3子以降は1万円と諸外国と比較して低い(第1-序-50表)。

第1-序-50表 各国における保育の状況 別ウインドウで開きます
第1-序-50表 各国における保育の状況

このように,日本における子育てに対する社会的支援は必ずしも十分とはいえない状況にある。今後,働く女性が仕事と子育ての両立を可能とするための環境整備を進めていくことが必要である。

(コラム:子育てと教育費の負担)

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