平成15年版男女共同参画白書

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配偶者からの「女性に対する暴力」と「男性に対する暴力」

「女性の約20人に1人が暴力によって命の危険を感じている」と言うと,「女性は表現がオーバーなのではないか」,「ささいな暴力を大げさに言っているのではないか」と疑問を持つ人がいる。しかし,女性に対する暴力の被害が深刻であることは,各種の調査から明らかになっている。

●命の危険とケガ

内閣府「配偶者等からの暴力に関する調査」(平成14年)において,配偶者や恋人から“身体に対する暴行を受けた”,“恐怖を感じるような脅迫を受けた”,“性的な行為を強要された”ことがあるかを聞いたところ,「何度もあった」と答えた人は,身体的暴行では女性4.8%,男性1.0%,心理的脅迫では女性1.5%,男性0.2%,性的強要では女性3.4%,男性0.4%で,女性の約20人に1人が身体的暴行を何度も受けていた。

配偶者や恋人から身体的暴行,心理的脅迫,性的強要といった行為を何度も受けたことのある人のうち,その行為によって命の危険を「感じた」という人は女性117人中52人(44.4%),男性16人中1人で,女性の半数近くが命の危険を感じていた。また,その行為によって「ケガをして医師の治療をうけた」人は女性117人中28人(23.9%),男性16人中2人,治療は受けなかった人も含めると,医師の治療が必要となる程度のケガをした人は女性117人中35人(29.9%),男性16人中3人で,女性の約3割が医師の治療が必要となる程度のケガをしていた。

●被害の重複

配偶者からの暴力において,女性が被害者になる場合と男性が被害者になる場合で質的に差があることは,被害の重複からも明らかである。同調査における身体的暴行,心理的脅迫,性的強要のいずれか(若しくはいくつか)をこれまでに1度でも受けたことがある人(女性19.1%,男性9.1%)の内訳をみると,男性では「身体的暴行のみ」が6.6%で,それ以外の被害経験は1%に満たない。一方,女性では「身体的暴行のみ」が7.8%で,次いで「身体的暴行・心理的脅迫・性的強要」が3.1%,「身体的暴行と性的強要」が2.9%,「性的強要のみ」が2.8%,「身体的暴行と心理的脅迫」が1.6%となっている。つまり,身体的暴行の被害を受けた女性のうち約半数は,性的強要や心理的脅迫といった他の被害も重複して経験している(第1-5-5図)。

第1-5-5図 配偶者からの暴力による被害の重複
第1-5-5図 配偶者からの暴力による被害の重複

以上の結果からは,男性に比べ女性の方が,配偶者からの暴力を何度も受け,その行為によって命の危険を感じ,医師の治療が必要となる程度のケガをしており,暴力は身体的暴行に限られず,性的強要や心理的脅迫といった被害と重複しているといえよう。

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