執務提要

第3章 政府における法案の検討と国会提出

1.男女共同参画社会基本法案の国会提出

男女共同参画審議会の答申後、法案作成作業は総理府において行われ、年明けから各省との協議が開始された。

平成11年1月9日の第145会国会における小渕恵三内閣総理大臣の施政方針演説では、「少子化の急激な進行も、我が国経 済社会に大きな影響をもたらすものであります。私は先般、少子化への対応を考える有識者会議から、家庭や子育てに 夢を持てる環境の整備は社会全体で取り組むべき課題であるとの提言を受けました。私は、この問題に適切に対応すべ く、各界関係者の参加を募り国民会議を設け、国民的広がりのある取り組みを全力で進めてまいりたいと考えております。 今国会には男女共同参画社会基本法案を提出いたしますが、こうした取り組みの大きな推進力になると確信いたしており ます。」(衆議院本会議)と述べている。

その後、平成11年2月26日に法案は閣議決定され、国会に提出された。

2.法案に対する反応

(1)日本労働組合総連合会

  • 名称の「共同参画」を「平等参画」とすべき。
  • 基本理念について、
    • -男女共同参画社会の形成は「男女が社会的・文化的に形成された性差にとらわれず」とし、ジェンダーの視点も入れる
    • -間接差別も含める
    • -社会における制度又は慣行についての配慮を「配慮されなければならない」とする
    • -政策等の立案、決定への共同参画は「平等に参加する機会」とすべき
  • 基本計画の柱となる事項を明記する
  • 国・地方公共団体の広報活動の措置を「教育広報活動」とする
  • 苦情の処理のための組織等について明記する必要がある
  • 男女共同参画審議会の機能と運営の論議が必要

(2)北京JAC

第4回世界女性会議行動綱領の内容を日本の政策として実現すること、そのために必要なロビー活動と研究を行うな どを目的として設立された北京JACは、2月4日、「男女共同参画社会基本法に対する提案」(2月1日付け)を男女共同 参画室に申し入れ、また各政党にも送付した。この申入れでは、

  • 社会的文化的に形成された性差(ジェンダー)に縛られないとの文言の挿入
  • 機会の保障だけでは不十分で「能力が十分発揮される機会「と結果」が保障され」とすること
  • 企業の責務を入れること
  • 国の責務として「配慮」でなく「とらなければならない」とすべき
  • 家庭生活においては、性別役割分担意識が存在することにかんがみ、家族の構成員の役割を、「平等の役割」とすること
  • 「国民の理解を深めるための措置」を「国民の意識を変革するための措置」とし、広報に加え、教育、生涯学習等を明記すること

などが指摘されている。

(3)日本弁護士連合会

日本弁護士連合会からは5月1日付けで、以下の事項等を含む要望書が男女共同参画担当大臣あてに提出された。

  • 法の名称を男女平等基本法又は性差別禁止法とすべき
  • 男女共同参画が憲法や女子差別撤廃条約の男女平等を意味するか疑問であり、さらに明確にするため男女平等と記載すべき
  • 「結果の平等」でなく「機会の確保」に留まっている、目的に性別役割分業の撤廃を入れるべき (積極的改善措置の定義は評価できるが「男女間の格差の改善」でなく「男女平等の実現」あるいは「性差別の撤廃」とすべき等の要望)
  • 「性別による差別的な取扱いを受けないこと」は「性別による差別的取扱いを禁止する」と規定すべき。また間接差別禁止も明記すべき
  • 妊娠・出産にかかわる機能の保護が差別に当たらないことを規定すべき
  • 国際的協調については、少なくとも「国際的に確立された理念の尊重」を規定すべき
  • 「国民の責務」に「国民」以外に企業、団体も入れるべき
  • 市町村についても基本計画策定義務を明記すべき
  • 基本理念の施策への反映は配慮義務でなく明確に義務づけるべき
  • オンブズパーソン的機能の活用を含めた実効性ある苦情処理・救済機関を設置すべき
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