男女共同参画社会基本法逐条解説

(地方公共団体の責務)

第9条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成の促進に関し、国の施策に準じた施策(1)及びその他のその地方公共団体の区域の特性に応じた施策(2)を策定し、 及び実施する責務を有する(3)。

1 趣旨

本条は、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進する上で地方公共団体の果たす役割の重要性にかん がみ、男女共同参画社会の形成について、地方公共団体の責務を宣明したものである。

従来、地方公共団体でも様々な男女共同参画社会の形成に向けた取組が行われてきたが、その法的位置付けは行 われていなかった。地方分権が進む中で、地方の取組は重要性を増してくることが考えられるが、この基本法において地 方公共団体の責務を規定したことにより、地方公共団体の取組が一層進むことが期待される。

本条では、国の施策に準じた施策と区域の特性に応じた施策を策定し、実施する責務を定めており、地方公共団体の 施策が国の施策を後退させる内容であってはならない。


2 用語解説

(1)「国の施策に準じた施策」

男女共同参画社会の形成の促進に関して国が講じている施策にのっとる、若干の修正を要する点はあるがおおむね 同様である、又は類似する施策であって、地方公共団体が行う施策のことである。例えば、地方公共団体における審議 会委員への女性の登用促進などが考えられる。また、第8条において国は「男女共同参画社会の形成の促進に関する 施策(「積極的改善措置」を含む。以下同じ。)」を策定・制定する責務を有すると規定されていることから、本条における 「国の施策に準じた施策」には、積極的改善措置が含まれる。

論点整理においては、地方公共団体は「基本理念にのっとり、地域の状況に応じた総合的な施策を策定・実施する責 務を有すること」、「男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められるあらゆる施策の策定・実施に当たって、基本 理念の反映に努める責務を有すること」とされていた。その後のパブリックコメントにおいて、地域の状況が遅れていると いう理由で国の施策より遅れると困るという意見が多数出された。そこで、基本法答申においては「地方公共団体は、基 本理念にのっとり、国の施策に準じた施策及びその地域の特性に応じた施策を策定し、これを実施する責務を有する。」 と記載された。男女共同参画社会基本法はこの基本法答申を踏まえた条文となっている。

 なお、法定受託事務は国の事務そのものであるので、「国の施策に準じた施策」には該当しない。

(2)「その他のその他方公共団体の区域の特性に応じた施策」

国が同様の施策を講じていない場合において、地方公共団体がその区域の特性に応じて行う施策のことである。国の 施策は全国的見地から行うものであるが、男女共同参画社会の形成を隅々にわたって進めるためには、地方公共団体 において、単に国の施策に準じた施策だけではなく、地域の特性に応じた施策の実施も必要である。また、そうした取組は 地方分権の方向にもかなうものである。

(3)「責務を有する」

責務の具体的内容は、第14条(都道府県男女共同参画計画等)、第15条(施策の策定等に当たっての配慮)、第16条 (国民の理解を深めるための措置)である。


<参考1>国の施策との整合性について

地方公共団体は、男女共同参画社会の形成のため、国に施策に準じた施策、その地方公共団体の区域の特性に応じ た施策を策定、実施する義務があるが、それらの施策を行う場合には「基本理念にのっとり」行う責務がある。

一方で、国は第8条に基づき「基本理念にのっとり」施策を策定し、実施している。

すなわち、国、地方自治体の施策は、同じ基本理念にのっとり、策定・実施されているので、結果として地方公共団体 の施策と国の施策との整合性が図られ、国、地方公共団体との間で男女共同参画社会の形成が整合性をもって進めら れることとなる。

<参考2>条例の制定について

法律制定時には地方公共団体で条例を定めたところはなく、東京都(東京都男女平等参画基本条例平成12年3月31 日公布)等で検討が進められていた段階であった。また、条例の制定は、各地方公共団の固有の権限であり、国が男女共同 参画社会基本条例の制定を都道府県、市町村に課することを基本法では法定しなかった。

地方公共団体の条例の制定については、「法令に違反しない限り」において制定できる旨、憲法(第94条)、地方自治 法(第14条)に規定されており、また、市町村及び特別区は、「当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはな らない」(地方自治法第2条)とされている。なお、最高裁判例(徳島市公安条例事件:最大判昭50.9.10)におい ては、「法令に違反」しているかどうかは、国の法令と条例の趣旨、目的、内容及び効果等を総合的に勘案して個々に判 断すべきものとされている。

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