男女共同参画基本法逐条解説

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

男女共同参画社会<1> の形成<2>男女が、社会の対等な構成員として(1)ア自らの意思によって(1)イ 社会のあらゆる分野(1)ウにおける活動に参画する機会が確保され(1)エ、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ(1)オ、かつ、共に責任を担う(1)カべき社会を形成することをいう。

積極的改善措置(2)ア 前号に規定する機会(2)イに係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において(2)ウ、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。

1 趣旨

基本法の目的は、男女共同参画社会の形成であるが、本条はその目的を定義づける重要な規定である。

なお、定義規定であるので、本条以前に用いられている「男女共同参画社会の形成」についても同義となる。(積極的 改善措置は本条以前には使われていない)

(1)第一号

本法律は、男女共同参画社会の形成に関し基本理念等を定めることにより、男女共同参画社会の形成を総合的かつ 計画的に推進することを目的とするものである。

このように、本法案は「男女共同参画社会の形成」についての基本法であることから、そのかぎとなる概念である「男女 共同参画社会の形成」を定義している。

なお、基本法の制定により廃止された男女共同参画審議会設置法(平成9年法律第7号)においては、「男女共同参 画社会」を定義していた。(男女共同参画社会(男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる 分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受す ることができ、かつ、共に責任を担うべき社会をいう。)

(2)第二号

積極的改善措置は男女共同参画社会の形成のための重要な概念であり、いわゆるポジティブ・アクションのことであ る。

社会的・経済的な格差が現実に存在するところでは、法律上抽象的に認められた「機会の平等」は形式的なものにす ぎず、この機会の利用は現実には困難なことも多々ある。個々の活動の場において少数の性の側が置かれた状況を考 慮して、それらの者に現実に機会を利用しうるような実質的な「機会の平等」が求められる。この実質的な機会の平等を 担保するための措置が、積極的改善措置である。

女子差別撤廃条約(昭和60年条約第7号)第4条には、暫定的な特別措置は差別でない旨規定されている(参考3)。 この条約の性格上、この特別措置の対象は女性のみであると考えられる。

女子差別撤廃条約対応のための国内措置の一つとして男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号)が制定された が、本法の平成9年の改正(法律第92号)により女性労働者に係る措置の特例が追加(第9条、参考4)された。なお、こ の規定は雇用の分野、かつ、女性のみを対象としたものである。

基本法において定義された積極的改善措置は、女性だけでなく、男性も対象としており、本定義規定により、後述する 国、地方公共団体の「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」に必ず含まれることになる。

現状では、女性の活動の場が少ないことから女性を対象とした積極的改善措置が多く、例えば、国、地方公共団体の 審議会委員における女性委員の参画の促進(参考5)が行われている。これは、一定の目標とその達成のための期限を 設定して女性と男性の置かれた現状を把握しつつ、女性の参画を関係機関が自主的に促進する取組(ゴール・アン ド・タイムテーブル方式)というポジティブ・アクションの手法である。

また、各地の女性センター、男女共同参画センターにおける女性に対する優先的な情報や研修の機会の提供等もこ の一例である。


2 用語解説

(1)第一号
ア「社会の対等な構成員として」

男女双方とも本質的に社会の責任ある構成員であり、男女が権利、義務の対等な関係をもっているということを示し ている。

イ「自らの意思によって」

「活動に参画する」のは「自らの意思によって」という主体的な選択によるものであり、強要、強制されるものではない ことを述べたものである。

ウ「社会のあらゆる分野」

職域、学校、地域、家庭などのあらゆる分野のことである。専業主婦を排除するものではないことは言うまでもない。

エ「活動に参画する機会が確保され」

「参画」は、単なる参加ではなく、より積極的に意思決定過程へ加わるという意味である。

なお、「活動に参画する機会が確保され」ということは、能力にかかわらず活動に参画することが確保されるという意味 ではない。

オ「男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ」

男女という性別によって利益に違いが生ずるのではなく、男女が個人の能力によって均等に参画する機会が確保さ れることにより、個人の能力に応じて均等に利益を享受することができることである。

カ「共に責任を担う」

男女という性別によって責任の担い方に違いがあるのではなく、男女が社会の対等な構成員として共に責任を担うこ とである

(2)第二号
ア「積極的改善措置」

「活動に参画する機会に係る男女間の格差を改善するために、必要な範囲内において男女のいずれか一方に対しま して機会を積極的に提供すること」(平成11年5月13日参議院・総務委員会の国会答弁)であり、男女どちらの側についても適用される措置である。

なお、こうした機会を提供することについては、「必ずイーブンになるように四苦八苦するというようなことではなく、あ くまでも男女が対等な構成員として活動するということと、自らの意思によってあらゆる分野における活動に参画する機会 を確保されるということで、人に決められて役割を決めると言うことではなく、あくまでも自分の意思に基づいて自分の役割 を決めていくと言うところに重要性がある」(平成11年5月13日参議院・総務委員会の国会答弁)としている。

イ「前号に規定する機会」

第1号の「男女共同参画社会の形成」の定義中の「社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる 分野における活動に参画する機会」である。

現状では女性の参画は進みつつあるが、男女の固定的な役割分担等により、いまだ格差が見られる状況にあり、女性の参画の機会が少ない分野が多い。

ウ「必要な範囲内において」

格差を改善するために必要な範囲内において行われることを規定しており、男女間の参画する機会の格差について 問題がなくなれば、積極的改善措置を講ずる必要もなくなる。その意味では、暫定的な措置という意味もこの中には含ま れるものである。

<参考1>「男女共同参画社会」の定義の変遷
(1)新国内行動計画(第一次改定)

「男女共同参画」は、平成3年4月10日の婦人問題企画推進有識者会議の提言(-変革と行動のための五年-の中 で「21世紀社会に向けての目標である男女共同参画型社会の実現のペースが早まるように、、、、」、「平等を基礎とした 男女の共同参画」、「社会のあらゆる分野に男女が平等に参画する機会が確保され、、、」、「地域活動における男女共同 参画の実現」等として用いられている。

その後、第1編でも記載のように4月19日に「西暦2000年に向けての新国内行動計画(第一次改定)」の取りまとめに 当たっての事務連絡で「参画」を用いることを要請し、同年5月に決定された同行動計画ではその副題を「男女共同参画 型社会の形成を目指す」としている。なお、同行動計画では「21世紀の社会は、あらゆる分野へ男女が平等に共同して参 画することが不可欠であるという基本的認識の下に、第一次改定では、「共同参加」から「共同参画」に改め、新国内行 動計画の目標を大枠においては維持しつつ発展させ、5つの基本目標と16の重点目標を定め、男女共同参画型社会の 形成を目指すこととした」と従来の用語からの変更の意義について述べている。ここでは定義は示されていないが、「21世 紀の社会は、男女の共同参画によって築き上げられるものである。制度上のみならず実際上の女性の地位向上を図り、 社会のあらゆる分野に女性と男性とが平等に参画することが不可欠である。、、、女性の社会参加と男性の地域・家庭参 加の双方を促進することにより初めて、男女の共同参画によって支えられる社会が実現するものである。」と記述されて おり、その意味が類推できる

なお、これ以前の行動計画(「西暦2000年に向けての新国内行動計画-男女共同参加型社会の形成を目指す-」 (昭和62年5月婦人問題企画推進本部))では、「男女を問わず多様な価値観に基づいて個人の人生が主体的に選択さ れ、両性が等しく個人の持てる能力を十分に発揮し、共に社会の発展を支えていくような新たなシステムが不可欠である として、『男女共同参加型システムの形成』」を提言していた。

(2)「男女共同参画型社会づくりに関する推進体制の整備について」((平成5年7月14日)婦人問題企画推進本部決 定)

「来るべき21世紀社会に向けて、我が国においては、社会の変化を見通しつつ、あらゆる層の国民一人一人が充実し た生涯を過ごすことができる環境づくりが、緊急の課題として求められている。このため、男女が自らの主体的な選択に 基づき家庭や社会のあらゆる分野における活動に平等に参画する機会が確保される社会、すなわち男女共同参画型社 会を形成することが重要である。」

(3)総理府本府組織令の一部を改正する政令(平成6年6月24日政令第157号)

男女共同参画審議会及び男女共同参画室の設置のための政令において、「男女共同参画社会」が初めて政令上、定 義された。またここで「政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ」と「共に責任を担うべき社会」とい う「利益」と「責任」について明記された。

(男女共同参画室)

第11条の2 男女共同参画室においては、次の事務をつかさどる。

各行政機関の男女共同参画社会(男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分 野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受するこ とができ、かつ共に責任を担うべき社会をいう。)の形成の促進に関する事務の連絡に関すること。(以下略)

これには、上記第一次改定のほか、「2010年への選択 メッセージ「地球」と「人間」(1991年6月経済審議会2010年委 員会報告)」における記載(「今後はこうした固定的な役割分担意識から脱皮するとともに、これまでの社会制度、慣行、慣 習等を見直し男女共同参画型の社会を実現することや、、、」)、「生活大国五か年計画(平成4年6月30日閣議決定)」に おける記載(特に、女性が十分に活躍できるよう、これまでの男女の固定的な役割分担意識を始め社会の制度、慣行、 慣習等を見直し、男女共同型社会を実現することが必要である。)、「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策 について(平成4年7月29日生涯学習審議会答申)」における記載(「(男女共同参画型社会の形成)女性の社会進出が 進む中で、男女の固定的な役割分担意識を改め、社会のあらゆる分野に女性が参画できるよう、条件整備を図っていく ことが求められる。」)、第129回国会における細川護熙内閣総理大臣施政方針演説(平成6年3月2日)(「また、女性が、政 治・経済・社会のあらゆる分野に男性と平等に参画する男女共同参画型社会の形成に向けて総合的な施策の推進とそ のための体制整備に取り組んで参ります」)、同会期の羽田孜内閣総理大臣施政方針演説(「とりわけ女性が社会のあらゆ る分野に男性と平等に参画する男女共同参画型社会の形成に総合的な取り組みを行ってまいりたいと思います。」)など との用例が参考にされた。

<参考2>「男女共同参画社会の形成」と「男女共同参画社会の形成の促進」

男女共同参画社会の形成は、正に社会の形成であり、社会を構成するもの全体で取り組んでいかなければならない ものである。そのために、行政も各種の施策を行うことになるが、施策の実施のみによって社会が形成されるものではな く、その行為は社会の形成の「促進」であると考えられる。このため、あらゆる主体で取り組んでいくための基本理念等の 規定においては、「男女共同参画社会の形成」という用語が用いられているが、行政の行う施策に関する国の責務規定 や男女共同参画基本計画などの規定については、「男女共同参画社会の形成の促進」という用語が用いられている。

なお、男女共同参画社会は国、地方公共団体、国民の努力によって一瞬は形成されたと思われても、次の瞬間にはそ れが崩れてしまう可能性もある。したがって、男女共同参画社会が形成されたと思われても、それで努力を終えることなく、常 にその形成を推進する必要がある。このような観点からも、男女共同参画社会の形成までを定義としているところであ る。

<参考3>

女子差別撤廃条約においては、ポジティブアクションは逆差別でない旨が規定されているが、基本法においては、その ような規定はない。これは積極的改善措置の定義を置き、国の責務の中に積極的改善措置を積極的に規定しているとい う基本法の構造から、ここで定義されている積極的改善措置が逆差別として憲法の定める平等原則に反するようなもの でないことは明らかであり、そのための確認的規定は必要ないためである。したがって、憲法に反しないことは言うまでもない。

(女子差別撤廃条約第4条[差別とならない特別措置])

1

締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、 この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることに なってはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成されたときに廃止されなければならない。)

2

締約国が母性を保護することを目的とする特別措置(この条約に規定する措置を含む。)をとることは、 差別と解してはならない。

<参考4>男女雇用機会均等法

第9条[女性労働者に関する措置に関する特例] 第5条から前条までの規定(注)は、事業者が、雇用の分野における 男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を 講ずることを妨げるものではない。

(注:第5条[募集及び採用]、第6条[配置、昇進及び教育訓練]、第7条[福利厚生]、第8条[定年、退職及び解雇])

<参考5>審議会登用目標の変遷

積極的改善措置の一種として過去から行ってきた審議会の登用目標等の変遷は以下のとおりである。

昭和52年6月

国(中央及び地方支分部局)の審議会等委員に婦人を積極的に登用し、まず政府全体として10%程度へ引上げを目指す(当時中央段階で約3%)(「婦人の政策決定参加を促進する特別活動推進要綱」婦人問題企画推進本部決定。なお、この決定は国内行動計画(昭和52年から昭和61年までを対象)前半期の重点実施事項を決めたものである。)

昭和58年1月

昭和60年度までに原則として各審議会に新たに1名ずつ婦人を登用する等により、今後も政府全体として10%となるよう更に鋭意努力する。(婦人問題企画推進本部幹事会申合せ)

昭和62年5月

西暦2000年における婦人委員の割合について政府全体として15%を目指す(基本施策)。昭和65年度(1990年度)末までに10%の実現を目指す(具体的施策)。(新国内行動計画)

平成3年5月

西暦2000年における審議会等の女性委員の割合の飛躍的な上昇を目指す(基本施策)。およそ5年間に女性委員の割合を相対として15%とすることを目標とし、その実現を目指す。(具体的施策)。(新国内行動計画(第一次改定))

平成8年3月

女性委員が16.1%となり、目標を初めて達成。

平成8年5月

国際的な目標である30%をおよそ10年程度の間に達成するよう引き続き努力を傾注するものとし、当面平成12年(西暦2000年)度末までのできるだけ早い時期に20%を達成するよう鋭意努めるものとする。

平成12年3月

女性委員割合が20.4%となり、当面の目標を1年早く達成。

平成12年8月

平成17年度末までのできるだけ早い時期に、ナイロビ将来戦略勧告で示された国際的な目標である「30%」を達成するよう鋭意努めるものとする。


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