男女共同参画社会基本法逐条解説

(目的)

第1条 この法律は、男女の(1) 人権が尊重され(2)、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現(3)することの緊要性(4)にかんがみ、男女共同参画社会の形成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び 国民の責務を明らかにするとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項(5) を定めることにより、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

1 趣旨

本条は、<1>男女の人権の尊重、<2>社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会の実現は緊急性かつ重要 性があるとの状況を踏まえ、男女共同参画社会基本法に規定してある事項をまとめて規定した上で、法律の目的として、 「男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進すること」を規定したものである。なお、本条の趣旨は、前文及び 内閣官房長官・男女共同参画担当大臣が法案の提出に当たり、衆参両院の本会議において行った法案の趣旨説明(参 考1参照)においても明らかにされている。


2 用語解説

(1)「男女の」

基本法全体を通じて一般名称の前に「男女の」との修飾がなされている。

基本法は、女性のみを対象とする法律ではなく、また男性のみ、女性のみを対象とした規定もない。基本法は男女両 方を対象として男女共同参画社会の形成の推進について規定されており、女子差別撤廃条約等の女子に着目した条約 等と異なっている。

(2)「男女の人権が尊重され」

基本法制定の必要性、緊急性を述べたものである。

単に「人権」の問題について述べているのではなく、性別に起因する人権の問題という観点に着目し、その観点から問 題を強調するために、「男女の」とされている。

男女の人権が尊重される社会の実現が緊急かつ重要であることを考慮して、男女共同参画社会の形成を推進するこ とになる。

男女の人権の尊重は、基本理念である第3条において詳細に規定されているように、基本法における重要な課題であ る。

(3)「社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現」

上記同様、本法律の必要性、緊急性を述べたものである。

「社会経済情勢の変化」とは、前文に規定されている「少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等」のことである。 このような社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力のある社会の実現を念頭において男女共同参画社会の形成を 推進することとなる。

なお、「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現する」という用語 は基本法の規定に伴い廃止された男女共同参画審議会設置法の第1条においても規定されていた。

(4)「緊要性」

「緊急性かつ重要性」の意味である。

(5)「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項」

基本法第2章及び第3章に規定する事項であり、他の基本法にも見られる例文的規定である。


<参考1>平成11年4月12日の本会議での野中広務内閣官房長官・男女共同参画担当による提案理由、趣旨説明は 以下のとおり。

「我が国においては、日本国憲法に個人の尊重、法のもとの平等がうたわれており、男女平等の実現に向けてさまざま な取り組みが、国際連合など国際社会における取り組みとも連動しつつ、着実に進められてきたところであります。その間 には、女子差別撤廃条約も批准されました。しかしながら、現実の社会においては、男女間の不平等を感じる人も多く、男 女平等の実現に向けて、なお一層、努力していかなければなりません。

また、少子高齢化など社会経済情勢の急速な変化に対応していく上でも、女性と男性が互いにその人権を尊重し、喜 びも責任も分かち合いつつ、性別にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社 会の実現は、一層緊急の課題とされているところであります。

このような状況において、男女共同参画社会の実現は、政府の最重要課題であると考えております。そのためには、さ まざまな分野において男女共同参画社会の形成を促進するための施策を推進することが重要であります。また、人々の 意識の中に形成された性別による固定的役割分担意識等が男女共同参画社会の実現を妨げていることを考えますと、 国民一人一人にこの問題について理解を求め、各自の取り組みを促していかなければなりません。

男女共同参画社会基本法案は、男女共同参画社会の形成に関する基本的理念とこれに基づく基本的な施策の枠組 みを国民的合意のもとに定めることにより、社会のあらゆる分野において国、地方公共団体及び国民の取り組みが総合 的に推進されることを目的としています。この法律案は、男女の人権が尊重され、豊かで活力ある社会を実現し、女性も 男性もみずからの個性を発揮しながら、生き生きと充実した生活を送ることができることを目指すものであり、21世紀の日 本社会を決定する大きなかぎとなる意義を持つものと考えています。

次に、本法案の内容の概要を御説明申し上げます。

第一に、男女共同参画社会の形成に関する基本理念として、男女が性別による差別的取り扱いを受けないこと等の男 女の人権の尊重、社会における制度または慣行についての配慮、政策等の立案及び決定への共同参画、家庭生活にお ける活動と他の活動との両立、国際的協調という五つの理念を定めるとともに、国、地方公共団体及び国民の男女共同 参画社会の形成に係る責務を明らかにしております。

第二に、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策に関し、政府等は基本的な計画を定めて施策の大綱を国民 の前に示すこととするとともに、施策の策定等に当たっての配慮、国民の理解を深めるための措置、苦情の処理等、調査 研究、国際的協調のための措置、地方公共団体及び民間の団体に対する支援など基本的な施策について規定しており ます。

第三に、現在、男女共同参画審議会設置法に基づいて設置されている男女共同参画審議会について、この基本法に その設置根拠を移すことにより、男女共同参画社会の実現に向けた推進体制として明確に位置づけております。」

<参考2>「男女」
戸籍法(昭和22年法第224号)

第49条【出生届】

】<1>出生の届出は、十四日以内(国外で出生があったときは、三箇月以内)にこれをしなければならない。

<2>届書には、次の事項を記載しなければならない。

一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019