3 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保

施策の基本的方向 具体的施策 担当府省

(1)雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保対策の推進

男女雇用機会均等法の改正により、平成11年4月から、募集・採用、配置・昇進を含む雇用管理のすべての段階における女性に対する差別が禁止されたことを踏まえ、積極的な行政指導により男女雇用機会均等法の履行確保を図る。また、実質的な男女の均等確保を実現し、女性の能力を最大限にいかすためには、制度上の男女均等が確保されるだけでなく、事実上生じている男女労働者間の格差を解消するための企業のポジティブ・アクションが不可欠であることから、企業に対する促進施策を積極的に展開する。

さらに、職場におけるセクシュアル・ハラスメントは、女性の就業環境を悪化させ、能力の発揮を阻害するものであることから、企業における防止対策の徹底を図るとともに、個別の問題が生じた場合に適切な対応がなされるよう積極的な支援を行う。

ア 男女雇用機会均等法の履行確保

  • 男女雇用機会均等法に基づく行政指導の強化

    男女雇用機会均等法の履行状況等について実態把握を行った上で、積極的な指導を実施し、同法に違反する取扱いについては是正指導を行うとともに、採用、配置、昇進等における男女間の格差の大きい企業に対しては、問題点を把握し、その改善に向け、具体的取組に関する助言を行う。また、同法により、女性のみの採用や配置が禁止されたことについて、周知を図る。

    なお、行政指導に当たっては、助言、指導、勧告の各措置を厳正に講ずるとともに、更に改善が見られない場合には、企業名公表制度も念頭に置きつつ、対応する。

  • セクシュアル・ハラスメントに関する雇用管理上の配慮の徹底

    男女雇用機会均等法及び同法に基づく指針について周知を図るとともに、これらに規定されている措置を講じていない事業主に対しては、積極的な行政指導により措置の実施を求める。また、企業における具体的取組方法についての情報提供や相談への対応を積極的に行うとともに、個別事案への適切な対処のための体制整備について支援を行う。

  • コース等で区分した雇用管理に関する留意事項の周知徹底

    コース等で区分した雇用管理については、事実上の男女別雇用管理とならないよう、留意すべき事項について周知徹底を図るとともに、適正な運用に向けた的確な指導等を行う。

  • 個別紛争解決の援助、相談機能の強化

    男女雇用機会均等法に基づく機会均等調停委員会等による個別紛争の迅速な解決が図られるよう、積極的な援助を行う。また、これらの個別紛争解決の援助制度が十分に活用されるよう、女性労働者及び企業に同法の周知を図る。さらに、新たなメディアを活用した相談方法も取り入れるなど相談機能の強化を図る。

    男女雇用機会均等法の実効性を高めるという観点から、同法の施行状況を見つつ、必要に応じ、調停制度を含め、同法の履行確保のための方策について検討を進める。

  • 女子学生の就職問題に関する施策の推進

    企業における募集・採用状況や女子学生の就職活動の状況の把握に努め、男女雇用機会均等法に違反する取扱いについては是正指導を行う。状況把握に当たっては、大学の就職担当者との連絡を密にするとともに、インターネットによる情報収集などの新たな手法の導入を図る。また、企業の人事・面接担当者等を対象に、男女均等な選考ルールについて周知徹底を図る。

イ 企業における女性の能力発揮のための積極的取組(ポジティブ・アクション)の推進

  • 国民的機運の醸成

    男女雇用機会均等法に基づく企業のポジティブ・アクションについては、それが人材の有効活用や経営の効率化にもつながるという観点も含め、その重要性について経営者の理解と中間管理職層も含めた社内の合意づくりを促すとともに、女性の活用について積極的に取り組んでいる企業を均等推進企業として表彰すること等により、ポジティブ・アクションに対する国民的な機運の醸成を図る。

  • 企業のポジティブ・アクション取組の促進

    企業がポジティブ・アクションに取り組むための具体的な方法について、好事例の収集を図りながら、地域ごとのセミナーの開催等により、普及を図る。

    その際、労使団体等との連携を図るとともに、自主的に企業におけるポジティブ・アクションの推進のための取組を行う労使団体等に対しても、支援を行う。

    また、諸外国の取組事例を参考にしつつ、企業におけるポジティブ・アクションの推進のための取組を一層実効あるものとするための手法の検討を行う。

ウ 男女均等を確保する方策等についての幅広い検討

  • 実質的に男女均等な雇用管理を確保する方策等についての幅広い検討

    いわゆる間接差別については、どのようなケースが差別となるのかについて、合意形成のための十分な議論が必要であり、諸外国の施策や判例の動向、事例の収集に努め、引き続き検討を行う。

    また、男女雇用機会均等法は、我が国の実態にかんがみて、女性に対する差別を禁止していることから、同法の施行状況や男女共同参画社会の形成に向けた国、地方公共団体の施策の実施状況を始めとする様々な社会的動向等も見ながら、男女双方に対する差別を禁止する法制度を含め、実質的に男女均等な雇用管理を確保する方策について幅広い検討を行う。

厚生労働省、文部科学省

(2)母性健康管理対策の推進

職場において女性が母性を尊重され、働きながら安心して子どもを産むことができる環境を整備することは、女性の能力発揮の促進に加え、生涯を通じた女性の健康確保等の観点からも重要な課題である。特に、妊娠中及び出産後も継続して働き続ける者が増加していることにかんがみ、これら女性労働者が引き続きその能力を十分に発揮する機会を確保するための環境を整備する。

  • 母性保護等に関する法律及び指針の周知徹底等

    労働基準法、男女雇用機会均等法に基づく女性労働者の母性保護及び母性健康管理について、関係機関と連携しつつその周知徹底を図るとともに、事業所の規模等に応じた母性健康管理体制の整備に対する支援、相談、情報提供体制の充実を図る。また、女性特有の健康状況に応じた情報提供などの生涯を通じた女性の健康支援施策との連携についても留意する。

  • 妊娠、出産を理由とする不利益取扱いへの対応の検討

    妊娠、出産を理由として、雇用管理面で不利益な取扱いを受けることのないよう、企業の望ましい雇用管理の在り方やそのための環境整備に向けての方策等について、検討を行う。

厚生労働省

(3)女性の能力発揮促進のための援助

男女労働者間に生じている事実上の格差の解消を図り、女性労働者がその能力を十分に発揮できるようにするためには、企業におけるポジティブ・アクションの促進と併せ、女性労働者の側も職業能力の向上等により個々人の就業能力を高めていくことが重要であることから、適切な職業選択を促すための意識啓発、情報提供、能力開発等の施策を積極的に推進する。

特に、少子・高齢化の進展による労働力供給の減少が見込まれる中で、育児等のために退職した女性が、再就職によりその能力を発揮していくことが今後一層求められることから、女性の再就職に向けた支援の充実を図る。

ア 在職中の女性に対する能力開発等の支援

  • 情報提供、相談、研修等の拡充

    女性労働者が職域拡大や職業能力の向上のために必要な情報や手法を入手しにくいため、女性の能力発揮のためのセミナーやキャリアカウンセリング、管理職候補となる女性労働者等に対する研修を実施するなど、職域拡大、職業能力の向上のために必要な情報提供、相談、研修等を受けられる機会の拡充を図る。

    また、就業を希望する者も含め、働く女性等に対して、情報提供、相談、ネットワークづくりへの支援を行うなど、女性の能力発揮促進を支援する拠点として「女性と仕事の未来館」の事業を推進する。

  • 公共職業訓練等の推進

    在職中の労働者に対して、多様なニーズや高度情報通信の進展等に対応した職業訓練を、公共職業能力開発施設等において推進する。

    また、企業内教育訓練が効果的に推進されるよう、必要な情報提供、相談援助等の推進に努めるとともに、企業内で行う教育訓練費用に対する助成を行うなど、企業の取組を積極的に支援する。

  • 労働者の自発的な職業能力開発の推進

    労働者が教育訓練を受講するための時間を確保できるよう、有給教育訓練休暇を導入するなどの取組の促進のために環境整備を図る事業主に対して助成を行う。また、教育訓練給付制度の効果的活用により、労働者個人の自発的な職業能力開発の取組を支援する。

  • 女性の能力の発揮の支援のための調査研究

    就業意欲を持つ女性の能力発揮を支援し、労働市場への円滑な参入を支援するため、産業政策の観点から具体的方策を検討する。

イ 再就職に向けた支援

  • 育児・介護等により退職した者に対する支援

    育児・介護等により退職した者については、インターネット等による情報提供の充実を図るとともに、講習、相談、自己啓発への支援等の拡充を行う。

    また、両立支援ハローワークにおいて、きめ細かな職業相談・職業紹介等により再就職を支援する。さらに、能力発揮を望む再就職希望女性に対するカウンセリングの技法及び能力開発プログラムを開発するなどの支援を行う。

  • 職業能力開発の積極的展開

    急速な高度情報通信の進展等産業構造の変化に対応して、必要な職業訓練を公共職業能力開発施設等において実施することにより、再就職を積極的に支援する。

厚生労働省、経済産業省

(4)多様な就業ニーズを踏まえた就業環境の整備

雇用・就業形態の多様化の中で、労働者が、その価値観、ライフスタイル等に応じ、多様でかつ柔軟な働き方を選択でき、それぞれの働き方に応じた適正な処遇・労働条件が確保されることは、女性の能力発揮の促進を図る上での重要な課題となっている。とりわけ、そのような働き方を育児期等にある者が、職業生活を完全に中断するのではなく、家族的責任との両立を図りながら職業生活を継続することのできる良好な就業形態として普及していくことが重要である。

こうした観点から、パートタイム労働者に対する通常の労働者との均衡等を考慮した適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善、在宅就業等の健全な発展のための施策等を推進する。

また、女性の起業への関心は高まっているが、女性は事業経営に当たっての知識、情報等が不足しがちなことから、支援策の充実を図る。

ア パートタイム労働対策の総合的な推進

  • 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律及び指針の周知・徹底等

    短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律及び同法に基づく指針の周知徹底、助成金の活用促進等により、パートタイム労働者の雇用管理の改善を図る。また、通常の労働者との均衡を考慮した処遇や労働条件の確保のため、「パートタイム労働に係る雇用管理研究会報告」(平成12年4月)の趣旨を広く周知させるなどにより、労使の自主的な取組を促す。

  • パートタイム労働者の労働条件の明示の徹底

    パートタイム労働者の労働条件は多様であることから、雇入れ後のトラブルを防止するため、賃金、労働時間等主要な労働条件を明らかにした労働条件通知書のモデル様式の普及を図るとともに、就業規則の整備の促進を図り、労働条件の明示を徹底する。

  • パートタイム労働者の雇用の安定

    パートバンク、パートサテライトにおいて総合的な職業紹介サービスを実施するとともに、事業主に対する相談・助言の充実を図る。

  • パートタイム労働者に対する能力開発

    パートタイム就労の機会を増やし、労働市場への参入を容易にするため、公共職業能力開発施設において、パートタイム等短時間就労を希望する者を対象とした短期間の職業訓練を実施する。

イ 労働者派遣事業に係る対策の推進

  • 事業の適正な運営の確保

    労働者派遣事業の許可・届出等の審査業務の的確な実施を図るとともに、派遣元事業主、派遣先等に対する指導監督の計画的、効果的な実施を図り、労働者派遣事業の適正な運営の確保を図る。

  • 派遣労働者の適正な派遣就業の確保

    派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針及び派遣先が講ずべき措置に関する指針等に基づき、派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置が適切かつ有効に実施されるよう周知徹底、指導するとともに、公共職業安定所における苦情相談体制の整備を図ることにより、派遣労働者の適正な派遣就業の確保を図る。

    また、派遣先事業主にもセクシュアル・ハラスメント防止の配慮及び母性健康管理の措置が義務化されたことについて周知を図る。

ウ 女性起業家、家族従業者等に対する支援

  • 女性起業家に対する支援

    起業を目指す女性に対して、必要な知識や手法に関する情報提供、相談や学習機会の提供を行うとともに、女性起業家向け低利融資制度等の資金面での支援を行う。

  • 家族従業者の実態把握等

    商工業等の自営業における家族従業者の実態の把握に努める。また、女性が家族従業者として果たしている役割の重要性が正当に評価されるよう、自営業における経営と家計の分離等、関係者の理解が得られるように努める。

エ 在宅勤務、SOHO等、新しい就業形態等に係る施策の推進

  • テレワーク・SOHOの普及促進

    テレワーク・SOHO(情報通信技術を利用した、時間や場所にとらわれない遠隔型の就業形態)など多様な働き方について、調査研究の結果も踏まえ、就業環境にも配慮しつつ普及促進を図る。また、共同利用施設の整備、システムの開発、税制、財政投融資制度等を通じた支援を進める。

  • 在宅勤務等の普及促進

    企業における勤務形態としての在宅勤務等に係るテレワークについては、テレワーク導入マニュアルの活用やテレワーク相談センターにおける相談等を通じて、その適正な労務管理の下での普及を図る。また、在宅勤務者等の労働条件の確保の在り方に関して検討を進める。

  • 在宅就業対策の推進

    テレワークの自営的形態である在宅就業については、仲介機関に関する情報の収集・提供を行うとともに、仲介機関を活用した福利厚生制度の実施等を通じた支援について検討する。

    特に、在宅就業の中でも従属性の強い在宅ワークについては、その健全な発展に向け、ガイドラインの周知・啓発、各種情報提供、相談体制の整備、能力開発・能力評価に係る支援、就業支援の仕組みの整備等の施策を推進する。

  • 家内労働者の労働条件の改善

    家内労働手帳の普及、工賃支払の確保、最低工賃の決定及び周知、労災保険特別加入の促進等により家内労働者の労働条件の改善を図る。

厚生労働省、内閣府、総務省、財務省、文部科学省、経済産業省
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